仙ヶ岳南尾根 03.11.02
同行者 RINさん & TOHRUさん とっちゃん
石水渓に近付いてくると鈴鹿南部の独特の雰囲気を感じる。その雰囲気は眼前に立ちはだかる鬼ヶ牙という、恐ろしい名の山が象徴している。痩せて険しい地形が発散する空気だ。そこにまた第二名神という新しい風景が加わった。目の眩むような中空に直線的なコンクリートの橋が伸びていく。まるで巨大なオブジェのようだ。これが山と調和しているかと問われれば、さにあらず。ただし時間がたてば御在所のロープウェイのように風景の一部になっていくのだろう。
3年ぶりだが石谷川沿いの林道はずいぶん荒れた。大堰堤駐車場にはとっちゃんが先着。何かの手違いが生じて定刻にTOHRU夫妻に会えず。携帯は感度が悪く、断片的な情報で混乱。取材写真は午前中が勝負なので先に出発させてもらう。
この先、軽自動車なら通行可能である。事実5年前にジムニーで終点まで行ったことがある。しかし無残に谷底に転落した青い車を目にしてからは、もうごめんである。歩けば30分足らず、ウォーミングアップにちょうどいいだろう。営林署の廃屋からイタハシ谷に入る。潤いの無いガレ谷であるが、クマシデの林になるあたりはいい雰囲気である。例によって右ヒザに痛みがくるころ、気力を萎えさせるような急傾斜になる。よろよろとジグザグを切っているうちに鞍部が見えてきた。歩いていれば必ず着くのが山である。
不動明王に挨拶に行く。傾斜を登って頭を上げると、岩の上には目を射るような真紅の葉。たぶんベニドウダンだろう。岩の上に登って間近に見れば茶の混じった赤である。見上げた時は陽光に透けて真紅になっていたのだろう。三体の地蔵も前掛けの色がすっかり色褪せてみすぼらしくなっていた。3年前には不動明王とお揃いの鮮やかなイチゴ模様の前掛けをお召しになって、嬉しそうに見えたのを思い出す。岩の上からの大展望には紅葉のおまけが付く。随分贅沢なロケーションに写真を撮ったり、ぼんやり眺めたりで、かなり道草を食う。パラパラと通り雨があった。
再び鞍部へもどり、いきなりの崖を攀じ登る。一般路であるから殆どの方が南尾根はトレースされたと思うが、仙ヶ岳への登路としては絶対に外せない。それどころか展望の尾根としては鈴鹿でも最上級である。ピークは数え方にもよるが10個ほどある。殆どののピークが花崗岩の展望台を持ち開放感にあふれている。今回はそこに紅葉の特典付きなので、速度が鈍らざるを得ない。しかし天気はなんと表現すればいいのだろう。曇りとしてみれば上々の部類であるが、晴れとすれば最悪の晴れである。臼杵から四方草あたりが墨絵のようになっている。コントラストが狭いデジカメには厳しい天気で、家に帰ってパソコンにつなぐとガックリするだろう。物覚えの悪い私でも、度重なる学習効果で分かっている。
野登りのパラボラとの間に岩のピークが見える。西尾本にあるところの「タカノス(・786)」で、今日はそこも立ち寄ろうと思っていた。思ったのは頭だけで足は全然言うことを聞かず、泣く泣くあきらめる。撮影のたびに立ち止まるので何とか歩ける状態である。来週も山なので無理は禁物。
奥村師の地図で言うところのP6とP3は特に素晴らしいピークで、雲間の光を待つうちに、すっかり時間を食ってしまう。P3でパノラマ写真を撮り、P2・P1を見ながら徐々に仙ノ石に近付く気分は最高である。誰かが仙ノ石で手を振っている。もしかして・・・と思うが分からない。仙ノ石に到着するも、知った人はいないなと思った瞬間、岩陰から久しぶりのTOHRUさんの笑顔がひょっこり。続いてRINちゃんにも拝謁。石谷川から登った由。先発しながら道草を食って、違うコースで追い越されてしまった。
無事に会えて目出たしということで、お昼の場所を探しに進むと、前方から息を荒げた大男がやってきた。見まごう事も無い隊長である。勘違いで一度小岐須に行っていたRINさん達から隊長に会ったと聞いていたが、宮指路経由なので昼には会えまいと思っていた。我々の道草のせいで5人揃ってにぎやかな昼食となった。寂しがりのとっちゃんは特に嬉しかろう。
長々と昼食をとった後、下山路の違う隊長と別れて4人で本峰へ向かう。空模様は悪いほうに向かっている。予報は当てにならない。雨具は要らないが山頂で小雨。鎌ヶ岳は雲が掛かっている。雲間から一条の光が差して山肌の一部が輝くようなときがあるが、今日はそうならなかった。薄いベールが掛かったままで、直射日光による黄金の輝きは望むべくも無い。あきらめて下山。
白谷はあまりいい印象は無かったが、今日はシロモジやコシアブラなどの黄色いトンネルで迎えてくれた。谷の中ほどで休憩して、とりとめも無い話をしているとすぐに時間が経っていった。昔釣りでこの谷を遡行したことなど思い出しながら、谷の右岸や左岸の巻き道を降っていく。4時ごろに廃屋に到着。