銚子ヶ口フルコース    11.07.10


 しばらく山を離れていると出るのが億劫になり、このまま山をやめてしまいそうで怖い。それでは健康にもよろしくないので汗をかきに行くことにした。久しぶりで体力的にきついし、この暑さで倒れるといけないので楽そうなコースを選ぶ。風越谷林道を車で詰め上げてモノレール沿いに銚子ヶ口へ登り、東西南北峰を巡り、水舟の池を見て帰ることにしよう。

 伊勢近江国境の石榑峠を越えるという儀式がなくなり、ハンドルを握っているだけですぐ愛知川である。楽ではあるが有り難味も薄れがちだ。三重では曇天であったが、トンネルを抜けると青空ものぞいた。まだ神崎橋は工事中で、早朝からガードマンの方が旗を振っている。ご苦労さま。川遊びの車がいないのはまだ早いからだろう。風越谷に以前あったゲートがなくなっていた。傾斜がきつくてエンジンが喘いでいる。傍若無人の猿がのそのそと道路を横断する。モノレール始点の平坦地に駐車する。外は案外涼しい。高度は660m。杠葉尾から登ることを思えばかなりのインチキではある。

 インチキとはいえ山頂までの高度差400m。ぐうたらの体には厳しい。じきに汗が噴き出す。距離は近いが見上げるような急登が多いので休みまくりである。ヒルが怖いのでレールの上に乗って休む。ふとこのままレールの上を歩けないかと考えた。平均台より細いレールではあるが、やってみるとけっこう使える。右足が常に支柱に乗せられるのがよい。道が狭いところでは効果的ですらある。だが急登部分では使えない。そして地面と高度差がある所は危険である。そうやって遊びながら高度計をにらみつつ登る。東側に展望が出てくるがガスが濃くて遠くは見えない。コアジサイがたくさんあるが花は少し。右手にブナが出てくるとようやく終点である。

       線路は続くよ・・・                 立派なブナ              ガスで展望イマイチ

 少し平坦地を歩くと須谷川からの登山道が合流する。ここから灌木の中を少しばかり登ると東峰である。地面に小さな赤い玉があるのはアカモノだろうか。東峰は眺望に優れた場所ではあるが、今日はガスが多く、谷尻谷付近の凹凸した尾根が見えるだけである。アキアカネが乱舞している。地面に座り込んで水分補給とヒルの点検。被害ゼロ。張り合いないくらいヒルはいなかった。もう汗だくで、ここまでにペット一本飲んでしまった。この先少し節約しよう。三角点はつまらない場所なので漂石にタッチしてすぐおいとま。

 ヤマボウシが花盛り。西へ下っていくと樹林の平坦地に出る。涼やかな風が吹き渡り、汗で濡れた体に心地よい。気温は25度くらいで天然のエアコンである。家では気が乗らなかったが、やはり来て良かったと思う。坂を登ると交差点に出て、ここが中峰ということになる。木の看板は風化してよく分らない。さて私は北峰と南峰が未踏なので、これを踏むことも今日の目的の一つである。もうけっこう疲れたので帰りに寄ろうかと思ったが、考えてみれば帰路の方がもっと気力がなくなっているだろう。面倒だがやはり先に片付けよう。

    アカモノ? 違ったらバカモノ               銚子ヶ口三角点                 ヤマボウシ満開

 コンパスを定めて北峰への尾根に入る。杭もあり、踏み跡もある。ずっと辿れば黒尾山へと向かう長大な尾根である。気力が回復すればこれも面白いだろう。しばらく歩くと右手にピーク。これが北峰だろうか? ヤブだらけの小さなピークであるが地図を見ると地形が違う。その先の細長いピークが本当の北峰だった。ここは崖淵に出ると西側の展望が素晴らしい。永源寺ダムと湖東の集落、カクレグラ、綿向山、タイジョウなど。満足して元へ戻る。

 中峰から今度は南峰へ向かう。ヤブっぽい不明瞭な踏み跡を辿っていくとハゲの先端に出た。ここも眺望絶佳であるが、今ひとつガスが取りきれず、イブネがよく見えない。資料によってはここから北東の1060mが南峰と書いてある。どちらも北谷尻谷から尾根を登ってくれば辿り着く場所である。どちらが本当なのか分らないが両方潰しておけば問題ないだろう。面倒だが行ってみると、こちらはどうしようもないヤブピークだった。さっさと退散する。地図上では短い距離だが、ブランクと暑さで南北の往復でけっこう疲れた。

 中峰へ戻り、正規の縦走路へ入る。小さなアップダウンを繰り返して喘ぎながら最後の登り。ようやく西峰ピークに立つ。これで東西南北中&三角点と銚子ヶ口フルコースをこなした。もう相当空腹だが、昼食は水舟の池を済ませてからにしよう。そうしないと池からの登り返しがつらい。西峰から下りた鞍部から植林の斜面を急降下する。帰りが思いやられる。久々の水舟の池は風もなく静まり返り、鏡面のように周囲の木々を映し出していた。水面に張り出した枝にはモリアオガエルの卵塊がたくさんぶら下がっている。動物たちのオアシスの周囲をゆっくり歩く。水面に浮かんでいる水草はヒルムシロだろうか。

      北峰から永源寺ダム               水舟の池 モリアオガエル              水面は鏡のよう

 急斜面を何度も立ち止まりながら登り返す。疲れているのでジグザグに行かないと登れない。もう少し頑張れば昼飯だと鞭を入れる。ようやく稜線に出、西峰で風景を眺めながら昼とする。曇っていて日光に炙られないのはいいが、風が全くないのが堪える。シャツが汗で貼りついて気持ち悪い。シャワー浴びたいなあ。東北の避難所の人々が思いやられる。おにぎりをお茶で流し込んだあと、シートの上で昼寝する。しばらくすると晴れてきたので急いで退散。

 あとは来た道を戻るだけ。東峰まで戻ると、しつこかったガスも晴れつつあった。イブネ山上台地の木々も確認できる。ハライド、釈迦ヶ岳、北に御池岳も姿を現した。喉が渇いて最後の水を飲んでしまう。もう下るだけだからいいだろう。モノレール急降下道では大腿筋が悲鳴を上げた。ほんとに踏ん張りが利かなくなった。衰えだなあ。レールが手すりになるのは助かる。モノレールは最近全然使われていない感じで錆びている。グリースが全く付いていないので、持っても手が汚れなくていい。車にたどり着いて左手の小谷へ下り、顔を洗って生き返った。タオルを冷水に浸して体も拭く。久々に大汗かいて、体には良い方向に作用するだろう。

     西峰から本峰と釈迦ヶ岳               イブネと雨乞岳                    枝に休むアキアカネ