発端

これは、私が小学校の頃の話…私の奇妙な毎日の発端でもあったわけだが…

私の通っていたK小学校は、他の小学校と同じく集団登校に無駄な力を注ぐ学校だった。

確かに、個人での登校があまり安全ではない、と云う事もあるが、社会性の勉強の一環であるわけだ。

当時班長だった私は、相変わらず集合場所に来るのが遅い下級生に苛立ちながら、人数を確認し、登校を開始した。

 

     その時だった…あの子はいたのだ

 

登校の道の途中、一対の視線を感じて私は何気なくその方を向いた。

そこには一人の少女がいた。

エプロンドレスのような、奇妙な格好をした…印象深い出で立ちの少女だった。

彼女は私の何処が珍しいのか、じっと私の方を見詰めている。

何だろう…変な子だ。

私はその程度しか彼女からは印象を受けなかった。

しかし、彼女は飽きる事無く私を見詰め続けている。

…はっきり云って…不気味だ。

私は時間の事もあり、彼女の視線から逃れるように先を急ぐ事にした。

そして翌日の朝、今日は珍しく下級生達が普通に集まってきた。

よしよし…私は変な満足感を抱きながら列の先頭に立って、登校を開始した。

だが…

 

     あの少女が何故か変な所にいた

 

そう云うのも、彼女はクリーニング屋の車の運転席に座り、私を見詰めていた。

なんだよあいつ…

私は苛立ちながら彼女の視線を無視し、その場から立ち去った。

その次の朝…また次の朝…その後、そのあと、そのあとそのあとそのあとそのあとそのあと…

彼女は毎日私の通学路に姿を現すようになった。

 

     田圃のあぜ道、橋の上、近所の店の窓の中、そして…虚空

 

怖い、怖いこわいこわい…子供心にそう思うようになった。

怖くない筈がない。

毎日毎日、家を出るたび、私はいつも学校を休もうと思ったくらいだ。

集団登校なんてうっちゃって逃げ出したくなった。

誰にも話せない、話した所で子供の戯言と一蹴されるのがオチだ。

怖い、誰か助けてくれ…

そう思いながら、学校の存在を呪いながら私は毎日、異形の少女に見詰められる日々を送った。

そして、ある日の事…

当時、私の部屋は今の両親の寝室に位置していたわけだが、子供の部屋には少々大きすぎるくらいだった。

そして、襖を隔てて隣が物置になっている。

雛人形やら蒲団やら、子供心の思いつくものは全てあった。

私はそこに私物も併せて置いていたのだが、その日の夜…私の運命の日となった。

私はそこの私物を取りに行くため、勉強の席を立ち、何気なく襖を開けた。

 

     そこに、あいつはさも当然のように立っていた…

 

私は恐怖に凍りつき、少女は私を無表情に見詰めていた。

彼女は…ゆっくりと…私を見詰めたまま部屋を滑るように横切り、闇の中へ吸い込まれていった。

…私は、恐怖の後に…ついに腹が立った。

 

     いい加減にしろ!!!

 

私はそれだけ叫び、寝床へ逃げ込み、蒲団を頭からかぶって夜を過ごした。

翌日、いつものように学校にいき、帰ってきて、遊びに行く…そんな普通の毎日が帰ってきた。

何故か、彼女の存在を喪失した私は、何処か寂しくなり、彼女の姿を探したが、終ぞ彼女の姿を見つけられる事はなかった。