天狗堂・サンヤリ 03.07.27
山田リーダーと会員7名
久しぶりに新ハイ例会に参加する。鈴鹿百山45 天狗堂・サンヤリ。先週痛めた腰と右ひざがいまだ思わしくなくキャンセルしようかと思ったが、せっかく申し込んだ往復ハガキ代が無駄になるので出席する事にした。山の上でギックリ腰になってビバークの可能性も考え、ツェルトと余分の非常食も持った。そして久しぶりにストックを持っていくことにした。ああ、もう老人や。
石榑峠へ向かう途中、捕虫網を持った人が何人かいた。ええ歳をして頭の禿げたおっさんが長柄の網を振り回して虫を追っかけている。何の世界でもマニアというかオタクがいるようであるが、貴重な蝶を捕まえるのは感心したことではない。この人たちは見たり撮影したりするだけでは満足できず、どうしてもひっ捕まえないと気が済まないようである。
天狗堂は既に数年前に登っているが、御池岳の縦穴について山田明男氏に直接話を伺いたかったので応募した。サンヤリと瀬川谷はまだ行ったことがなかったので余禄である。杠葉尾のひろせ酒店には30分も早く着いてしまった。しかし皆さん暇なのか家に居たくないのか知らないが、もう勢ぞろいしていらっしゃった。名簿をもらうと大阪、和歌山、京都など遠方からの参加者に驚く。顔を知っているのは日本コバで食料を恵んでもらった大津のGさんだけだ。山田さんとは初対面であったが、なぜか私のこと(自然観察会置去り事件、テーブルランド縦穴転落事件)をご存知であった。
下山を考慮し、いったん御池林道小又谷駐車場まで行って、山田さんのワゴン車で全員登山口へ戻る。この登山口というのは地図には載っていないが、ちゃんと天狗堂登山口と現場に書いてある。いつ頃開かれたものか、今まで気付かなかった。君ヶ畑と小又谷出合の中間くらいである。
9:35、「ではゆっくり登ります」と言ってリーダーが先頭にたつ。しかし全然ゆっくりではない。9割の力を出さないと着いていけない。新ハイはハッキリ言って老人会予備軍のような年齢構成であるが、体力的に強いことは日本コバで分かった。だからこれが新ハイ流「ゆっくりペース」なのかと驚く。しかし最年少の私は意地でもバテる訳にはいかない。夏草の伸びた植林道のような急登をこなしていく。
山田さんにくっ付いていくと色々博識な薀蓄を聞けるので二番手で行く。湿った地面にたくさんのヒルが頭をもたげているのがよく見える。靴を注視して歩かねばならない。後ろの方々は汗びしょびしょでゼーゼー肩で息をしていて、標高差200mも登らないうちに休憩になった。やっぱりペースが速すぎるのだ。ゆっくり登れば休憩なんて要らない。しかしリーダーのザックからメロンが出てきて、美味しかったので文句は言わんとこ。今のところ腰もヒザも痛くない。運動して麻痺したのだろうか。120度の方角にヒキノの尾根越しに静ヶ岳が頭を出している。
Gさんは肩から機械を掛け、帽子の天辺にGPSの外部アンテナを貼り付けた珍妙なスタイルである。歩くGPSと化している。行動中、ずーっと歩いた線ををデーターとして取っているのだろうか。まさに「Gさん(線)上のアリア」だ。私も以前感度の悪さに業を煮やして外部アンテナをヘルメットに張る事を考えたが、ちょっと怪しすぎるスタイルだ。
なんとか周囲の山は見えるが、うす曇で撮影には向かない。山田リーダーからは一緒に歩きながら薀蓄やら武勇伝やら昔の鈴鹿についてたくさん話をしてもらった。10:25 835mで岩ヶ谷左岸尾根から来ている道と合流する。そして山頂直前で君ヶ畑からの一般道と合流する。10:48山頂着。大岩の上に乗って眺望を楽しむと書きたいところだが、相変わらず風景は靄が掛かって輪郭と色を失っている。今二つ冴えない。御池岳はもう近すぎてカメラからはみ出しそうである。変わった所では孫太尾根の「草木」がその盛り上がった背中を治田峠の向うに持ち上げている。
