竜ヶ岳蛇谷 01.05.20
同行者 垣内、中川、山本、山野内
陽気が良くなってそろそろ水が恋しい。というわけで今シーズン初の沢登り。うってつけの暑い日となった。宇賀渓の駐車場で支度をし、荷物の振り分け。45mザイル一本をザックに放り込むと結構重い。
タニウツギ咲く林道をゆっくり歩く。ホタガ谷登山道と分かれ、沢沿いの山道を進む。陰とは言え汗が噴き出してくる。下部はすっ飛ばして五階滝から取り付く。しばらく雨がない割に水量は豊富だ。山の保水力に敬意を表する。ここは左から巻くが、照葉樹の落ち葉でけっこう滑るので要注意。
水中に入ると気持ちいい。右に大きく曲がるとゴルジュになって、喉に大石が進路をふさいでいた。右の狭い隙間に体を押し込んでよじ登る。最後が少しうるさい。次に2条右チョックストーン10m以上ある滝を直登するのにザイルを出す。難しくはないが、落ちると事故になるからだ。
このあと滝は無数にあったが、パーティー山行ではメモをとっている暇がないので詳述する事は不可能。登りながら遡行図を書く人はすごいと思う。ある滝の釜でY会長が泳ぐ。私はまだ全身つかる気にはなれない。巻けない滝では釜に腰上まで入るが、水圧と冷たさで気持ちいいやら、痛いやら。
微妙なへつりで先に渡ってカメラを構えていると、Y女史がドボンして温泉状態となる。期待を裏切らない人だ。
ある大滝でトラバース訓練。大高巻きは可能だが、わざわざ滝の落ち口に向かって絶壁の際を渡る。私が確保しながらY会長が支点を立ち木や木の根に作りながら前進。渡り切ったところで、固定ロープを張る。中間3名がシュリンゲを通して渡る間、私は暇なのでカメラを構えて狙うが、谷は暗いのでうまく撮れなかった。最後にザイルを解いて自分のハーネスにつけ、支点を回収しながらトラバース。先頭とラストは落ちると落下距離が大きいのでここは慎重に行く。
いったん厳しい滝はなくなるが、小滝やナメが連続する。新緑の間から木漏れ日が水面に落ち、きらきら輝く中をフェルト底のフリクションで軽快に登っていく。気持ちいいなあ。飛沫を浴びる所もあって何より涼しい。尾根で直射日光を浴びているよりずっといい。このあとの大滝は巻いていくが、やはり落ち葉がうるさい。
800m程の二俣を左に取ると傾斜が急になってきた。しかし岩石が累積してホールドは豊富だ。水流は細くなって寂しいが、苔むす岩から糸を引く水が美しい。まだ滝が現れるが、高度感があってもゴツゴツしていて登りやすい。ハウチワカエデの若葉が無数に落ちていた。お猿さんの仕業だろう。やがて900mを越えると狭くなって薮になってきた。シロヤシオ登場。
ここで沢を離れて左の笹薮に突入。疲れた体に鞭打って笹の急斜面を漕ぐ。笹の海に点々とシロヤシオ。下から見上げるクラの山腹にも素晴らしいシロヤシオが羊の放牧のように群れている。空は青い。この素晴らしい風景をなんと表現したらいいのか。紀貫之は歌に詠めるだろうか。ホタガ谷登山道を歩いている人たちも見える。この角度の風景は我々だけのものだ。でも薮漕ぎはつらい。乾燥しているので笹から埃が出て全身ごみだらけだ。
いいかげん薮に飽きた頃、ヨコ谷登山道に飛び出す。登山道の有り難味が身にしみる。程なく山頂着。満員御礼の大盛況だ。重たいザックとシュリンゲの束を放り出して、渓流シューズを脱ぐ。ふやけた足を外気にさらすと生き返った。昼飯じゃ。
滝の釜で水没したYさんにミニトマトを頂く。おいしいわ。私は山に果物や野菜を持ってきた事が無い。充分休んで乾いた靴下とスニーカーに履き替えてホタガ谷を下って帰る。楽ちんやなあ。シロヤシオはげっぷが出る程咲いていた。