基礎の作り方

  そのメーカーはコンクリートを理解していますか?

 私は家を建てる上で重要な要素は、構造・基礎・そして施工の3つがしっかりしていることだと思っています。家は基礎を作る土木工事と建物を建てる建築工事の2つからなっています。本来、土木工事と建築工事は全く違う分野なのですが、ハウスメーカーによっては基礎工事と建築工事の両方を同じ現場監督がしています。このページでは基礎とその施工について皆さんに解りやすくお話ししたいと思います。

  基礎のひび割れは命取り

 各社、基礎を作る際に必ず鉄筋を組み、型枠を組み、コンクリートを流し込んで作ります。それではなぜ鉄筋が必要なのでしょう?
 コンクリートは圧縮に対する強度は非常に高いのですが、引張力(引っ張られる力)には非常に弱い性質を持っています。又、特に柱に集中して力がかかるので、柱の立つ位置やその他必要に応じて曲げ補強筋やせん断補強筋といった鉄筋を入れて、基礎が地震や重さ等で折れたりクラック(ひび)が入るのを防いでいるわけです。

 一般に鉄筋コンクリートの寿命は鉄筋の寿命と言われていますが、通常アルカリ性(PH11程度)のコンクリートに包まれている鉄筋の表面には、化学反応(酸化=さびる)を不活性にさせる皮膜が形成されて錆びることは有りません。しかし、ひびが入る事によって、硬化したコンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と化合して、炭化カルシュウムに変化することによってコンクリートのアルカリ性が失われる中性化と言う現象が起こります。この中性化自体でコンクリートやその他の物理的性質は変わりませんが、中性化が鉄筋まで及ぶと、鉄筋が錆びて膨らみ、ひびが広がり、鉄筋が直接空気に触れることによって、またそこが錆びてきます。
 かなり難しい話しになってしまいましたが、結論を言うと

 ひびの入っている基礎は施工の悪さが原因で、そのひびから鉄筋が錆びて、基礎の寿命を著しく短くすると言うことです。

 しかし、いくらクラック(ひび)が入っていても、鉄筋まで到達していなければ、中性化によってアルカリ性が失われ、鉄筋が錆びることは無い事も付け加えておきます。

 左の写真は基礎にクラック(ひび)の入っている写真です。これは後で説明しますが、コンクリート打設後(打つ)の養生(保護)が悪いため出来てしまったと推測されます。(状況から)
右の写真はコンクリートが型枠にうまく回り込まなかった例。これは、コンクリート打設時にバイブレーター(コンクリートの中に振動している棒を入れて隅々まで行き渡らせる物)をしっかりかけていなかったために出来たと思われます。

  クラック(ひび割れ)はどうしたら無くなるの?

 クラック(ひび割れ)が基礎、主に鉄筋に対して悪影響があることは、皆さんにも解って頂けたと思います。それではクラックを防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?

 上でコンクリート打設後の養生が悪いと書きましたが、クラックの全てが養生のせいでは有りませんが、おそらく最も関係があると思われますので、ここでは打設後の養生についてお話します。

 通常コンクリートは打設(コンクリートを打つ)後1年の物に比べて28日で80パーセント。91日で90パーセントの強度が出ます。そして1年以降も強度はわずかずつ上がりますが、この環境条件に左右されてしまいます。
コンクリート打設後、有る程度硬化が進むまでの間、反応に適した温度と湿度を保つ事を養生と言います。
 コンクリートは85パーセント以上の相対湿度で硬化が始まり、また乾燥による収縮が小さくなります。もし湿度が低いとコンクリートは急激に収縮をし、硬化も止まってしまうのです。しかし、また湿潤状態にしてやると硬化し始めるとゆう特徴が有ります。

上の写真のクラックは、なぜコンクリート打設後の養生によるものと判断できたのでしょう。

 この写真を取ったのは8月30日で、コンクリートの打設日は8月27日でした。中2日で型枠をはずした事になります。そして、その間コンクリートには何の養生もせず放置してありました。

