草木原谷からキララ峰 06.11.26
キララ峰は鎌ヶ岳の前衛として東へ大きく張り出している。自宅からの視界占有面積は大きく、入道ヶ岳をすっかり隠している。東側の人間としては身近な山だ。しかし標高の低さ、林道、植林などから、あまり食指の動く山ではない。まだ三回くらいしか登った記憶がない。
大木を探し始めて東雲さんから、そのキララ峰に大きな桑の木があるらしいと連絡があった。出典は郷土史家、佐々木一氏の「歴史小話」シリーズである。桑といえば菰野町でも昭和30年代頃まで養蚕が盛んで、いたるところに桑畑があった。養蚕が廃れた現在桑畑は姿を消したが、ときどき放置されたものが大きく成長しているのを見る。野生の桑なら大きくなっても不思議ではない。しかし当該の桑は幹周り350cm(直径111cm)という。さすがにそんな桑は見たことがない。今日は天気予報が悪いので、大桑の探索にあてることにした。
林道は標高700m近くまで伸びているので、これを利用させてもらう。上部はかなりの悪路である。まだまだ紅葉がきれいでドライブとしても楽しい。今にも降りだしそうな空模様ながら遠くまで視界があり、御在所岳も見えている。最終のヘアピンにある反射板(665m)に着いた。これは自宅からも良く見える。「歴史小話」にある三重用水のアンテナとはこれのことなのか。プレートを見ると確かに三重用水と書いてあるが、どう見ても無線中継所には見えない。「歴史小話」には無線中継所の下から右の谷を横に這い、右して、左して大桑にいたる・・・とある。恐ろしくいい加減な記述である。佐々木氏は昔炭を焼いていた人に案内してもらったとあるので、詳述することは不可能なのだろう。
近くのお寺のイチョウ大木 キララ林道の紅葉
ともかく反射板の空き地に駐車して探索することにする。GPSで測地すると2万5千図の林道は大きく西へずれていることが分かる。こういうことはよくある事だ。いつ降りだすか分からないので、初めから上下カッパを着て出発。右の谷とは草木原谷だろうと思い、適当にトラバースする。道型が何本もあるが、ヤブやイバラで、どれもすごく歩きにくい。やがて袋を被せた苗木が林立する場所を通る。ウリハダカエデやミズナラの苗木だ。やや遅めながら対岸の紅葉が素晴らしく美しい。キララにもこんないい所があったのかと思う。
背景御在所岳 背景ハライドと釈迦ヶ岳
天気の割に見通しは利くのだが、見回してもそれらしい大木の影はない。悪路のトラバースで、体重がかかる右足の外側が痛くなってきた。ヨタヨタと進んでいくうちに、とうとう草木原谷源流へたどり着いてしまった。標高は650mなのでほぼ等高線に忠実にトラバースしてきたことになる。苗木はここまでで、美しい二次林になり、大きな窯跡があった。たぶんもう桑の木があったとしても、通り越してきただろう。でもいい紅葉も見たし、どうでも良くなってきた。せっかくだから谷を詰めて、キララ峰の山頂を踏むことにする。
広い谷を本流の方へ進む。ガラガラ石の溝で、もう水はない。やがて大きなヤマザクラに会うが、根元からすぐ分岐しているので見送る。そこからすぐ先で水が落ちていた。何処からともなく染み出し、2mくらいで消滅している。こういう水は美しいので使えるが、今日は持参しているので汲まなかった。この付近からパラパラと雨が落ちてきた。想定内だが有難くない。やがて斜度が増して、登るのに骨が折れるようになってきた。やけにカナクギノキが多い谷だ。ふと左下を見ると背の高いサワグルミが林立している。下るのは損失だが、そのうちの一本が太そうなので測りに下りた。
谷の向こうには絵野高原が広がる 岩クズの浅い谷・雨が降り出してレンズに水滴が
今朝は体調が悪くて少ししか朝食を取れなかった。それでシャリバテしてきたのかすごくしんどい。いいところで窯跡があったので、第一次昼食としよう。標高750m、平坦で黄葉に囲まれ、下界の展望も良い。昼食にもってこいの場所だ。幸い雨も止んでしまった。お湯を入れるだけのハルサメワンタンスープを作る。休憩も山の楽しみの一つ、あまりセカセカ登っても仕方ない。ぼんやり下界を眺めていると、30mくらい先の枝先で何か動いた。すごくカラフルな鳥のようだ。野生でもあんなのがいるのかと思う。鳥に関しては無知無関心だが、目一杯ズームにして写真だけ撮っておいた。下はそこから鳥の部分だけ切り出したもの。これがホントの鳥ミング?
サワグルミが林立する場所 君の名は?
稜線まで遠かった。ヨタヨタと斜行しては、すぐ立ち止まる。採石状の石クズに落葉が積もって歩きにくいのだ。ようやく這い上がって左すれば三角点。登山道の快適なことよ。山頂は展望もなく、取り立てて長居する場所ではない。ただ登頂したという事実が自己満足に必要だ。ここから少し南へ下りて、小ピークを左折する。駐車地の反射板へ至る尾根だ。ここには仕事道があって歩きやすい。右に植林、左は二次林。立ち木が邪魔で展望はない。難所もなく、容易に出発地へ帰ることができた。
車の中で第二次昼食。高台なのでテレビも良く映る。まことにお気楽昼食。心配されたハンターも来ていない。食後シートにもたれて、地図と「歴史小話」を再度読む。下とか左右が東西南北で書かれていれば見当もつくが、これでは雲をつかむような話だ。しかしまだ帰るのも早いし、幸か不幸か雨も降ってこない。もう一仕事するか。
今度はもう少し下流まで下りて、右岸山腹をトラバースした。急斜面の恐ろしい地形だ。細々とある杣道を辿るが、じきに崩壊して不明になる。ヤブやザレと格闘し、やがて何の収穫もなく、朝たどった苗木の場所に着いた。ここらが潮時、今日はもうあきらめよう。トラバースで戻るのはイヤなので、岩クズの堆積した所を直登して稜線に這い上がった。不安定だがヤブがないので楽だ。ああ、疲れた。またの日に再度捜索をする価値があるのかどうか考えてしまう。まあ、今後の気分次第だろう。
* 鳥は野鳥関連サイトで調べたらアカゲラのようである。ごく普通に見られるそうな。