雑記帳 2001 その1
2001年6月9日
「コンポジット」
見栄えの良い天体写真を作るために、コンポジット法(composite)というテクニックがある。天体の撮影、とくに気流の影響をもろにうける惑星撮影のとき、短時間にたくさんのコマを撮影しておき、気流の影響の少ないコマを選び出して、その画像をピッタリと重ね上げていくというものだ。こうするとノイズは減りコントラストも上がる。ひとことで言うと、この操作により大変見栄えの良い写真が出来上がるという寸法だ。この方法は以前から知っていたが実際に手がけたことがなかったので、コンポジット法を駆使する人を「すごいな〜」と思っていた。
私の天文仲間にすごいのがいる。最近になって具体的な方法を教えてもらい、ためしに5月28日に撮影した火星の写真の中から5枚を選び出し試してみた。
地平線近くだったのでもともと写りが悪い
下の写真とモトは一緒だが、けっこう効果があるもんだ。5枚の写真を重ねるにも結構手間がかかる。普通は10枚ぐらい重ねるものらしいが、肩こりがひどくなりそうなので今日はパスだ。なかには20枚も30枚も写真を重ねる強者がいると聞く。世の中に上には上がいるものだとつくづく思う。
誤解を避けるために申し添えるが、この操作は別にインチキでもなんでもなく、中級アマチュア以上には一般的に行われている手法だ。当然のことながら、もともとちゃんと写っていない写真をいくら重ねてもムダだ。やはりしっかり撮影することが必須であることは言うまでもない。失敗料理にいくら味付けでごまかそうとしても効果がないのと一緒だ。おっと不穏当な発言。カミさんはパソコンを使わないからまぁいいか。
2001年6月1日
「火星」
今年は火星の中接近にあたる年である。6月22日に地球に最も近くなる。これを最接近という。夜半近くに南東の空にひときわ赤く明るく輝いている星が見えたら火星だと思ってまちがいない。火星の近くにこれまた明るい星が見えるが、これはさそり座の一等星でアンタレスという星だ。
このアンタレスと火星の関係は、話せば長くなるのでここでは割愛するが、さる5月28日の夜、重い腰をあげて望遠鏡を出し23時ごろまでねばって撮影した火星の写真だ。腕の良い星屋(ほしや:天文ファン)ならばもっと高度な写真操作をするそうだが素人の写真はしょせんこんなもんだ。
ところで望遠鏡は結構な重量なので腰への負担は強烈である。湿布薬は欠かせない。商売が薬局でよかった。
2001年5月5日
「キノホルム」
大型連休中はどこへいっても渋滞。昨日は墓参りのついでに家内の実家の庭先で焼き肉としゃれこんだ。現在は誰も住んでいないが、たまに風を通さなければ、家はいたむものだ。
ところで邸内で廊下の薬箱に気になる薬を見つけた。おどろいた事にあのスモンで有名になったキノホルム製剤の現物があった。製品名はエンテロ・ヴィオフォルム錠(武田薬品・チバ製品)だが、ロット番号がわかる程度で有効期限も添付文書もなくなっているため、いつ頃のものかは不明。
そいういえば、私が小学生のころ、いまはなき祖父が「キノホルムは大変よく効いた」と言っていたのを思い出した。薬剤師という職業柄、この薬の当時の添付文書を見てみたいと思うが、すでにどうしようもないので、これまでとしよう。
蛇足だが、現在、私の「おなかの調子」は悪くないし、この薬を飲んでみる勇気はない。
2001年5月2日
「円周率」
ニュースの「円周率を3で扱う」という報道に驚いた。さっそく文部科学省のホームページを検索してみた。すると、
「円周率としては3.14を用いるが,目的に応じて3を用いて処理できるよう配慮するものとする」とある。これを見ると、来年度(平成14年度)から、小学校では円周率を「3」で計算するシーンも出てくるらしい。興味のある方は、小学習指導要領・第3節算数をご覧あれ。
さて、この円周率だが、3.141592653589793238462643383279502884…とまではいかなくても、小学校では「3.14」で計算したのを憶えている。この小数点以下2ケタのおかげで計算がメチャクチャややこしかったことは異論のないところだろう。進学して「数学」になると円周率はπでカタがつくので、この種のわずらわしさがなくなり、円周率の小数点など、もはやどうでもよい。
「ゆとりのある教育」のゆとりとは誰のゆとりのことだろう。単に「量をへらす」だけなら何の解決にもならないと思うのだが。