 したがって上の写真の基礎は、8月の暑い時期にコンクリート打設後、何の養生(普通は吸水性のあるマットに水を湿らせる)もせずに乾燥状態にしてしまったので、クラック(ひび)が入ったと推測出来るのです。また強度についても、中2日で型枠をばらしたのでは28日湿潤状態で養生したコンクリートの3〜4割しか出て無いと思われます。(土木学会ハンドブックより)
 ただ、この家の基礎はベタ基礎なので、多少クラックが入っても、基礎が折れたりする事はなく、20年や30年は何事もなく保つでしょうが、、、、、、

 皆さんも自分の家の基礎を作っているときには必ず覗いてみて下さい。もし業者がコンクリートに何の養生もせず、暑いさなか放置していたら、コンクリートに水をかけてやりましょう。(跡が付かない様に)それだけで、クラック(ひび割れ)とコンクリートの強度が増すのですから。
 この写真は我が家の基礎の出来るまでです。
 まず基礎の出来る所を均します。うちは基礎を少々高くしたかったので土を盛ってもらっています。この時しっかり転圧(締め固め)しているかチェック!後で家が沈んでしまいますよ〜
 次に砕石(砂利)をしいて均します。ここでもしっかり転圧(締め固め)しているかチェック!
 砕石の上に防水シートをひいてその上に鉄筋を組みます。この時、必ず鉄筋は空に浮くようにサイコロ(コンクリートの箱)の上に鉄筋を組みます。もし直に鉄筋を組むと、コンクリートから鉄筋が露出して錆の原因になります。
 ベースコン(平らな部分)を打ってから立ち上がりを打ちます。この時コンクリートの継ぎ目がしっかりと着くようにレイタンス処理(コンクリートが固まる時に、浮き出てくるノロという物を水で洗い流す)をしっかり行うこと。これをしっかりしないと、打ち継ぎした部分は離れてしまいます。ここは要チェック!チェック!!!

  冬作る基礎の注意点

 夏は高温によってコンクリートが早く乾燥してしまって、クラックや強度が出ない等の不具合が出るので、湿潤状態を保つと言うことは上の説明で解って頂けたと思います。

 では、冬のコンクリート打設時に気を付ける点は何でしょう?

 冬はコンクリート打設後の養生期間に凍結するおそれが有ります。コンクリートが凍結するとは、コンクリートに含まれる水分が凍って、凍結膨張することでコンクリートを破壊することで、これを凍害と言います。
では、この凍害を防ぐにはどうしたら良いのでしょう。

 コンクリート示方書では平均温度が4度を下回る場合には、寒中コンクリートと言うコンクリートを使用しなければならないと定められています。この寒中コンクリートは凍結しにくいコンクリートだと思って下さい。これは、メーカーがコンクリートを注文するときに指定する物なので、現場を見ても違いは解りません。
 凍害とは、コンクリートの温度が下がってしまい、含まれる水分が凍結してしまうことですので、温度を下げなければ、凍害は防げます。まず材料は出来るだけ冷やさずに配合する。(これは生コン屋がやること)。混和材としてAE剤やAE減水剤(水をある程度へらせる)を使用する。コンクリートを打ち込む時は保護シート等で覆う。

 上記のことで、凍害は防ぐことは出来ます。しかし、私達が見て解るのは保護シート位ですので、夜0度を下回る様なときに、あなたの家の基礎コンクリートを打つような事になったら、メーカーの施工管理者に
「保護シートをしないで凍害は大丈夫?」
と言ってみましょう。きっと一目置かれますよ(^^)

 上の写真は積水さんの基礎です。流石ですねー。コンクリート打設後の養生としてシートをかけることは、夏は直射日光を避け、乾燥による収縮を防ぐことができます。冬は霜が下りたり、水分が凍結するのを防ぐ事が出来るのです。その上、養生期間は1週間有りました。
 この写真では、解りにくいのですが、型枠にしぼ(凸凹とした模様)が付いており、型枠をばらすとコンクリートの表面に模様が出るようになっています。通常基礎の表面はつるつるで、えくぼ等を補修してから、表面に吹き付けをして化粧をするのですが、積水さんでは、この手間を省いているようです。これは、補修無しでもきちっとした基礎を打てる自信のあらわれと取りましたが、、、、流石です。でも、、、、、布基礎なのね〜〜〜