佐目子谷からタイジョウ 03.06.08
同行者 Shigekiさん、とっちゃん
佐目子谷は地図を見ただけでゲップがでる。特に二万五千図の「御在所山」と「日野東部」を繋げて見ると目まいがする。この山鳥の尾のように長々しき谷の完全遡行にとっちゃんがえらく御執心なので、Shigekiさんと私がサポートすることになった。私とてボランティアではなく、優先順位は低いながらいつか行こうと思っていた。依頼がなければまだ3年くらいは佐目子谷に入らなかったと思う。
表向きはシガケニアンのとっちゃん、Shigekiさんとミエケニアンの私と江勢親睦登山である。しかしShigekiさんも私もレディーファースト精神のカケラもない男であるから、とっちゃんも大変だ。
とっちゃん 「みんな同じ地図持っていってもしょうがないから、私置いてこかな」
私 「地図なんかメカタのうちに入らんやろ」
Shigekiさん 「地図持ってかんと、はぐれた時帰れへんぞ」
シガケニアンのお二人は仲がいいのか悪いのか知らないが、終日掛け合い漫才のような言い争いをしていた。
バックウォーターの橋を7:30発。しばらく左岸の道を行く。コアジサイが美しい。巨岩にプレートを埋め込んだ所から河原を歩く。私は基本的にソロイストなのでマイペースでしか歩けない。Shigekiさんがいるからまあいいやろと、すたこらさっさと先に行く。ちっとも高度が上がらずイライラするうちにハチノス谷出合に着いた。私とて最低限の人間性はあるのでここで待つことにする。その間、姫ガ滝を見に奥に入った。想像よりずっと素晴らしい滝だった。なるほど、構造的に確かに姫ガ滝である。今日は水量も多いらしく、庵座の滝なんかよりずっと美しい。戻って朝食代わりのおやつを食べているうちに後続が合流した。
次の目標を青淵にしてどんどん歩く。めぼしい滝やゴルジュもなく、長いだけの谷である。炭焼き道はコマギレで使い物にならない。ゴーロの中を如何に疲れずに歩くかという、ルートファインディングだけが仕事だ。飽きてきた頃、もしかして青淵?のような場所に着いた。どうも小規模で違うようだが、越えるのが困難なような場所だったので寝転んで待つ。
サメゴ谷下流の様子
やがてShigekiさんが到着。Shigekiさんもマイペースに切り替えたようで、とっちゃんは置き去りである。しかしこれでいいのだ。迷いようのない谷歩きだし、マイペースのほうがお互い疲れない。いつぞや新ハイに参加したときも殆ど放し飼い状態で、みな勝手に歩いていた。要所で落ち合えばいい。但し微妙な分岐は先に行ってはいけない。
3人揃って休憩する。Shigekiさんによればこれは青淵ではないそうだ。困難に見えたが滝の左の岩を簡単に登れた。岩の上に出たら、なんとそこが間違えようもない青淵だった。大プールで夏に泳いだら気持ちよさそうだ。しかし神崎川ほど青くない。右を巻く。上からも写真を撮った。次は深谷出合まで歩こう。
ミニゴルジュ 青淵
時折巨岩や淵が出現するが、通過困難な場所は全くない。ただひたすら長ったらしい谷である。高度的に深谷だろうと思われる場所でまた休息。そのあと黒い岩の簾状のナメ滝があった。そこを越えるとハエがブンブン飛んで異様な臭いがすると思ったら、カモシカの死体がアバラ骨をさらして小滝に引っ掛かっていた。こんなの見ると、飲み水現地調達派の私は青くなる。
左岸の大ガレで谷は左に曲がる。さすがに水量が減ってきた。両岸が低くなってきて濡れなくとも横を歩けるようになってくる。二次林が素晴らしい。870mで二俣。左は銚子に突き上げるクチクマ谷だろう。集水面積や水量から見てこれが佐目子谷本流と思われる。しかし佐目峠は右である。右岸を高巻きしていると絶対間違える場所である。案の定そちらに入りかけていたとっちゃんを呼び寄せる。この辺り、サラサドウダンの花がいっぱい落ちている。見上げるとまだ付いているのもあった。
これも佐目方面より水量が多いオククマ谷を見送ると前方が明るくなってきた。右寄りに登っていくとドンピシャ佐目峠に出た。すぐ近くに鮮やかなヤマツツジが咲いていた。南に高く東雨乞岳を仰ぐと山頂に人が見えている。着いたのがPM1:11だから5時間半以上掛かっている。単独なら1時間は楽に短縮できると思うが、多分通しで歩くことは二度とないと思うので意味はない。しかし部分的に使うには良いルートだ。
峠から少し西に上がった見晴らしのいいところで昼食にする。少し日が翳ってきていい具合である。自宅から見る姿と裏返しになった御在所岳や鎌ヶ岳を眺めながらビールで乾杯する。普段アルコールは舐めもしないが、今日は少し頂く。渓流シューズを脱いで裸足になると気持ちがいい。
実は朝神崎橋集合と言うので何でやろと思っていたら、風越林道に置き車をするためだった。とっちゃんの強い希望で、調子がよければ銚子ヶ口まで縦走するつもりだったらしい。私の車を奥に置いてきた。むろん不調時はフジキリ谷に降りるつもりでそちらにも置いてきたとのこと。私もShigekiさんも既にそんなしんどい事をする気が失せていたので、とっちゃんもあきらめる。そう言えばたろぼうさん達が以前銚子ヶ口縦走をやられたようだ。
佐目峠から鎌尾根 タイジョウへの尾根から銚子ヶ口
とっちゃんの誤算はフジキリ谷にも車を置いたことだ。そら、楽な方に降りるでしょう。どうしてもやりたければ置き車を風越谷一本に絞り、背水の陣で臨まなければならない。今度はとっちゃんが最後の砦であるタイジョウ行きに固執するが、Shigekiさんは北谷からさっさと帰ろうと言う。「あかん、タイジョウ行って」 「行かん」 「行って」 「行かん」。やれやれ。
フジキリ谷の車のキーはとっちゃんが持っているので最後は勝つ。アゲンギョ周辺はサラサドウダンが多いが、なぜかベニドウダンはない。タイジョウへの尾根は展望はないが、いい道である。しかしアップダウンがきつい。途中のガレから銚子ヶ口山塊がよく見えた。P1084はシャクナゲだらけだ。銚子ヶ口へ行かなくても良くなったので昼食をゆっくりやりすぎて時間が押してきた。
タイジョウは展望がない。ここのプレートは標高が間違っている。そう言えば竜ヶ岳の重ね岩の看板も標高がデタラメだ。下りは西尾根ルートを取る。急降下だ。地図に現れない小尾根に間違えて入ったようで、ものすごい急斜面になりグリセード状態になる。少し左に振りすぎたようだが、ガンガン降りる。またとっちゃんは置き去りだ。いたわりの精神のカケラもない困った男どもである。アケビ谷沿いに降りてやっと登山道に出た。鉄橋のところで川に下りて顔を洗う。駐車場に着いたら6時を回っていた。