銚子谷から銚子岳 97.11.30
同行者 男3 女4
初めてのガイド山行。この谷は以前釣りで奥まで入ったが、そのときはけっこう肝を冷やした。雑誌で銚子谷のガイドを見つけたので、プロはどのようにして遡行するのか勉強しようと応募してみた。
指定の時間15分前に林道終点についた。明日から12月だという時期に、金を払ってまで川に入ろうというバカがいるのか心配したがけっこう集まっていた。もちろん知らない人ばかりである。自己紹介によると遠方の人ばかりである。先生の常連客が多かったが沢が初めてという人もいた。
ハーネスをザックに入れヘルメットをかぶり、渓流シューズをはいてさあ出発。川は前日の雨で増水している。銚子谷出合に着く前に早くも名古屋と一ノ宮の人が深みで転倒してずぶ濡れになった。今日は寒中水泳大会である。転倒しなくても股まで水に濡れる。タイツとネオプレーンのスパッツをつけているのでそんなに冷たくない。
最初の小滝で巻き道もあったが練習ということで先生がザイルを出し全員がつながった。一本のロープにいくつかエイトノットで輪を作り、各自がハーネスにカラビナで連結するわけである。こうして山の中を歩いている様子はまるで囚人の集団脱走である。ここは難なく通過して、危険なゴルジュ帯に入る。
まず先生が慎重に確保支点を作りながらへつっていく。OKのサインで我々がへつりにかかる。数メーター下は激流が岩をかんでいる。岩盤は濡れていてよくすべり、なかなかのスリルである。ビレイのところでカラビナを掛け替えるのが面倒である。以前丸腰で渡ったときのほうが楽だったが、保険なので仕方が無い。それに前後の人のペースにも気を配らないと危険である。 私の前後はおばさんで、頼むから落ちないでくれと祈る。ひとり滑落したら前後の人も宙吊りになってしまう。
大滝ではさすがに直登はならず、右岸を高巻く。これも非常に危ない足場だった。続く二段の滝は、一段目はホールドがあり簡単だったが二段目はツルツル。先生が慎重に上りきった。見事なものである。ザイルが邪魔な上に水しぶきがすごく難儀する。固定ロープに縋らせてもらってよじ登る。上で一服していると後ろから叫び声。振り返るとラストの女の子が滑落して宙ぶらりんになってもがいている。完全に水流の中で口をパクパクしている。みなで引きずり上げる。本人は蒼白になっているが周囲は喝采して笑っている。「鯉の滝登りみたいやったなあ」しこたま水を飲んだそうである。
それにしても皆さん、休憩のときによく食べる。後で分かったのだがこの日は行動食オンリーだったのである。私はお昼を食べ損ねた。殆どの人が濡れ鼠になったが、私は釣り師の面目にかけて転倒しなかった。休憩のとき私の後ろに座っていたオバサン達が 「あの人まだこけてないから川で背中押したろか」などと不穏なことを相談している。 こらこら、おばさん聞こえてるで!
難所を過ぎて、登山靴に履き替えてツメにかかる。ガレの急登が続きようやく標高900mの登山道に飛び出した。午後1時である。ここから銚子岳の分岐までまた100mの登りで少々疲れた。銚子岳はちらりと寄ってすぐ戻る。御池方面がちょっと見えるだけでつまらないところである。
治田峠へ転がり降りて、登山道を駆け下りる。もうそれぞれのペースである。帰りはネオプレーンのソックスに替えるのが面倒だったので、素足に渓流シューズで渡渉したらめちゃ冷たかった。銚子谷は左側に支流がいくつかあるので、またいつかやってみたい。竜ヶ岳の県境三叉路付近に出るのだろう。
写真提供:やまぼうしさん (のちに知ったがメンバーの一人はやまぼうしさんだった)