2001年3月26日
「臨床実習生」
先週から、めずらしくも当薬局にM大学薬学部 医療薬学科3年生(新4年生)の学生が臨床実習に来ている。街の薬局のありのままの姿や、学校薬剤師の仕事。一般薬のお話、さらに服薬指導なども見学してもらったり、実際に患者さんに対しての服薬指導の演習をしていただいている。
実習生にとってはなかなか刺激的な体験のようだが、前向きな姿勢と、まじめにものごとに取り組む姿勢は自分自身が見習いたいほどだ。
さて、今日あったこと。
ちょっと離れた町にあるA眼科の処方せんを持った患者さんが眼科の目の前のA薬局を当然のことのように素通りし、当薬局に来局された。かかりつけ薬局として当薬局を利用してくださっている患者さんで、本当にありがたく、また得がたいことだと感謝。
ところが処方せんの中、2種類の薬の持ち合わせがなかったため、すがるような気持ちで、近隣のB薬局へ分譲のお願いのFAX。B薬局さんはお昼休みにもかかわらず事務の方がわざわざ待っていてくれて快くお薬を分譲していただくことができ助かった。
近隣の薬局間で助け合うシステム、われわれにとっては大変ありがたい。実習生もなかなかお目にかかることのない体験だ。
その1時間くらい後。これも少し離れた場所にあるC耳鼻科の処方せんをお持ちになった患者さん。抗生物質や貼り薬など、他は全て在庫があるが、1種類だけシロップの在庫がない。
これまたすがるような気持ちでC調剤薬局に分譲のお願いのFAX。急いで実習生とC調剤薬局を訪れたところ、なんと、すでに
「粉薬とシロップを混ぜて作ってあります」とのこと。
「えっ!? お願いしたのはシロップだけですので、それだけでいいのですが…」というと
「もう作ってあります」とのこと。
その後、「粉薬の混ざったシロップ」は丁重にお断りして、シロップ代と(投薬瓶+消費税)をお支払いし、めでたく分譲してもらった。
帰り道の会話。
「処方せんは うちの薬局にきているのに なんで薬ができているのですか?」と臨床実習生。
「な・なんでやろねぇ 勘違いしてるんとちゃう?」と しらばっくれる私ども。
実習生は、これまた「おもしろくも不思議な事態」を目撃することになった。
どちらも患者さんからは見えない事だが、街の薬局ではこういうドタバタ劇や噴飯モノのできごとが繰り広げられている。
さて、余談。
臨床実習生を受け入れるにあたって、当薬局としても、ちらかったままの薬局で迎えするわけにはいかないため、体裁を取り繕うため、受け入れ前日に、あたふたと掃除をしたことは言うまでもない。
2001年3月21日
「花粉症」
お彼岸の昨日、家族全員で墓参りに出かけた。場所は藤原という山村にあるため、花粉症の私にとってはかなりつらいものがある。
あいにくお墓の周囲は杉だらけ
当然のことながら薬はのんであるのだが、よせばいいのに石なんか投げてこんなことして遊んでいるわけだから、眠れない夜が待っていたことは言うまでもない。自業自得という言葉はこういう時に使うためにある。
2001年3月3日
「ひなまつり」
我が家には雛人形は存在しない。ゆえに「ひなまつり」とは無縁であり、「ひなまつり」のテーマはこれでおしまいである。
ところで、今日あった衝撃的なできごとをひとつ。
眠い目をこすりながら冷蔵庫から解熱坐剤をおさめた容器を外に出して確認。えーっと、おや? いつもとちがう。湿っぽいというか、ネバネバしてる。 中身が出てる? まさか…
なんかこの坐薬ふとってない? でも こっちの坐薬はやせてるみたい… じっとよくみる。
え゛〜!(こればっかり)
溶けてる なんで??? 冷蔵庫に保管してあったのに!?で、冷蔵庫の中を見てみたら
よく みてみると、ランプの部分がゆがんでいるような…(写真をクリックすると拡大)
【結論】
坐薬の入ったプラスチックケースが、つきっぱなしになったランプに密着して置かれていたため、ランプの熱でプラスチックケースはおろか中の坐薬自体も熱によって溶けたものと判明。ランプがつきっぱなしになるという状態は、冷蔵庫のドアが半開きの状態にあったということを意味している。
