半田市 榊原計国氏のご意見
E-Mail kei@cac-net.ne.jp
”素朴な疑問”コーナーに私もひとこと言わせてくださいませ。
1.御池岳について
@ 御池岳の標高について
このことについては、私も深い関心を持ち、出きる限り調べたつもりです。何
しろ、御池岳の標高はそのまま鈴鹿の最高となるので、ほかの鈴鹿の山とは違う意味
合いがあります。
まず、御池岳の標高について、黒田さんもご指摘のようにいろいろな表記があ
り混乱しておりますが、どうしてこのような状況が生まれたかというと、それは実際
の最高点である丸山の標高が長い間地形図に表示されていなかったからにほかありま
せん。
・1241M説について
奥ノ平と呼ばれる標高点1241mは以前よりあったのですが、登山者
の間では常識となっていた最高峰の丸山には標高点、標高値がなく、1240m以
上、1250m未満ということしか分かりません。そのために実際に数値として表記
されている1241という値を代用して御池岳の標高としたものと思われます。丸山
の標柱や西尾氏の表記がそれに当たるのではないでしょうか。なお、西尾氏は標高の
表記について、あまり関心がないのか「鈴鹿の山と谷」においても多くの間違いが見
受けられます。
・1242Mもしくは1243M説について
1242mもしくは1243mというのは、1241mの奥ノ平の標高点より
は丸山は明らかに高いのでそれよりも数メートル高い数値を採用したのではないで
しょうか。この数値は、山口兄弟の「鈴鹿の山」昭和46年度版で採用されているた
めそれをそのまま引用している場合も多いように思います。
・1250M説について
これは以前、近藤さんたちが言っていた説ですが、ご本人が言われるようにこ
れは村長氏が著書で使われた地図をもとにしたものです。ただし、これは村長さんが
作成したのではなく、永源寺町が作成した(もちろん実際は民間の地図会社に作成依
頼した)2500分の1の国土基本図です。その地図の丸山地点の標高数値が125
0.2mとなっており、そこから1250M説が出てきたことと思われます。ちなみ
に、1241Mの標高点は、この地図では1242.9mとなっています。
・1247M説について
無論、出所は現在の地形図からです。これはしののめ氏が指摘したとうり、昭
和63年10月30日発行の25000分の1地形図「篠立」の3刷からですが、
(私が確認できているのは2刷にはなく、5刷にはあるということまでです)これは
それに先立ち次のような経緯があったためです。
国土地理院では、「日本の山についてその正確な高さなどを知りたいという要
望が強くなってきている」が現在の地図のみでは「必ずしも正しい山の高さが読み取
れるとは限らず、山については十分な情報を提供してきたとは言い難い面もあっ
た。」ことから「山の高さに関する委員会」を組織し、「全国的に著名な山を始めと
して、登山やハイキングの対象となる山」などを「対象として、可能な限り正しい山
の高さを調査した。その結果は、逐次地形図に表示するとともに、その高さと関連事
項を整理した資料を作成することとし、昭和63年より調査・検討を進めてきた」こ
とによる一つの成果なのです。
このことは国土地理院が出している「日本の山岳標高一覧 ―1003山―」
に詳しいです。その中に「この調査で標高値が改正された山の一覧」というのがあ
り、その中に鈴鹿では霊仙山、御在所山と共に御池岳があります。御池岳について
は、従来1241Mの標高点としてきたものをその標高点より北西方 410mの地
点で、1247mとするということが出ております。このことを受け、その後の地形
図に標高点1247mが丸山の地点に載るということになったのです。
私自身は、これにより御池岳、ひいては鈴鹿の標高についての結論は出たのではな
いかと考えております。
A 丸山、「鈴北岳」について
御池岳はご存知のとおり、カルスト地形のため広大な山頂部を持っていま
す。そのために敢えて、山頂部の数あるピークの中から最高点ピークを丸山と呼ぶよ
うになったのだと思います。
この名は、昭和39年6月25日印刷、昭和40年4月1日改訂二版発行の
「関西の山三〇〇コース」の御池、藤原、竜岳縦走には頂上、もしくは頂上一帯とい
う表現しか見られないが、同じ山口兄弟、執筆の昭和41年6月1日初版発行の「鈴
鹿の山」には、山頂に立つ「丸山」の道標の写真と共にその名があります。なお、こ
こでは写真の下に「鈴鹿山脈の最高点、御池岳の丸山(1241m)」との記載があ
ります。以上からするとおそらく、昭和30年代後半から登山者の間で、丸山という
名が使われ出したのだと思われます。
わたしは、丸山についてはまだしも、近藤さんからも一言いっていただいた
ように、「鈴北岳」の名称は本当におかしいと思っています。あそこは展望のよい、
また通行の要所で昔から御池岳の登山者にはなじみの場所となっていますが、あくま
で御池岳の広大な山頂部に数あるピークのひとつに過ぎません。それを「鈴北岳」と
いう名称で呼べば、本来、御池岳の中のいちピークに過ぎないものにあたかも御池岳
と同等であるかのような、御池岳と並び立つ山であるかのような誤解を招くもので
す。実際に多くのガイドブックや道標などもそのような扱い方をしているように見受
けられます。問題なのは、引いてはそれが御池岳の本来の大きさ、本当のすばらしさ
の理解を妨げることになってしまうのではないだろうかと思うのです。
「御池岳」「鈴ヶ岳」という名称が非常に古くからあったのに対して、この
ピークには、(「鈴北岳」と呼ばれるようになったのは、丸山同様、昭和41年の
