ミズナラ (千種街道)

  

 このような途方もないミズナラは他に見たことがない。同街道の大シデとともにワンアンドオンリーかも知れない。真の巨木とはこういう木を指すのだろう。鈴鹿の山は標高も低く人里に近いので、殆どの木は成長する前に薪炭として伐採されてきた。巨木として存在するのは、街道の並木として保護されてきた賜物だ。しかし放置しておけばすべてのミズナラがこのような巨木になるわけでもなかろう。やはりそういう遺伝子がまれにあるのだろう。

 最初「ミズナラ大王」と名付けて、なかなかいい名前だと悦に入っていた。ところが中島伸男氏の「近江鈴鹿の鉱山の歴史」に、地元古老の話が載っていた。「杉峠へ行くまでには甲斐信の杉(雨乞谷の近く)や一反ホーソ(ミズナラ)もある」

 「一反ホーソ」がこの木だと特定されていないが、名前を戴くような存在感のある木は、これ以外考えられない。立派な古名がある以上、ミズナラ大王はあっさり引っこめよう。

 一反は長さではなく、広さの単位である。たぶん大きく枝を広げる様子を現しているのだろう。ホーソはたぶん、ホソノキの意味。三重県でもコナラ、ミズナラの木を方言でホソと言う。

 

幹周  606cm    2006年10月測定

通称  一反ホーソ