11時頃天狗堂を後にする。この先はあまりハッキリした道はない。地図を見れば尾根芯を歩くだけで難なく行けそうに見えるが、そう単純なものではない。特にシャクナゲが行く手を塞いでいて、踏み跡は斜面をトラバースしているが、結構な籔である。40分程歩いてサンヤリに到着。なるほど三角点の標石がある。しかし全く山頂の雰囲気はない。植林の尾根の途中が少し盛り上がっている程度である。南に今登ってきた天狗堂が見えている。鈴鹿ではどこが山頂やら分からない茫洋とした山が多いが、この天狗堂と鎌ヶ岳は秀麗な姿で視線を奪う。山頂が少し南北に長いのでやはり南か北から見るといっそう尖って見えて良いが、サンヤリからではちと近すぎる。北側は霊仙山と鍋尻が目立つ。その右にあるべき伊吹山は雲で隠れているようだ。
サンヤリ山頂で昼食となるが、広場がないので各自適当な場所に草を押しつぶして陣取る。私は昼にあまり食欲はなく、下山してから猛烈に腹が空くタイプである。おにぎり二個をお茶で流し込む。食後山田さんから御池岳の地図を見ながら縦穴六個の場所を教えてもらう。しかし小竜の穴ほどの規模を持つものはないようである。私が以前落ちた穴の位置を聞かれるが、不覚にも場所を正確に特定する作業を怠った。つまりハッキリ分からない。分かっているのは、東のボタンブチから奥ノ池に行く途中の笹薮の中ということだけ。山田さんによれば私が落ちたと思われる穴に、その後女性が落ちたそうである。自力で出られずに引き上げてもらったとのこと。単独でなくて良かった。
サンヤリ山頂は余りよくなかったが、その先のブナ林はよい雰囲気を醸し出していた。やがてまた猛烈なシャクナゲの籔になり、山田さんのシャクナゲに関する薀蓄が出た。斜面を急降下の後、細流に出る。どうもいつもと違い自分でルートファインディングしていないので良く分からないが、左が下流になっているので瀬川谷の支流なのだろう。流れの脇には昔の道があるので、それを辿っていく。ヤマアジサイが白、青、紫と綺麗に開花していて目を楽しませる。
瀬川谷790m付近で林道へと続いているらしい道を捨て、谷沿いに本流まで降りることになった。ここで渓流シューズを持っている人は履き替える。渓流シューズ組、長靴組、そのまま登山靴組と足ごしらえが三つに分かれた。これは歩きやすい順番でもある。私は渓流シューズなのでガンガン下っていったら誰も着いてこれなくなったので、時々休憩して後続を待つ。コマギレの道はあるので登山靴でも行けないことはないが渡渉する箇所では大変だろう。最後はヤケクソで靴のまま水中歩行しておられた。この谷は大滝やゴルジュはないものの、癖のある滝が多くて面白そうだ。一度純粋に登りにきてみたいと思った。
2:17本流と出合着。林道までは80mほどの落差がある。リーダーたちはそのまま上がっていく。Gさんが小又谷出合まで川を下ろうというので、それはグッドアイデアだと渓流シューズ組は着いていく。ところが運悪くじきに下降不能の大堰堤にぶち当たり、結局ヒーヒー言いながら林道に這い上がった。
山田さんからお土産に自身の山行記録と藤原岳自然探査会の予定表を頂いた。山行記録にはその日出会った植物、動物、野鳥の種類がびっしり書いてあった。これはすごい。山田御大は知識、経験、体力と何処から見ても鉄人であった。