ぽーん、ぽーん

 

何処からともなく聞こえる奇妙な鞠つき…

この世のもならいいけれど、あの世のものなら願い下げ…

ぽんぽん音なる音の主、あっちもこっちもいやしない…

さて、アナタは鞠つきをした事がありますか?

私はした事はないけれど、聞いた事ならありますよ。

つい最近ね…

 

「ねえ、静かにしてよ。五月蝿くてろくすっぽ集中できないわ」

母が階下の私にそう云ったのは、夜中の11時ごろだった。

確かに音楽をかけてはいたが、近所迷惑になるほどでもなく、ましてや2階の母に聞こえるような音は出していない。

「プッチャン(家の犬で、プチと云う名前なのだが、もう既に省略化)とボール遊びするのはいいけど、昼間にしてちょうだい」

母はそう云った。

「ボール遊び?やだなあ、あいつを見なよ」

私はそう云って、窓際で眠りこけている家の犬を指した。

「それに、ばあちゃんなら…ほら、あそこでテレビ見ながら居眠り中だし、それに俺はレポート整理だし」

母はあれ、と不思議そうに今し方彼女が聞いた音について話した。

 

母は2階で絵を描いていた。

母は大学時代日本画をやっていて、時々何かの集まりで、そこに出展している。

その日も彼女は期日までに絵を完成させるべく、集中していた。

そんな時である。

 

      ぽーん、ぽーん

 

どこかで規則正しい音がしている。

 

      ぽーん、ぽーん

 

ゴム鞠をつくような音だったそうだ。

む、と彼女の絵筆が止まる。

 

      ぽーん、ぽーん

 

彼女は、時々私が家の犬にゴムボールを投げて、遊びに付き合ってやっている姿を思い浮かべたそうだ。

大佐ったら、母さんが絵を描いてるの知っててああ云う事するんだからっ!

 

      ぽーん、ぽーん

 

規則正しい音はいまだに続いている。

いい加減母は腹が立った。

 

      ぽーん、ぽーん

 

母はそこで、私に注意しに階下へ降りてきたわけである。

だが、そんな音を出す者がそこにいない事に気付き、母は当然怯えてしまった。

私は母をなだめ、2階の母の部屋へ入った。

しばらく耳を済ませてみる。

だが、何も音はしない。

もしかしたら、私の聞いていた音楽か、とさっきまで聞いていた曲を再生して二階へ行く。

だが、それらしい音は微塵もしなかった。

私は母に、「気のせいだ」と云って、やっぱり怖いと云う母を連れて部屋を出た。

そして、私は聞いた。

 

  ぽーん、ぽーん