ぶら下がっている

 

貴方は自殺をした人を見たことがありますか?ないですよね、普通。

殊に首吊りを…ぶーらぶーら揺れるそれは、かなり恐ろしく感じる筈…

私ですか?ははは、変な事聞きますね。

ええ、見ましたよ…尤も、生じゃないけどね…

 

私の妹は、高校の部活の関係でよく9時を過ぎて帰って来る事が多い。

どうも人間を捨てた者が多い昨今、夜は物騒らしい。

母はいつも妹の送り迎えを欠かさない。

私は余り、賛成しないが、用心に越した事はないだろう。

母が働き始めて、夜の迎えが出来なくなってきているので、私が近所の駅まで妹を迎えに行く事になる事も多くなった。

そんなある日、私は母から電話で妹を迎えに行って欲しいと頼まれた。

駅は歩いて5分もない所にある。

そこくらい自分で歩け、と時々思うのだが、妹がよく帰りに通る鎮守の森の隣の道を通るのが怖い、と云うのだ。

その道は車が通るのがやっとなほど狭く、片方を背の高い建物を、もう片方を森が覆っている。

昼間でも薄暗く、夜になるとより暗い500メートルの異界。

まして、その森は曰くつきの杜だった。

数年前、その神社のお社の裏で、首吊りがあったのだ。

森の中のため、見えなかった事もある。

遺体が発見はかなり遅れ、発見された時には腐敗がかなり進んでいたらしい。

通るのも怖くなるわけだ。

私もあの道ではあまり”いいもの”を見たことがなかった。

そう云う事もあって、私は妹を迎えに行く事に別に抵抗はなかった。

さて…

 

駅で待っていた妹を連れて私はその道に差し掛かった。

妹は部活の事を話しながら、自転車を押す私の隣を歩いている。

私はと云うと、こちらに覆い被さるように生える木々を何とはなしに眺めていた。

その時、木々の間から何か見えた。

 

      不気味な誰かが、こちらを睨んでぶら下がっていた。

 

私は、それが見えていない素振りで、妹の話に相槌を打つことにした。

 

自殺した者はあの世に上れないらしい。

あの人は今も、繁る枝の間から道行く人々を呪いながらぶら下がっているのだろうか。

気をつけた方がいいですよ、もしかしたら、あなたも何処からか、生きているあなたをうらやむ誰かに見られているかもしれませんよ。