「鈴鹿の山」が初登場で、なおかつこの時点ではまだ「ジャンクションピーク──鈴
北岳」となっているので、使われ初めてまだ、間のない様子を表しています) ずっ
と特定の名は付けられてきませんでした。それが本来の正しい位置付けであるように
思います。ただし、現在の状況を考えれば何らかの呼び名は必要ではあると思います
が、それは「御池北峰」「鈴北ノ峰」くらいの呼び名がふさわしいのではないかと
思っています。そうすることが御池岳自体の本当の規模、大きさを正しく理解するこ
とになるのだと思います。わたしが、クラシ北尾根から撮った(新ハイキング関西3
9号に掲載していただいたもの、近藤さんに「御池岳残雪」の裏表紙で使っていただ
いたもの) あの巨大空母のような山体全体が御池岳なのです。
2.藤原岳の山頂について
これも確かにはっきりとしていないことの一つですよね。藤原岳の特徴をあの山
上の平原と捉えるのならば、そこにある展望丘が山頂であり、その標高をもって藤原
岳の高さとなすべきなのかもしれませんがどうもそのようにはすっきりとはしてない
ようです。
これにもいくつかの理由が考えられますが、まずあの地域の最高点が、展望丘か
ら結構離れた、ここが藤原岳にはいるのかと少し首を傾げていまいそうな所にあるこ
と。しかし、標高は少しでも高い方がよいと考える人たちがいて、藤原岳の標高とし
て、天狗岩の1171mをとる場合が見受けられるわけです。
残念ながら、前出の「日本の山岳標高一覧」には鈴鹿の山として六山載ってい
ますが、藤原岳はありません。山頂は、展望丘とするが、標高値は、天狗岩の117
1mをとるというのが最近の収まりどころのような感じです。
少し違う視点からの話ですが、出張からの帰りの飛行機から、時々御池岳、藤
原岳の上空を通過することがあるのですが、上からの二山は、同じような大きさの細
長い楕円形の盛り上がりが、少しずれて並んでいるかのように見受けられ、それは、
地図で見る、佐渡島のような感じがしました。それは、膨大で、立派なものでし
た。その場合の藤原岳とは白船峠や、冷川岳さえ含めて、一つの山体と感じられるも
のでした。
3.御在所岳について
@この標高についても御池岳と同じことで、検討の結果、従来は、三角点のある
ところの標高をもってして、御在所の標高としていたものを実際の最高点である、三
角点の西方 100mの地点を1212mとして御在所の標高とすることになったと
いうことでありましょう。私にはよくはわかりませんが、お役所というところは、
いったん決まっていることは分かり切っていることでさえも簡単には変更が利かず、
このような検討委員会なるもののような協議をしてしか見解は変えられないというこ
とではないでしょうか。
A山名について、「近畿の山と谷」では、標題が「御在所山」文中では単に「御
在所」となっています。肝心なのは”御在所”の部分であり、そのあとが”山”で
も”岳”でもあまり意味のないことなのかもしれません。
御所平については特に何もありません。しかし、以上については私も相当の関心を
示し、結構調べたり、考えたりしたことでしたので、同じような疑問を持つ人もいる
のだなあと感心しました。もちろんこれは私の私見ですので、黒田さんが同じでなく
てもよく、また、黒田さんは黒田さんの現在の意見も聞いてみたいものです。
管理人より
大変詳しいご見解を有難うございました。私だけでなく、読者の皆様にも参考になったと思います。榊原さんの鈴鹿に対する情熱と向学心には感動いたしました。
さて、現在の私の見解を述べよと言うことですが、分からないから疑問コーナーに取り上げたのであって少々困りましたが、少し書いてみたいと思います。
御池岳の標高については、おっしゃられるとおり鈴鹿最高点を兼ねているのですから重要です。かといって素人で、測量機器も無いのですから独自にやるわけにもいきません。まず、1247mを信用しています。しかし、愛知厚顔氏が国土地理院から得られた「実測ではなく推定である」と言う返事が気になります。
御在所岳については国土地理院からご返答を頂いた通り、1212mの最高点が標高であり、三角点の看板は間違いを堂々と展示しているのであって機会があればロープウエィ会社に指摘したいと思います。
藤原岳頂上については個人的に天狗岩だと思っています。榊原さんは飛行機からご覧になって佐渡島に例えられました。その概念を思い浮かべるのに誠に的を射た表現だと思います。御池岳と藤原岳は真ノ谷を境として並び立つ長楕円形の巨大な山塊であり、カタクリ峠付近を共有しています。御池岳のテリトリーは西は鈴北岳はおろか、鈴岳、茶野辺りまで含み、南はノタノ坂まであります。ですから、鈴北だけでなく土倉に岳をつけるのもおかしいと思います。まあ、そう言い張っても地図に記載されている以上しょうがないですが、地形的にはそうです。
藤原岳は広義に冷川岳(荷ヶ岳)を含み、頭陀ヶ平・天狗岩・1128ピーク・展望丘からセメント工場や孫太尾根までの巨大な山塊であり、そしてその地形的な中心部は天狗岩です。標高も一番高く当然山頂と目される訳ですが、展望丘に「藤原岳山頂」の標識があります。まあ、駅や聖宝寺からの登山道が南東に偏っていることもあり、大局的に山を見ていないと言うことでしょう。
御池岳テーブルランドのほぼ中央にあって標高が一番高い丸山が頂上なのは自然なことであり、それなら藤原岳も天狗岩が頂上であることが自然だと思います。
しかし三重県側平地から見れば展望丘が目立つことも事実で、古来よりそれが藤原岳山頂とされているなら、それも尊重されるべきかも知れません。以上が私の見解です。
なお、雨乞岳道沢谷峠についての情報をお持ちの方は榊原氏へメールして下さい。