八風中峠から赤坂谷 01.07.08
天気予報は面目丸つぶれで空梅雨が続き、7月は体力温存月間にしようと思っていたが、この天気に家にいる訳には行かない。何のかんの言って、やはり山の空気を吸わずにいられない体質だからしょうがない。
八風キャンプ場から上はひどい凸凹で車両通行不可だったが、昨年の堰堤工事できれいになった。しかしまた工事が終ってクロカンしか通れない状態である。林道終点に駐車して8:20出発。しばらく歩くと真新しい堰堤ができていた。国も自治体も財政赤字になるのは当然である。意味の無い自然破壊に税金を湯水のように使っている。このままだと山の上まで堰堤が出来てしまいそうである。
歴史ある八風街道をゆっくり登る。道にパチンコの玉くらいの実がバラバラと落ちている。シロモジの実のようである。栗木谷を渡ると登りが急になって程無く中峠道の分岐。800m手前から樅、ブナ、ミズナラ等の高木が生え、雰囲気が良い所である。地形をうまく利用して歩き易く、また明らかに人手によるものと見られる石畳もある。中峠もまた中世より通行路として使われていた名残である。最後の水場で水を掬って飲む。やはり石灰岩の山より花崗岩の山の水のほうがうまい気がする。田光川水系で育ったのでなじんでいるのだろうか。
9:15中峠着。ここから西へ仙香谷に降りるのは7、8年ぶりだ。神崎川から仙香谷を登り中峠を経て伊勢へ抜けるのは西行も通った歴史の道だが、2000年の昭文社エアリアマップから消えてしまった。猛烈な笹を漕いで西へ降りていくとすぐに樹林の涼しい道となる。すでに仙香谷(上部はカシラコ谷とも言う)の最初の一滴は生まれ、やがてさらさらと音がしてくる。滋賀県側の傾斜は緩やかで長い。800m位の所に樅の木と窯跡のある素晴らしい台地がある。ここも老後の別荘候補地だな。
10:10明るい河原で休憩。陽射しがまぶしい。この辺り傾斜が無いので川も平凡だ。もう近江八風谷の合流点は過ぎている。以前来たときはこの辺りに小屋があったが、もう倒壊したのだろうか。昔伊勢側の人たちが木挽きで働いていた場所だ。ここから南へ赤坂谷に抜ける植林道の近道があるのだが、行ってしまうと核心部を通らないので意味が無い。出会いまでひたすら下る。
道はあったり無かったりで、途中から川の中を歩く。花崗岩がゴロゴロするなかなか長い谷である。11:00やっと赤坂谷出合に到着。懐かしい。ここからまた東へ折り返して登っていくのだ。なんと非効率なこと。まあ、まずは木陰でタバコでも一服。ほんまに涼しい。誰もいない。
赤坂谷へ入って釣り竿を取り出す。餌を手に入れる暇がなかったので今日はテンカラだ。テンカラとは日本古来の毛鉤釣法の事。向かい風で毛鉤がうまく飛ばない。でも風が止むと面白いようにポイントに打ち込める。しかし反応が無い。出合から下流で岩魚を釣ったことがあるのでいないはずは無いと思うが・・・。三つ目のポイントでガクンと重みが竿に乗った。飛び上がってきたのは何とアブラハヤ。くそー、外道や。
そのあと背後の木の枝を釣ること3回。滝を登るのに竿が邪魔になるしイヤになってきて竿をたたんだ。人間煩悩を去れば身軽で気軽。陽射しも強くなってきたし、そろそろ飛び込むかな。不覚にもぼんやりしていて綿のトランクスを履いてきた事に気付く。このまま飛び込めば絶対乾かないので、どうせ誰も来ないだろうと下半身裸で深い淵に飛び込んだ。
最高に気持ちいい。冷たくは無くちょうどいい加減だ。でも大事な所を岩魚に喰い付かれないか不安だ。デジカメのセルフタイマーで写真を撮ってみた。少し泳いで上がり、ジャージのズボンだけ履く。以後ノーパンで歩く。沢登りではノーパンでとおす人も多い。
12:40頃遅い昼食の準備にお湯を沸かしていたら、ソロの男性が下ってきた。あぶねー、もう少し淵に漬かっていたらやばい所だった。お互い物珍しく話していたら、何とHP仲間の滋賀のSHIGEKI氏である事が判明。「黒田さんのHP昨夜見ていたところですよ」・・・とお互いびっくり。氏も少し上流で裸で泳いでいたとの事。神崎川沿いの林道が不気味に伸びていく事に二人とも憤慨したりして長話をした。
下降途中の氏と別れて私は上流へ。先はまだ長い。この上はナメ滝の連続で最高に気分がいい。白い花崗岩のナメと清流、青空と緑のコントラスト。底抜けに開放的な沢だ。鈴鹿の楽園だな。更に上流に進むと傾斜が緩くなり凡庸な谷となる。それでもまだ所々背を越す滝や淵がある。シャツが乾いてしまったので暑くなり、もう一度淵に潜る。目を開いても岩魚はいない。アブラハヤばかりだ。
川幅が狭くなり樹林が覆ってきた。カシラコ谷へ抜ける植林道が横切る所まで来た。その先の造林公社の小屋の手前で左俣に入る。釣れない釣りで時間を食ったので本流は止めて、南峠に出るつもり。小屋は布団がまだ吊ってあるが、床は抜けもうだいぶ以前から使われていない。
南峠への道は荒れ果て、無いも同然。薮沢の中を苦労して歩く。意外と長い。前方がやっと明るくなり湿地帯に出た。短い笹の中をひと登りしてやっと県境縦走路に出た。名ばかりの南峠だ。切れ落ちた眼下を見ると、鹿が3匹連れ立っている。美しい。上から鹿を見下ろすのは初めてだ。艶々した茶色と白のグラデーションを描く毛並み。惚れ惚れする。奈良公園の鹿と全然違うわ。あわててカメラを取り出したが、もたついているうちにピーッと声をあげて消えてしまった。
よく晴れていて景色がいい。段木の尾根が間近だ。西尾氏の本に段木の由来は不明と書いてあるが、これは割木(薪)のことである。田光の人たちが薪を採りに来ていた山だろう。車にたどり着いたのは5時だった。今日は大して疲れなかった。