センコウ谷・ツメカリ谷周遊    02.08.11

同行者  とっちゃん

 本日は甲賀の姫君とっちゃんのお守役を仰せつかり、リクエストのセンコウ谷へ入った。何日も雨が降らず水量が心配されたが、平水にはやや及ばないながらも渇水というほどでもなかった。山の保水力は偉大なり。

 朝の光差すセンコー谷下降階段に車を停め、本流に降り立ったのは9時くらいだったろうか。岸や川の中をのんびり下流へ歩く。ウォーミングアップにちょうど良い。Qちゃんとともに枚方の姫の守役のときは大雨のあとの激流で本流渡渉に命がけだったことを思い出す。

 センコウ谷出合に着いて、いよいよ沢登り開始。最初の淵はへつれるが、体慣らしに水に浸かる。さすがに最初だけは冷たい。じわーっと胸まで浸かってから泳いだ。これでもう怖いもの無しである。大淵の連続であるが、全部は泳がない。体力を消耗するからである。とっちゃんは両腕に奇妙なものを付けている。幼児の水泳補助具(ヘルパー)だそうな。簡単に言えば腕に通す浮き輪である。これがないと足の立たない所では不安だそうである。そらもう何でも使うてください。心の平静が安全につながりますから。赤いヘルメットに両の腕輪、ネオプレーンのベストに渓流タイツのお姿は秘密戦隊モモレンジャーのように勇ましいのであった。

 浮き輪をつけた御大途中で大パーティーに追いついたと思ったら、新ハイの岩野氏御一行様であった。今日は例会ではないとのことだが、メンバーはおなじみの顔ぶれである。岩野御大は腰に子供用の浮き輪をすっぽり通して歩いておられる。この珍妙にして優雅なお姿をカメラを出して一枚。一緒に休憩していたら、また果物など回ってきて有難く頂く。休憩が長そうなのでお先に出発。

 核心部残置ハーケンのある二段の滝一段目は流心から滝のサラシ場へ泳ぎ着き、神の作り給うた「天国への階段」を登って難なく突破。二段目の落ち口で短いお助けヒモを使った以外は登攀具は用無しだった。去年は激流逆巻く滝壷でとても泳げたものではなく、左の危うい登りを強いられたのだった。この谷が易しいか難しいかは水量によるし、コース取りにもよる。巻く、泳ぐ、直登する、へつる、同じ場所でも選択肢はいくらもある。

 赤坂谷の大ナメ変化は無くなったが両岸の二次林が美しい谷をひたすら歩いていくと赤坂谷出合に着いた。大きな花崗岩がゴロゴロする赤坂谷に入る。いつぞやSHIGEKIさんとばったり会ったプールを通過。少し登った平らな大石の上で大休止していると新ハイグループが追いついてきた。大ナメの辺りを一緒に歩く。最後の広い淵で皆さんは昼食タイムとなった。御飯の前に一泳ぎしたりビールを開けたりで皆さん楽しそうである。家に居たって暑いばかりで、安上がりな沢登りは夏にもってこいのレジャーである。

 我々はもう少し登る事にする。爽快なナメだがもう少し水量が欲しかった。滝下の開けた場所でランチタイム。食事の間に現在位置を測定しておく。私はお握り二個だけの質素なものだが、姫のザックからサラダやらハムやら「緑のタヌキ」やら出てくるのですっかりご馳走になり満腹になった。食後のコーヒーを飲んでいると、また新ハイ御一行様登場。もう少し登ってから右岸の巻き道を帰るとのこと。我々は巻き道でヒルに食われるのもかなわんし、姫もまだ電池切れをおこしていないようなので、尾根越えでツメカリ谷へ出て下降することにする。もっと上部からノゾキ峠が通じているが、もう核心は終っているので早めに切り上げる。

 尾根上の松 遠景は釈迦ヶ岳の一部710m位のところから南へ花崗岩の小谷を登った。尾根が絞られて770m程の鞍部を省エネで乗越す算段である。ところがもう稜線に出るころだと思っても着かない。ヤブは濃くなってくるし、箸より重いものを持った事のない?姫には苦労をかけてしまった。滑り台のような砂ザレを登りきってようやく稜線に出る。方向がやや西にずれて800mのピークに登ってしまったようである。しかし眺めはいい。釈迦ヶ岳の左方向にある植林のピークに松が一本生えているのが奇妙な風景だ。見事な松はすぐ東にもある。

 何処から下降するか迷った末、当初の予定地へ向かって稜線通しに伐採された尾根を東に下がり、松のさらに下の鞍部へ着く。しかし南へ降りる道はない。仕方ないのでまたヤブに突入してホオノキ谷の支流と思われる小谷を下降した。チョロチョロ水の谷を暫らく降りていくと紫のヒモがあった。ホオノキ谷だ。ここからは比較的歩きやすい踏み跡がある。やっとの事で開けて明るいツメカリ谷へ出た。暫らく陸に上がっていて暑かったのでまた淵に浸かって体を冷やしてから休憩。

 

典型的なゴーロの歩きにくい谷を下っていく。やがて5m程のスダレ状の滝上で行き詰まる。ここは底石の状態を確認してから、姫に飛び込んでいただく事にする。ロープで降ろすより手っ取り早い。私は上からカメラを構えながら「こわ〜い!」と逡巡する姫をホレホレと追い立てる。やがて観念したのか身投げするように飛び込んだ姫は必死の形相で岸に泳ぎ着いた。

ドキドキもうやけくそや〜ドボーン

 やがて雷鳴が轟き雨が降ってきた。別にずぶ濡れなのだから構わないが、増水が怖いので早めに通過するためゴルジュの中の滝をもう三つばかり飛び込んでいただいた。程なく神崎川本流に出る。まだ雨は降っている。ここからは少し遡って林道最終点にあがる・右岸の登山道を行く・川どおしに朝の入渓点まで行くの三つの選択肢が有るが、姫の一声で川下りに決する。

 神崎川の天然プールツメカリ出合から取水口までは20〜30mの深くて長い淵やトロの連続である。姫は腕の浮き輪だけでは飽き足らず、今度は子供用の浮き輪までザックから出してきた。万全の体制である。川下りは浮かんでいれば流されて楽なように思えるが、今日は水勢がないのでやはり漕がなきゃ進まない。ラッコをやったり、泳いだり、浮き輪をロープで引っ張ったりして遊びながら下る。いつの間にやら雨は止み、また青空が戻ってきた。

 途中で河原に大勢の人がいて、泳いでいる我々に何か叫んでいる。スイカが余っているので食べていきませんかということらしい。有難くご相伴に預かりながら話していると、大阪から来た美容師グループだということ。どおりで珍しくとびきり若い人ばっかりだ。

 

 

泳ぐモモレンジャーさらに下って大石の上で待っていると、姫を追い抜いてきたライフジャケットにジャージ姿の中年男性が淵に飛び込んで、私の先の大石の上に上がった。近付くと「なんや、ハリマオさんかいな」のお声。あらまあ、たろぼうさんやんか。また日帰り粗食ツアーでお会いしましたね。谷尻帰りとのこと。こんなに近付くまでお互い気が付かなかった。これまた顔見知りのとっちゃん姫にも追い越しながら気が付かなかったようである。そりゃ無理もないわねえ、今日はモモレンジャーやから。休憩してから取水口までご一緒する。

 林道に這い上がる階段をゼーゼー言いながら登る。車に着いて渓流シューズやスパッツを外すとほっとする。さらに乾いた服に着替えて車のエアコンを浴びると極楽だ。今日は泳ぎまくって命も洗濯できた。姫も満足のご様子で一安心。