冷蔵庫のドアの下部にプリンタケーブルがからまっていて 完全に閉まっていなかったものと思われる。今回は「ひなまつり」とは何の関係もないにもかかわらず「ひなまつり」のタイトルを掲げた事はうかつだった。蛇足だが我が子4人の中、ひとりだけお姫様が存在する。しかし我が家には雛人形は存在しない。なぜなのかはわからないが、とにかく雛人形はない。もしも雛人形がうちにあった場合「ひなまつり」をやったが最後、一年中かざったままになるであろう事は想像に難くない。これは困る。
2001年2月16日
「リレンザ」
「リレンザ」という薬がある。これはインフルエンザの治療薬である。我が家は6人家族のため、たいてい毎年誰かがインフルエンザの洗礼にみまわれる。ところで、今年はいつの年になくインフルエンザが少ない。むしろ流行っていないというのが正しいと思う。このリレンザというインフルエンザ治療薬は、ほかのインフルエンザの内服薬に比べ、なかなか的を得たものだと思う。詳しいことは割愛するがインフルエンザの感染初期に気道に薬を作用させるという発想はインフルエンザウイルスの挙動を考えた場合、理にかなっていてグッドだ。
ところで、つい最近、リレンザに健康保険が使えるようになった。この薬は昨年初冬(12月8日:明らかにインフルエンザ流行前)に売り出されていたのだが、そのときは「薬価収載」はされなかった。この「薬価収載」されなかったということはどういう意味を持つのか?それは事実上「お医者さんで出してもらえない」ということだ。保険が使えないということは、診察代や検査代をはじめリレンザの代金も全て自費ということになる。自費というのは医療費が患者さんの10割負担ということではない。当地のいくつかの病院など20割負担のところが結構ある。
さて、きっとお役人はいろんな考えをめぐらし、インフルエンザの流行がおさまったころ薬価収載をすれば、その間にたくさん保険を使われてしまうことがない…と考えたのだろう。ところが今年はいまだインフルエンザの流行はみていない。流行しないに越したことはないが、もしおそがけのインフルエンザ流行があれば、リレンザやほぼ同時に薬価収載になったインフルエンザ治療薬タミフル(これはのみ薬)なども「健康保険」でどっと使われることは火を見るよりも明らかだ。
われわれの監督官庁である厚生省(おっと今は厚生労働省か)に悪態をつくのにはなかなか勇気がいる。しかし今回、役人の思惑は見事に外れたわけである。ここで匿名希望ということであえていわせてもらおう。
ざまあみろ あら、ちょっとお下品。
2001年2月9日
「パックマン」
・・・・・・・いつもの患者さんが薬局を訪れた。 ガラガラ(入り口の音)
『こんにちは ○○さん!』 開口一番…
『あのぉー お薬がからくて飲めないんですけどぉ〜』
・・・・・・・?? 錠剤のはずだったよな たしか。
『すみません お薬を確認させていただけますでしょうか?』
え゛〜!
この患者さんは、一回分を一袋にする処理「OneDoze-OnePackage」をしている方でした。確かにこの薬は湿気を吸う薬として有名だったのですが、まさかこんなになるとは…患者さんはこの薬をパックマンと呼んでいた。お詫びのうえ交換させていただきました。このネタはわれわれの学術研修会にも使用させていただきました。
後日談
メーカさんに問い合わせ調べていただいたところ、「何かの圧力がかかったときに小さなひび割れができ、吸湿性(湿気を吸いやすい)の有効成分が水分を吸って破裂したのではないでしょうか」とのこと。もともとこの薬は湿気に弱いことがわかっていたのですが、飲み忘れのないように、あえて「OneDoze-OnePackage」処理をしたのが災いしたようです。担当のMRさん(製薬会社の医薬品情報担当の方)も、これほどの「パックマン」を見るのは初めてだったそうで、最近買った「写真高画質カラープリンタ」でプリントアウトして差し上げました。
2001年1月24日
「一年の計は元日にあり」
【 一年の計(けい・はかりごと)は=元日[元旦・正月・春]にあり 物事は最初がたいせつで、まず計画を立ててから事に当たるべきである。国語大辞典(新装版)小学館 】とある。
そういえば今年の正月は21世紀はじめての正月。 うーむ … はたと思いおこすに、今年の正月はどうだったか…?
いつものせんべい布団から起き上がったのが、たしか昼過ぎだったように思う。一年の計・もっと大きく今世紀の計を思い巡らすことなど何もしたおぼえもない。すでに1月も下旬、ただ惰性の毎日が過ぎているが、せめてセミが鳴くころまでにはなんとかしようと思っている。