ノーハックルサイドワインダー
   
                 WaltzViennaさんに撮影して頂きました

フライフィッシングを知らない人でもロイヤルコーチマンを見たことのある人は多いはず、
でも、フライフィッシングをやっている人の中にもノーハックルサイドワインダーの実物を
見たことの無い人も多い。
そして、フライタイイングをする人の中にも「それだけは避けている」と言う人もいる。
はて、そのフライの正体は?

特徴
確かに難しく、パーフェクトなプロポーションに巻くのは至難の業らしい、ましてや「売り物レベル」
を数多く安定して巻けるのは世界に数人しかいない。

水上でのシルエットが本物に近く、このフライがナチュラルドリフトで流れて来ればほとんどの魚は
見に来るらしい。

巻き方の要点
ウイングの巻き方がほとんどの要素になる。
ウイングをどちらも巻き込まないようにボディーの下のラインと同じ位置にウイングの下の部分が
カーブ状になっていてさらに、アイの方から見てウイングが左右対称になっていればOK。
書くのは簡単だがそれが一大事

参考文献
「フライタイイング・マニュアル」 増沢信二著 山と渓谷社 
「フライロッダーズ」 何号かは忘れましたが沼田聡さんがかなり詳しく書いておられます
「フライタイイングの世界2」 渡辺隆さん 山渓フィッシングビデオ
「レネ・ハロップの伝承」 ドリーム・エレメンツ社 なるほど、自分の巻き方との違いが解ります。

それぞれ微妙に違う様に思いますが要するに機能するべき部分がしっかり形になっていて
バランスが取れていれば良いのではないでしょうか。

まず一般的な巻き方(え?他に有るの?)

フック、ふつうのドライ用フックで良いと思います使用したのはTMC100#14ですが#16から#20がメインです、5230も軽くて良い、パートリッジのK17も私好み。
スレッド、6/0ライトケイヒルなど。
テール、マイクロファイベッツ、もちろんハックルファイバーの方がベターです、コック・デ・レオンもかなり良い(ベスト?)
ウイング、マラードウイング、極力左右対称の物を使う、一羽のカモの左右の翼から同じ場所の羽を得られればベスト。
ボディ、スーパーファインダビングが無難です、CDCダビングなんか良いと思います。



このフライを巻こうとする方ならこれ以前の解説は必要ないと思います。
一応、コンパラダンのページに書いています。

ウイングをつける場所で一度ハーフヒッチしておくと良い、と雑誌で読みました






ここからが本番です
まずウイングの幅を決めて(シャンクの4分の3前後)ウイング材から切り出し、裏同士を合わせて長さを決める
長さを決めたらウイングでシャンクとスレッドを挟み込み左手で持ちます。
この時から意識を二本の指に集中しますが力は入れすぎないように、入れすぎると指がつります。ウイングが切れることも有ります。
ウイングの角度はよく解りませんが45度くらいで解説している本も有ります。
スレッドを手前のウイングのテール側に回しシャンクを沿わせるようにアイ側の斜め上へ引く
スレッドを前方に持ってくる時は少し親指をゆるめてスレッドを少し余裕を持たせて滑り込ませる、
そのスレッドの余裕がウイング直前で無くなったときに初めて「えい!」っと引くのです。
これは次の行程でも適用し、このフライに限らず多くの場面で活用します。
見えないのがなんともつらい、レネ・ハロップさんは目で見る替わりに指が見ているのだろう、ひよっとすると目隠しでも巻けるかも。
次にスレッドをアイの上を越えてシャンクを沿わせるようにテール側へ回し斜め下へ引く
そしてテールを引っかけないようにスレッドを手前に回す。この時スレッドをフックポイントに引っかけないこととウイングのセグメントを引っかけてばらさないこと。そしてアイの方向にスレッドを持ってきて斜め上へ引く
こんな感じでOKかな?(と私は思う)
大事なのはスレッドがシャンクから離れない様にすること。
ここでウイングが少し軸方向に回転していたら戻してウイングの余りをしっかり右手で固定し、スレッドを2回か3回まわしウイングを固定してウイングの余りをカットします。
少しバランスが悪いが何とか使えそうです。
後はウイングの根元とヘッド部分のダビングですが、ピンセットやニードルを使って注意深くダビングすれば何とかなります。
ダビングについて

このまま普通にウイングをたすきがけにしても良いですがより確実な方法を2つ書いてみます。
1、ウイングの前の上方でスレッドループを作り、先に逆回転で奥のウイングの下に回しテールからアイに向かってダビングをして、もう一方のスレッドで正回転で手前のウイングをダビングします。
2、ウイングの前で堅くハーフヒッチして、まず2回ほど逆回転してから同じようにダビングをしてもう一度ハーフヒッチをして今度は正回転で手前のウイングをダビングをする。
このようにスレッドループは利用価値の高いテクニックと思います。
さらにスレッドループを2等分して3本のスレッドにするよりもループを1本にして先に逆回転から巻く方が効率はアップします。

失敗例1
奥のウイングが巻き込んでしまう。
原因は
手前のウイングのテール側が先に絞られるため指の間に隙間ができそこに向こう側のウイングが
巻き込むと思われます。
対策1
指に力をかける方法は、スレッドが引かれる反対側、つまりウイングが絞られる方に力をかける、
あくまでも適度な力で確実に。
対策2
ハーフヒッチの結び目を上に持ってきて向こう側のウイングのアイ側から巻いてみる、そうすると
テール側は手前のウイングと向こうのウイングが同時に絞られる。

