忘れ去られた道 ソノド 2015.10.11
やっと天気が固まり晴れが続いたのに、日曜に限って予報が悪い。天の配剤に文句も言えないが愚痴も言いたくなる。晴れはしないが雨は止むとのことで決行。H君のリクエストでソノドへ。
ソノド唯一の登山道は林道終点から谷を登るコースで、エアリアにも破線でなく実線で描かれている。ここは6年前、薮ヶ谷を遡行した帰りに一度使ったことがある。ここからソノドへ登るだけなら楽勝だと思って雨が止んでから家を出る。入口の打上集落の神社では秋祭りで、親子連れが楽しそうに歩いていた。時山へ向かって奥へ進むと暗くなってきてまた小雨模様だ。気がめいる。
薮ヶ谷林道は通行止めであるという噂を聞いたが、ゲートもなくそのまま進入。これを歩くと時間を食うので有難い。ただし大変な悪路である。幅員がないうえに谷側の路肩が軟弱で恐ろしい。しかも落石は落ち放題。タイヤを切りそうな尖った石が多い。道のど真ん中の落石をまたいだらガツンと腹を打った。オマケに水たまりで車は泥だらけ。
ようやく終点に着いて駐車する。登山口の表示はなく、古ぼけたテープがあるのみで道型もない。H君は「ここから登るの?」とけげんな表情。度重なる豪雨で道らしきものはあったりなかったり。沢沿いに歩けるところを探しながら登るというのが実情である。目印は2回しか見なかった。それも折れた枝に巻かれたものが地面に落ちていただけである。とても登山道と呼べる代物ではない。
雨上がりで石が滑るし、斜面の泥の中の石も体重をかけると崩れ落ちてくる。危く下敷きになるところだった。楽勝のはずが神経を使って疲れる。もういないだろうと思っていたヒルもお出ましだ。やがて前方の苔むした倒木に黄色いものを見つけた。近付くとヌメリスギタケだった。いや谷沿いの倒木に生えるのはヌメリスギタケモドキだったかな? 図鑑を携帯していないので分らない。しかしモドキだろうがなかろうが食べられるのは同じことなので写真を撮って収穫する。少し上に古い鉄製の車輪が落ちていた。トロッコではなく牛車か荷車の車輪のようだ。こんな所で使い途があったのだろうか。
滝の巻きも崩れていてヒヤヒヤである。窯跡がたくさんある。しかし登っても登ってもワサビ田に着かない。キノコを採っていたとはいえ1時間10分も掛ってようやくワサビ田に着いた。今はもちろんワサビなんぞひと株もない。710m付近から谷が急傾斜でゴミゴミしてきたので、谷を捨てて右手の支尾根らしき所に取り付く。これがまた急登で泣けてくる。体力の衰えを痛切に感じる。木につかまって四肢総動員法を発令しないと登れない。人間辛抱じゃ、南無阿弥陀仏と念仏を唱えていると、やがて前方が明るくなってきたが、すぐそこに見えていてもなかなか着かない。やっと・726の尾根に出ると、そこは楽園だった。なんて歩き易いのだろう。気の早いシラキの紅葉を愛でながらチンタラ北へ進む。シラキだけとはいえ、その本数が多いので立派な紅葉になっている。
ソノド着。コースタイム1時間半のところ2時間20分も掛って、私らの遅さもなかなか大したものである。ソノドは柴崎芳太郎が埋設したという三角点以外何もなくて寂しいものである。以前あった奈良大の標柱も水色の看板もなくなっていた。山名表示がないと山頂に登ったという実感がない。林道も登山道も山頂もすべて世の中から忘れられている感じがする。東近江市と違って大垣市は山の整備に関心がないのだろうか。藪ヶ谷から霊仙山への遡行道もジャングル状態だし。ソノドの山頂はもともと立木で展望が悪いが、今日はガスで隙間の景色さえ見えない。どうせ誰も来ないだろうから三角点の脇で昼食とする。シートを広げて登山靴を脱いでくつろぐ。極楽じゃ。
谷道を再び下りるのは御免なので、726の尾根を下りる。この尾根は所々尾根芯にアセビがあるが、総じて歩き易い。しかも下りなので鼻歌ものだ。726標高点の先で本尾根と別れ、登山口に向かう支尾根を下りる。薮はないがかなりの急降下である。放置された植林が痛々しい。後ろからH君の落とした落石が私のくるぶしに命中した。一瞬激痛が走ったが、靴の一番厚いクッションがある場所なので事なきを得た。小石でさえ、こんな衝撃があるのだ。大きさもスピードもケタ違いだった御嶽の噴石の威力は空恐ろしいものだったろう。
林道に着地する直前は凄い傾斜で、木の根を順番に滑り止めにして下りた。下山時刻は2時ごろ。まだ早いし、天候も回復してきたので車で五僧峠の様子を見に行く。この車道はいったん完成した後、すぐ崩落して長い間放置されていたが、どうなっているのか。どんどん進むも通行止めのゲートがない。あれよあれよと言う間に島津越えの看板がある五僧峠へ着いてしまった。何だか妙な気分だ。久しぶりに神社へ行ってみる。神社に至る道は健在で、狭いながらも境内は篝火のあとがあり、掃除道具も置いてあった。節目には元住民が集まるようだ。
ついでに滋賀県側にも下りてみる。すぐ権現谷林道に出た。曲がりなりにも島津越えは全線車道となった訳だ。もひとつついでに落岩橋を渡って進んで見る。ここも崩落の工事は終わっていて通れる。ただし路上は落石だらけ、道脇の草は伸び放題である。こうなったら保月まで行ってみよう。ヘアピンを越えて折り返すと集落が見えてくる。お寺の鐘撞き堂も健在だった。H君が神社の立派さに驚く。ちょっと駐車して参拝。柏手を打っていたら社の裏手から物陰が走ってドキリとする。何とキツネだった。ここ、お稲荷さん? キツネが昼間に現れることは珍しい。しかも逃げない。ちょっと写真撮らせてもらうよ。
こうして登山後、社会見学までできた。早く下りるのも三文の得?