御在所岳本谷     02.01.13

同行者   U

 昨夜は新年会で湯の山のホテル泊まり。またH.Kの猛獣のような地響きのするイビキに悩まされて、夜中に入り口の押入れに布団を運び、その中で寝た。昨年のビデオテープの再生のようだ。押入れの中は狭いが何とか5時間くらいは眠れた。

 朝食を早く食べて旅館街の間の坂道を車で登り、旧スカイライン料金所へ着いた。駐車場は満車で苦労して車を停める。また鈴木さんと言う御在所名物のおじいさんに出会って挨拶を交わす。これまた昨年と同じ。昨年と違うのは今日は単独ではなく、久しぶりに山に復帰したU君と待ち合わせだ。10分位するとU君がやって来た。支度をして出発。8:35頃だったと思う。

 御在所山の家からしばらく左手(右岸)の道を歩く。1月初旬は快調だった寒波も中休みで、最近はバカ陽気が続いている。今日も暖かくていやな予感。雪は殆ど無い。谷に降りると、夏の沢登りの如し。今度は右手の巻き道を登る。谷芯に戻って5〜8mの滝を水流の脇を直登したり巻いたりしながら高度を上げる。少ない雪はシャーベット状で、3月下旬の如し。情けなくて泣けてくる。途中でフリースもヤッケも脱いでウールシャツ1枚で登る。手袋も要らない。

 頑張るU君9:05巨大なチョックストーンを持つ不動滝に着く。ここは左から大高巻き。谷へ戻って暫らく登ると初めて氷を見た。この暖かいのに違和感がある。ここで先行していた3人パーティーを抜く。雪は少しづつ増えてくるが相変わらずグチャグチャでどうしようもない。いつもならこの辺でアイゼンを付けるが今日は要らない。多段の滝右手急斜面を巻く。

 滝上を左へトラバースし、ハーケンに足を乗せ木の根をつかんで狭い岩棚に攀じ登る。ここは高度感があって少し緊張する所だ。落ちたらえらい事だ。岩棚を移動する所にスリングが張られている。こんなの前あったかな。しばらく滝とゴーロの急斜面をひたすら登る。右手には一部凍った大黒滝。左からぐるりと右に回りこむ。花崗岩の危うい登りがあってトラロープが張られているが、ロープはつかまずに登れる。

 また滝が連続する所を右手の笹薮の急斜面を這い上がる。谷芯へ戻って詰めていくとじきに三角岩。左手から行くと穴潜りの名所だ。今日は穴を潜らず、右手の岩盤を登った。凍っていればアイゼンのツメがものをいう楽しい所だが、今日は全くダメで攀じるのに苦労した。ブランクのあったU君の足が遅れがちなのでこの上で待つ。やはり常時登っていないと体力は落ちるようだ。大黒滝三角岩なんとか凍っている岩

 

 

 

 

 

 

 

 

待っている間にまたさっきのパーティーが追いついてきた。タバコを一服しながら話すとやはり名古屋からの人たちだ。鈴鹿は愛知県人に占領されている。今日は暖かくて雪が全くダメですねえ・・・とお互い嘆く。とうとうアイゼンは使わずじまいだ。重たい12本爪を担ぎ上げただけに終る。ピッケルはそれなりに役に立った。

 上空のゴンドラから手を振りながら「頑張ってー」の声が降ってきた。頑張ってほしいのはあなた方である。人間の二本の足は歩くためにあるんですよ。老後に寝たきりになっても知らないよ。

駅近し本谷最上部から大黒岩

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとは急な雪壁を詰めるだけ。傾斜は急でもラッセルよりははるかに楽だ。三脚を担いだおじさんに追いついた。やはり名古屋の人。ルンゼ最上部で右手のゴンドラ駅方面へ行く人と別れ、左手の笹薮の急斜面に取り付いて大黒岩へ上がった。10:40。展望雄大、高度感抜群。ここで巡視路へ向かう人たちを眺めながら大休止。観光客のたむろする山頂へ行かなくてもここで充分だが、同じ道を帰るわけにもいかず山上公園へ向かう。

 レストランの前では子供達がソリに乗って大はしゃぎ。風があるので駅の上まで上がって建物の陰で昼食とする。お湯を沸かしてラーメン雑炊。春のような陽気で相変わらず上着は要らない。ゆっくりしてから展望の利くところで写真を撮った。雨乞岳、イブネ方面はよく見える。しかし冬の空気ではないので、御池岳となるとぼんやりと霞んでいる。

 鉄塔右白い所が本谷。鉄塔上が大黒岩(中道より撮影)帰りは中道をダーッと下る。オバレ石上部の岩の張り出しから本谷全行程が手に取るように眺められる所がある。ここから見た本谷上部の傾斜ときたらものすごいものがある。壁にさえ見える。途中の三角岩も見えている。よくあんな所を登ったなあとしみじみ思うが、現場ではそう大した感覚はない。この谷を本谷というと西尾氏に叱られる。一ノ谷本沢と言わねばいけないそうだ。しかしもう本谷という名称が一人歩きしている。

 駐車場で鈴木さんにまた会った。失礼ですがお歳は?と尋ねると七十七になりますと言うお答え。毎週ほど冬の御在所岳に登っておられる。「あんたのお父さんもそんなもんやろ。まだ老け込んだらあかんと言うといて下さい」と言われた。私の父はまだ七〇になったばかりである。どうも恐れ入ったお人である。八〇になってもお元気で登られますようお祈りします。