中ノ谷から鎌尾根 03.09.07
同行者 とっちゃん
普段は山行後二日ほどでアップするのだが、禁煙の後遺症か、パソコンの前に座っても全く集中できない。メールや掲示板で遊んで終わり。また明日と思っているうちに日が経ち、今回はパスと決め込んでいたら約二名の方からお叱りをいただいた。こういう有難いお方が居られるうちは老骨?に鞭打ってキーボードを叩くことにしよう。
当初予定は4名だったが、たまさんは前穂帰りでレンチャンがきかず、通(つう)さんは突発的家庭内事情で不参加となった。朝の宮妻峡は登山者がちらほら。鎌ヶ岳カズラ谷登山道のひとつ上流がジャリガ谷出合、その上が中ノ谷出合で橋が架かっている。挨拶代わりの軽い滝を越えると堰堤があり、その上でいきなり壁に囲まれた10m滝にぶつかる。西尾本の遡行図を見ると直登している。「えー、こんなの登るのー」と思うが、よく見ればうまい具合に狭いバンドが斜上している。ただ水流の落ち口を抜けるところは未知数だ。とにかく取り付いてみる。難しくはないが高度があるので下を見ないようにする。最後は水しぶきをかぶりながら、些細なホールドを頼って抜けきる。
適当な木があったのでセルフビレイをとり、それからとっちゃんを確保する。水流のところで立ち往生しているので、先にザックだけ吊り上げることにした。メチャ重いザックだ。こんなの背負っていたら、登れないのもむべなるかな。何が入ってるねん。西尾本に「スピーディーにやらないと濡れる」と書いてある。なるほど、とっちゃんは早くもびしょ濡れだ。
このあと石がゴロゴロして歩きにくいが、難所はまったくなく少々飽きてきた。カチカチヤマならぬカチヤマ谷出合はいつの間にか見過ごしたようだ。カンカン照りの暑い日であるが、木陰で休息しているとさすがに沢の中は涼しい。
左に涸れ谷を見送るとようやく変化が出てきた。トイ状の滝がジグザグに何段か掛かっている。二段目に1mくらいの石がきっちりはまり込んでいた。そこを抜けると徐々に両岸が険悪な様相になってくる。淵を伴なった赤く長い滑滝を登ると、前方奥に10mの狭い垂直の滝があり、もう一段上にも同じような滝がある。右も高い岸壁で滝になっている。ここらが核心部か。
どうも登れそうもないので、少し戻って右から巻くことにする。左はダメだ。西尾本も右から巻いている。ところがどうもこの右高巻きが想像より非常に悪くて泣かされた。岩が風化してボロボロのうえに、どこまで登っても安定した場所というものがまったくない。いつ滑り落ちるかわからないズルズルの急斜面を慎重にトラバースする。ときおりある生木が頼りだ。最後はエイトカンを使うほどではないが、数回ロープを木に掛けて沢身に降りた。この巻きは二度とごめんだ。滝にチャレンジしたほうがよかったかも。
次は七五三の滝。7mは取り付きの10mのミニ版。これはとっちゃんに先行してもらう。次いで5m、3mと快適に登る。こういう手ごろな滝で遊んでいるのが私にはちょうどよい。あまり怖いところは好かん。そのあとやや上空が開放的になってくる。北中ノ谷出合と思われる右からのしょぼい滝に着く。左は涸れ谷。正面本流は花崗岩の大石を何段か嵌め込んだ妙な滝だ。最初の石が大きいので簡単ではない。左には残置ハーケンがある。右は上部が圧迫されていて登りにくい。岩を押す摩擦で登りきる。とっちゃんは完全にザックがつかえているので、上から荷物をもらう。この石を上がったらあとは問題にならない。
遡行図にはこのあと平凡とあるので安心して、ここらで昼食とする。稜線で太陽に炙られるより、水流のあるうちに食事にしたほうがよい。心配した右ひざは違和感はあるものの、痛みはあまりなく一安心。
食後、北中ノ谷には入らず、本流をたどる。源流は宇賀渓・山秋谷に似た雰囲気だ。急傾斜のゴーロを登っていくと、突然10m滝(写真撮り忘れ)に行く手を阻まれてビックリ。西尾氏は遡行図に書くのを忘れたのだろうか。これは取り付きにあった10mよりはるかに困難だ。途中に残置ハーケンがあることからも分かる。両岸は切り立っていて巻けないので、しかたなく登る。ホールド、スタンスとも少なく苦労して登った。滝の釜が小さく、落ちると危ないのでセカンドを確保したい。しかし今度は手頃な立ち木もないし、岩角もない。仕方なく人間アンカーとなって肩がらみだ。ザックを荷揚げしたあと、とっちゃんは落ちることなく登り切った。なかなか見事なものだ。
稜線へ出る直前は大体どこでもザレかジャングルの急傾斜で、まったく奇特な人間しかできない仕事だ。せっかく沢で涼んだのに、また汗まみれだ。やがて人の声が聞こえてきた。狙いどおり鎌尾根衝立岩南の鞍部に出る。いつぞや西のロクロ谷から這い上がったところと同じだ。西からの涼風が心地よい。
水沢峠から下山してもよいが、鎌ヶ岳の写真を撮りたいので北へ向かう。尾根にはコモノギクが咲いていた。一見白だがよく見ると淡い紫を含んでいる。各ピークから、ガレた白い岩肌ををこちらに向けて屹立する鎌ヶ岳の雄姿が望める。空にもう一段の青が欲しいが贅沢というものだ。
岳峠からカズラ谷登山道で帰った・・・と、本来これでおしまいのだが、休憩地点で地図を眺めているうちにまた悪い癖が出て、道のない尾根を下ることにした。820m地点から南方に伸びて水晶山?に至る尾根である。これは当たった。けっこう歩きやすくてテープまであった。ところが例によって途中から怪しくなり、とうとう外してジャリガ谷に降りてしまった。お粗末なことにまた修行不足を露呈してしまったのである。
あとで検証すれば610mピークで外すべくして外したという感じである。ここをトレースするのはよほど地図を注意していなければならない。もう老眼(認めたくないが)で二万五千図の細かいところが苦しい。大きなルーペを買おうかな。