鎌ヶ岳馬の背尾根    04.04.11

 きょうの日曜はまずまずの天気で有難し。多少霞がかかっているのは春のことゆえ致し方ない。朝早く出てまずは駐車場の調査。さすがに朝6時台の温泉街は閑散としている。しかし湯ノ山の桜は今が盛りで、華やかな雰囲気を醸し出している。蔵之助ゆかりの赤い大石橋に桜がよく似合う。

 三岳寺の境内も花盛り。派手な幟が目を引く。蕎麦うち道場など、湯ノ山も客足減少の歯止めに努力しているようだが、「恋結びの街」などという取って付けたようなコピーはいただけない。境内にはカップルの名を書いた札があちこちに立っている。このあほらしさは噴飯ものだ。はるか昔、北谷山中にあった三岳寺は国家鎮護の道場だったはずだ。おっさんのひがみと言えばそれまでだが。

 

 観音石仏像に見守られながら、つづら折れの坂道を登っていく。参道上部には紫蘇色の葉がべったり。これは花がないのでイワカガミなのだろう。やがてぽつぽつとイワウチワが現れる。初めから写真を撮っていたのではまったく進まない。でも撮る。馬の背不動あたりにたくさんある。急坂の途中でアカヤシオのピンクが目に飛び込んだ。かなり早いのではないだろうか。ここからまたイワウチワの群落で、花につまづいて転びそうなほどある。もういらん。アカヤシオの写真を撮りながら、ほぼ水平になった尾根を歩く。背後の御在所岳を入れて撮りたいのだが、どうもヤブ越しになって今ひとつだ。

 湯の峰手前に差し掛かったところで、今日始めて前方に人影を発見した。まだ8時半にもならないのに下山してくるとは怪しいやつだ。顔の見える距離でお互い立ち止まって対峙する。おや、どうも初対面ではない気がする。脳の中央演算装置をフル稼働して記憶をたぐる。相手も同じ作業をしているようだが新旧CPUの性能差はいかんともし難く、先に「○○さん?」と言われてしまった。怪しいやつは山の写真家、水谷のりやさんだった。そこで10分ばかり立ち話をする。のりやさんはマンネリ打破のためにモデルを入れた写真を撮りたいそうだ。モデル談義については、さし障りがあるのでオフレコ非公開。

 湯の峰の向こうにアカヤシオと御在所岳を撮れる場所があったそうだ。だんだん青空になってきたので、のりやさんももう一度戻るというので一緒に行く。ピークを越して下ったところにいい場所があった。私はお手軽デジカメだが、のりやさんは三脚を据えて645の大きなカメラをセットする。
 ミニ撮影会の後、下山する氏と別れる。8時半の男と言えば巨人の宮田投手だった(古すぎてすいません)が、今後のりやさんを早朝下山に敬意を込めて「8時半の男」と呼ぼう。

 長々しい馬の背は同じような景色が続き、傾斜もゆるいので休憩するのを忘れる。急ぐ旅ではないので一度腰をおろしてお茶にする。白いコブシも花盛りでアカヤシオに負けず美しいが、みな遠い場所にあるので写真にならない。バイカオウレンがやたらに咲いている。人間というものは沢山あるものに有り難味を感じないが、よく見ればなかなか可憐な花だ。ショウジョウバカマも同じこと。

 犬星の滝へ降りる分岐を過ぎると急な登りになる。右にガレのあるところから鎌ヶ岳が朴訥な姿を見せる。まだ岩の鎧がが見えないからだ。やがて奇怪な白ハゲが遠望できるようになり、鎌ヶ岳、御在所岳の大展望が広がるとキララ道合流は近い。以前この合流辺りから神島や答志島を見たが今日は靄の中。白ハゲ手前に日を受けてハルリンドウが咲いていた。岳峠への登りで燃料が切れてきた。仕舞っていたストックを出してよろよろと進む。鎌尾根分岐に岳峠の表示があるが、本当の岳峠は長石谷降り口だと思うがどうだろう。ササに突入すると鎌ヶ岳の荒々しい姿が迫る。そのまま山頂へ登る気力がなかったので岳峠でちょっと休憩。山頂には約20人の先客がいた。写真だけ撮って2分で退却。ここで食事する気にはなれない。

 石のゴロゴロする長石谷へ降りると、右の斜面に雪渓状の残雪。暑かったので白馬大雪渓だとばかりに突入。最後の雪の感触を楽しみながら涼む。コツコツと下っていけばやがて水が現れる。いい加減下りに飽きたところで大滝出合に着く。手と顔を洗い、一息入れて昼食。今日の大滝は水量に乏しく迫力がない。でもドライカレーはおいしい。滝の水でお茶をいれ50分ほどここで休む。

 ちんたらと写真を撮りながら降りる。尾根で見た花は大体ここにもあるが、特にバイカオウレンが多い。後方からすごい勢いで歩いてくる人があると思ったら、写真を忘れて偽岳峠へ戻ったときに会った女性だった。立ち居振舞いや発散する雰囲気で、山を歩き慣れた人は分かる。間違いなくヤマチュウだ。話していたら「ハリマオさん?」と言われてギョッ! 「もしかしたらそうかもしれないと思ったけど、頭にGPSのアンテナを付けていないから・・・」とおっしゃる。うーむ、妙なことまでご存知だ。さすがに恥ずかしいので、最近は帽子に付けずザックに付けている。現場でHPの読者に会うのは嬉しいことだ。どうもはっきり言って鈴鹿では女性陣のほうが元気がいい。

 長石谷は昔何度か登ったが、下るのは初めてのような気がする。堰堤手前の交錯した分岐でウロウロと迷う。どうせ同じところに出るのだが。車に戻ってから、バス停から歩く人を想定して杉屋からコースをたどってみる。大石公園にしてもいつも車でサッと通過するが、歩いてみると風情があるものである。