失敗例2
ウイングが回転する。
原因は
指の力を緩めるのが早いか、スレッドの引き方が弱い。
対策
しっかり持ってしっかり引く。

失敗を繰り返しながらも理屈が解ってきました。一本のスレッドで一方方向に巻いていることに
「難易度の高さ」の要因が有ると思いました。

そこで私の勝手な解釈の巻き方を書いてみます

ここまでは同じですがこの時点ではハーフヒッチの必要は有りません。
この方法で巻くときはスレッドを減らすために
テールのすぐ手前からスレッドを巻き始めます
                
ウイングをつける位置でスレッドのループを作ります、シャンクの下側が良いと思います、
次にスレッドをアイ側まで進めてウイップフィニッシュをしてカットします。
ループをひねって後ろにまわす。ループをひねる方向は必ず同じ方向で!!!
ウイングでシャンクとスレッドループを挟む
指を持ち替えて、それぞれのウイングの外側からスレッドを前方に持ってくる。
ウイング後方のスレッドのゆるみが無くなったら斜め上方へ引き180度ひねる。
ひねったままやはりそれぞれのウイングの外側を後ろに回し斜め下へ引く
上の二つの動作を二回ほど繰り返すとこうなります。
この後どちらかのスレッドを固定してカットしてダビングした後フィニッシュしても良いですが、ループのセンターでカットしてそれぞれをハックルプライヤーなどではさんでつり下げて、
それぞれで片方ずつのウイングの根元をクロスしながらダビングして右巻きスレッドでフィニッシュします、この方がバランスを確保できるはずです。
こうなります。
この巻き方は欠点が3つ有ります。
1、手間がかかる
2、スレッドの無駄が多い
3、スレッドを多く使うので浮力が犠牲になる
効果としてはウイングを左右対称に巻ける可能性が多くなります。
この写真の場合ウイングをもっとダビングで横に広げるべきでした。

どれだけ写真を並べて、コメントを何ページ書いたとしても難しいことには変わり有りません。
失敗の原因を追及しながら巻くのが一番です。出来るまで苦労しますが「苦労が報われるフライ」
のようです。

他にも色々トライしました。最初は近道を探していたのですが、時々一般的な巻き方(本来の)を
してみると少しずつレベルアップしていることが解りました、そうです、回り道をしてまた大通りに
戻ったのです、回り道をして大通りの大切さを知りました。
改めてカール・リチャーズ、ダグ・スウィッシャー、マイク・ローソン、レネハロップの4人に感謝
したいです。
「すばらしいフライをありがとう!!」

バリエーション!!

マリードウイング、イエローのダッククイルを付けて巻いてみました。
ウイングを巻いた後、指が震えました。


彼らの著書「SELECTIVE TROUT」の初版ではこんな感じのノーハックルダンが載っていて
サイドワインダーとは書いていません(改訂版には有ります)


CDCをシャックのつもりで付けました(ウイングが割れてる!!)


本の中にはクイルセグメントをこの様にまとめて巻いたノーハックルダンも紹介されています。
今年は使ってみます。

さて、ここで簡単なノーハックルダンのタイイングを紹介します。(この時点でテールとボディーを
巻いて有る事とします)

まず、これはノーハックルダンに限った事ではありませんが、ウイング材に乗っているフックのアイ
が有る辺りで薄く縦のラインが有るのが解るでしょうか?そこから右側の部分は堅くて太いので
スレッドで巻いてもつぶれません、
ですから、細くて巻きやすい部分がフックシャンクの1.5倍以上有る場所からウイングとしての材料
を切り出します。
切り出す幅はシャンクの1〜1.5倍。

このまま巻くと先細りになって浮力が弱いのではないかと思います、そこで元の方をしっかり持って
先端の長さを合わせる様にします、こういう処理をすると言うことは必ずしも左右一対のウイング材
から切り出す必要は無いと私は考えます、つまり、サイドワインダーに使うマテリアルに適さない
片方余った物を有効利用するのが良いと思うのです。

先端を揃えたウイング材です、完全に揃える事は難しいのでそこそこ適当に、それを折り返すか
または丸めるかしてブラシでほぐします。

ほぐしたウイング材を長さを合わせてボディーの前端辺りを左右から挟んで持って取り付けます、
出来ればシャンクと平行か30度くらい傾けて(サイドワインダーよりは簡単です)視認性を重視
するならばインジケーターをウイングの間に付けても良いと思います。

写真奥が数匹釣ったクランパーノーハックル手前が巻いたばかりのクランパーノーハックル
使うほど味が出ます、浮力も良し!。最近出たC○Fのパワーフロートを付けると更に良い。

ティムコから出版されている「フライフィッシングの戦略」という書籍の中で
イラストと解説だけで書かれている「ダブルウイングサイドワインダー」と
思われるフライを巻いてみました、何分本物の写真さえ見たことが無いので
「こんな物かな?」と考えて巻きました見えない方のウイングが今一なので
ましな方を撮って表示しました。

レネ・ハロップのフライを入手したので私の巻いたノーハックルダンと外観上の違いを比較してみました。
下の写真の真ん中二つがレネ・ハロップのノーハックルダンです。

とにかく私のはウイングの形状がバラバラで開きすぎ、テールも長くてばらけています。

私のベストのフライ(左)とレネ・ハロップのフライを横から見ると、
アイ側からの絞りが不十分なためかウイングの先端が尖っています、
他にも全体的にウイングの前部分のふくらみが足りません。

レネ・ハロップのフライ(右端2つ)を先頭にいくつか並べました、このページをアップロードした頃よりは
レベルが上がっていると思ってはいるのですがまだまだ遠いですねえ。