極悪集団7期生

 

 競馬学校は奇数期にワルが集まる傾向がある。2期上の5期生は伝説の悪人集団。

哲っちゃんを筆頭に、ジローさん、カツハルさん、ツノちゃん、泰誠さん、などなど。いま考えてもハチャメチャなメンバーや。

 タバコに酒は当たり前。お菓子の持ち込みも日常茶飯事で、後輩には容赦なしにグーパンチが飛ぶ。

犠牲になったのは当然その下の6期生で、理不尽ないじめにもさんざんあったようだ。

※注:6期生…江田照男、小原義之、村山明、浜野谷憲尚、etc

 しかし、その伝説を覆したのが俺ら7期生だった。

おそらく5期生が手を染めた悪事は全部やったし、学校創立以来の事件をいくつも起こした。

そして、下の8期生はボロクソにいじめた。

※注:8期生…上村洋行、後藤浩輝、橋本美純、小林淳一、etc

 なかでも極悪だったのは康彦、四位、俺(藤田)の3人。

だいたいこんな感じだ。

康彦が8期生に買出しを強要する。後輩はとりあえず一度は拒否する。

康彦が「おまえ、藤田先輩呼ぶぞ」と脅し、それでも屈する様子がないと「おーい、フジター〜!」と叫ぶ。

「おう、なんやあ」と俺がすごい形相で上の階の窓から顔を出す。

それを見た後輩はすぐにビビって「行ってきまーす!」となる。

これが日常だった。

とにかく思いつく限りの悪さはした。四位はうまーいことやってたけど俺は要領が悪かったからほとんどがバレた。

 

こんなこともあった。

競馬学校内の診療所の事務所に、夜中に康彦と侵入した。

冷蔵庫の中を物色していたところ、スプライトとコーラのペットボトルを発見。

俺はスプライト、康彦はコーラ。グビグビグビ。うんめー。

その瞬間、康彦がドバーッとコーラを吐き出し、悲鳴を上げた。

「うわぁぁぁ、コレ、焼肉のタレや!」

これには大笑いした。

 

爆笑と言えば宝来くんにもアホ全開のエピソードがある。

外出日の帰りにお菓子を隠して持ち込んだときのことだ。

どんな好物でも「バレないモノ」が大原則なのに、ヤツが持ち込んだのはニオイが強烈なキスミントガムだった。

「くおら宝来ぃ、このガムはなんじゃあ!」

「新しいタイプの芳香剤ですっ!」

「んなわけあるかぁ!!」

俺らがクスクス笑う横で、寮官にボコボコにされとった。

 

 タバコに関するネタもある。中2から一日たりとも切らせたことのない俺は、

どうやって毎日のタバコを確保するかが入学時の大きな問題だった。

俺がとった行動は、「先輩にせびる」。入学式の日の夜に早速3年生の部屋に行って、

「タバコもらえませんか?」と頼んだのである。

そこには哲っちゃん、ジローさん、亡くなった水流添(つるぞえ)さんがいたのを覚えている。

怒鳴られるんやないかと怖かったが、「ええ根性しとるなぁ」と逆に一目置かれ、

以後5期生にはかわいがってもらえるようになった。

シケモクが多かったけど、卒業するまで毎日かかさずタバコは吸い続けたね。