子育てエッセイ
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私のおっぱい事情
(紗良と私のおっぱいものがたり)
紗良が3才になる前、
5年ほど前に書いたものです
羅列するときりがない思い・・・
そんな気持ちをおっぱいに対して抱くようになったのは、
2人目を出産してからだった。
3月1日、2400gで生まれた、紗良(さら)
病院で生まれた彼女は、3900gの赤ちゃんのとなりで、
それでも元気よく泣いていた。
「2700gを超えるまで、赤ちゃんは退院できませんよ」
病院の方針で、紗良は3週間、入院したまま。
1日1回、搾乳したおっぱいを届けにいった。
つまり、1日1回直接おっぱいをあげにいった。
でも、日に日におっぱいの量は減っていった。
それも、急激に。
前の日は200cc搾乳できたのに、翌日は100ccだけ・・と、いう具合。
その頃の育児日記を見ていると、毎日「おっぱいがでない」と泣いている私がいる。
本当にかわいそうな私。
朝早くおっぱいが張ってきてポンプ式の搾乳機で、搾乳する。
「えっ!これだけしかないの!!もう少し続けてみよう・・」
本当に血が出るのではないかと思うくらい、おっぱいを手でしぼり続ける。おっぱいは出ない
のに涙だけがどんどんあふれ、もうかすんで何も見えない・・。
そんなひとりぼっちのさみしい朝を何回体験したことだろう。
今思うと、なんであんなに悩んで泣いていたのかと思うけれども、
1人目はほとんどおっぱいで育てた私にとって、
せっかく産んだのに、赤ちゃんはいない、
唯一やってあげられるおっぱいは出ないというのは、
よっぽどショックだったようだ。
紗良が退院してきてからも、おっぱいがはってくることはなかった。
夜中の授乳くらいはできるかもしれないと思っていたのに、
結局、夜中もミルクをつくることになった。
台所の隅には安売りのときに買いだめしたミルクの大きな缶が積まれることになった。
1人目のときには想像もつかない情景だった。
でも私はもう泣くことも悩むこともなかった。
慣れてしまえばそれまでで、日々、二人の子どもの子育てにおわれていた。
紗良は病気がちだった。生後1ヶ月で風邪をひき、
次の月も、その次の月も毎月1度は病院に通った。
「やっぱり母乳じゃないからかな・・」
そう思うと、ちょっと落ち込む日もあった。
今でも捨てられない診察券・・
隅に1から12までの数字が書いてあって、
病院にきた月に丸をしてある平成7年のもの。
4も5も6も7も、ほとんど丸がふってある。
紗良は指を吸う。
3才を目の前にした今でももちろん。
眠たいときだけでなく、いつでも、どこでも、なんとなく吸っている。
紗良がまだ赤ちゃんだった頃、お兄ちゃんにつきあって、なかなかミルクを作れなかった間、
指を吸いながら寝てしまうことが何度あったか分からない。
おっぱいだったら、指を吸うこともなかったのかもしれない。
紗良は私から離れなかった。私も紗良を放せなかった。
なんだか、彼女に負い目を感じてはなせなかった。
生後しばらくバラバラだったからか、おっぱいで育てられなかったからか、
お兄ちゃんに手が掛かってあまり相手にしてあげられないでいたからか、
なんだかいつも可哀想に思った。
紗良が手をのばしてくるときはいつでも紗良をだっこした。
できない時はいつもおぶった。
紗良はいつもおんぶひもをつけたまま「かめ」と呼ばれていた。
朝起きておぶって、昼間もおぶって、夜寝る前もおぶって、
おんぶひもをつけたまま次の日の朝も目が覚めた。
でも紗良は、1才と半年くらいたつと、お兄ちゃんと一緒に駆け出していった。
友達のところへ、公園の遊具へ、だれかさんのところの犬のところへ猫のところへ、
私に背を向け駆け出した。
おんぶひもも小さくなった。
ふともものところが痛いから、もうしたくない。
って言いだした。
病院の診察券も次の年はほとんど丸がない。
おっぱいだったら、
もっと丈夫だったか。
指を吸わなかったか。
甘えん坊じゃなかったか。
そんなことは分からない。
それに私は、病気がちで、ちょっと歯の出た、甘えん坊である紗良しか知らないのだ。
それが、私の大好きな紗良である証拠なのだから。
私は母乳育児を推進します。
でも、体質的にまた何かの事情でそうできない人には
「大丈夫よ、落ち込まないで。今はいいミルクがあるから。」
って声をかけていきたい。
なぜなら母乳育児はとっても重要で価値のあることだけれども、
出来ない人には本当に酷なことになるからだ。
親としてやってあげられることは他にもたくさんあるはず。
出来ない人には出来ないなりに、
あかちゃんとのミルクでしか出来ないコミュニケーションを楽しめば、いいと思う。
1才9ヶ月のとき紗良に妹ができた。
おっぱいをのんでいる赤ちゃんをめずらしそうに覗き込む紗良に
「おっぱいのんでみる?」
って尋ねると、
黄色っぽい初乳のにじんだ乳房にチユッとキスをして。
「おっぱいのんじゃった」
と、ちょっぴりてれくさそうに
紗良は笑った。


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