環境問題について

 この問題はデリケートで、調子に乗って言い過ぎると「じゃあお前はどうなんだ」と言われたときに「ははーっ、申し訳ありません」と平伏せざるをえない。車の使用、電気ガスの使用、洗濯風呂台所での洗剤の使用。ゴミの排出。今の日本に環境悪化に加担していない者は一人もいないだろう。

 山へ登る人は環境問題に敏感だが、家から登山口までマイカーや交通機関を利用する。無駄に重たいディーゼルのクロカンは避けたいところだ。山にゴミを捨ててくる人はまずいないだろうが、山さえ汚さなければいいと言うものでもない。確かに山を汚さないと言うことは水質保全の点で意義はあるが、下界のことも少しは考えたい。

 現実問題として江戸時代の生活に戻るのは無理なのだから、少しづつ出来る事から改善するしかない。企業も環境ISOを取得したりエコマーク商品を出すのはけっこうだが、それを免罪符にして安閑としてもらっては困る。たとえばペットボトルで服を作ることにどれほどの意義があるのだろう。どうせ最後はゴミになるのである。それよりも容器は容器として循環再生するのが理想である。それができなければ作らないほうがいい。最終的に完全循環型社会が構築されるまで不断の努力を続けるべきである。

 消費者も便利だからといって使い捨て商品を買ったり、過剰包装のものを買ったりすることを控えなければならない。消費者のそういった姿勢がメーカーの意識を変えていくのである。 学校や家庭でも次代を担う子供たちに環境に関する教育をしていったほうがよいと思う。

 近頃、CO2の排出による温暖化の影響で鈴鹿の山にもナガフトヒゲナガゾウムシ、ツマグロヒョウモン、セスジカクマグソコガネといった四国や九州にしかいなかった昆虫が現れているそうである。(菰野町市橋先生の報告による)当然植物相にも影響が出てくるだろう。

 もうひとつ、不要な工事による自然破壊の問題であるが、これは選挙に訴えていくのがよい。我々の払った税金で我々の貴重な財産を破壊されるのではたまったものではない。いつまでも公共事業で景気の回復を・・・などと寝言を言っている政治家には落選していただくしかない。今の日本は開発期を終えて成熟型社会に入ろうとしている。開発時代に肥大化した建設業者や重機の数を維持していくだけの予算も仕事もない。それを助けようとすれば国債を乱発して工事のための工事をやっていくしかない。

 この辺りで手を打たないと、将来に禍根を残すことになるだろう。

近未来の鈴鹿

 このまま温暖化が進むとどうなるか。鈴鹿山麓にはハイビスカスが咲き誇り、バナナが収穫できるようになるだろう。山には熱帯植物が繁茂し、訳のわからない爬虫類や両生類がぞろぞろと徘徊する事になる。

 雪は降らなくなり、アイゼンピッケルは不要かと思われたが、ジュラシックパークと化した鈴鹿で危険な生物から身を守りながら登るのに有効な道具となった。

 南極の氷が溶けて海岸線は国道306号に迫り、水沢、千草、田光、石榑、新町などはリゾート地になる。むろん桑名、四日市、鈴鹿市街は海底に没し、コンビナートや本田技研は漁礁となって鯛やヒラメの舞い踊りである。

 渓流のイワナ、アマゴは絶滅し、替わりにピラニアや巨大ナマズが幅を利かすようになる。

 住居を失って菰野町や北勢町藤原町に押し寄せてくる下流域の難民は、員弁川上流や尾高、根の平、江野などの高原に住み着く。しかしあぶれた人々は、やがて治田峠や鞍掛峠を押し渡り茨川には村が復活する。榑ヶ畑、落合、保月、五僧なども活況を呈し、ネオンが林立した。

 一方、四日市南部や鈴鹿市の難民は一部御所平にとどまるが、大半は根の平、武平、安楽の峠を越え甲津畑、大河原、鮎河、山女原の住民とトラブルを起こす。結局山に追い返され、塩津、奥の畑、御池鉱山、上水晶谷周辺に一大集落を成した。

 しかしやがて穀倉地帯の水没による食糧不足が襲い、某月某日政府は国有林等の開墾を認め、ジャングルと化した鈴鹿の山で焼畑が行われるようになった。紅蓮の炎が夜空を焦がし、しばらくは太陽も見えないほどの煙が空一面を覆った。

 御池岳やイブネ、クラシは格好のトウモロコシ畑となり、鎌ヶ岳などは役立たずの山として放棄された。

 飢えた登山者の一部が、トウモロコシを食い荒らすという食害が指摘され、登山差止請求がなされた。御池岳に執着する某県立大学K教授らは深夜坂本谷から侵入を試みたが、真の谷上部で警備員に取り押さえられた。

 この事件をきっかけに農民と登山者の対立が激化し、社会問題となる。長い対立の末、登山届にトウモロコシを食べないと言う誓約書を添付することで和解が成立した。

 しかし登ってみたところで一面畑で、池やドリーネは失われどうしようもない。そこで登山者は耕作に不適な、ガレたとんがり山に集中することになる。ところがそこは焼畑で追われた野生動物の棲家となっていて、登山者が襲われるという事故が頻発し、ついに全面的な登山禁止令が発せられた。

 このように地球温暖化は登山者のためにならないので、皆さん環境に配慮しましょう。