大枠

伝奇集は、史上最強のビブリオフォビアにして究極の場末創造者、言語式アウトロー野郎「Jorge Luis Borges」の手になる初期代表作、『Ficciones』を基とした翻訳テキストである。色々参考にしているが、一応スペイン語の原文から起こしている。

日本語訳として篠田一士版と鼓直版が存在するなかに新たなものを付け加えるのは、「誤訳の多さが気に入らない」という理由が大きい。また、広く流布していると思われる鼓版は日本語として成立していない文章が多い。この人詩的表現は巧いのだが、正直前後の繋がりを取り切れていない箇所、意味が正反対になっている箇所が頻発していて、「お前は本当にスペイン語の専門家かッ!」と小一時間(略)。特に『バベルの図書館』は仏滅翻訳である(これについてはまたつっこむかもしれない)。

ということで、目下「伝奇集のまともな邦訳は存在していない」と言いきっていいと思う。(セイゴオさんもさ〜、お勧めするなら翻訳の駄目さつっこんでくださいよ。鼓版読んでないでしょ、ひょっとして(^^; )

#ちなみに鼓版は本当に誤訳が多い。プロローグの第一段落からしていきなり間違えている。。


僕はスペイン語の専門家でもプロの翻訳家でもないので、訳文について拙い部分はあると思う (語感の問題や詩的表現の置き換えはどうしても限界があるです)。が、論理的な側面でどうしようもなく間違った事は書いていないつもりである。翻訳方針は大体以下の通り。

正直「柳瀬版伝奇集」みたいのが出ればこんなことしなくて済むのだが、まあ無いものは自分で作るしかない。しょーがない。こうしてアジっておけば誰かいい新訳を出すかも知れないし……(訳注とか挟まってないのお願いします。どれとは言わないが……)。まあそんな感じで僕の孤独も華やぐんだと思う。(2007/1/20)

邦題について

『伝奇集』というタイトルは厳密には少し違うと思うのだけど、カッコいいし伝奇集で通ってるのでそのまま採用する事にした。

『八岐の園』を変えたのは、原題からして『El jardín de senderos que se bifurcan』と入り組んだ名前なのでそれを正直に取ったから。「道を違える者達」という作品のテーマと関係すると思ったのもある(でも篠田センスは素晴らしいと思う)。

後半『La forma de la espada』は「刀の形」で通っているが、あまり良いタイトルではないように思う。今はとりあえず『剣(つるぎ)のやり方』にしている。刀傷の形よりも、そういう傷を受けるような剣のやり取りに秘められた逸話といった色彩の作品だと思われるから。(個人的推論:原文は多分ダブルミーニング。物事が多面的に見えてくる瞬間を捉えたいのではないかと思う。自分を第三者に置いたり三カ国語で喋ったりとややこしい)

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