八風南峠と段木 01.12.09
朝から共同墓地の清掃作業があって中途半端な時間になった。こういう時はまた家から近い八風峠付近のお世話になろう。八風中峠直下に南峠分岐のプレートがかかった平らな窯跡がある。ここは通るときいつもテントを張ってみたいと思う場所である。水場も近い。今日はここでゆっくりする事にして、ツェルトやマットをザックに詰め込んで出発。
射撃場から更に車で上がり、滝ガ谷出合下の広場に駐車して歩き始める。常緑樹以外すべて葉を落とし寂しい雰囲気だ。その落ち葉もすでに色を失い、すべてセピア調だ。時折どんぐりや落ち葉を拾いながらチンタラ登る。うっすらと汗ばみ、ブナ、ミズナラ、モミの林を抜けて目的地に着いた。
落ち葉を払いのけてツェルトの設営にかかる。まっ平だから地均しは必要ない。二本の木の間に6ミリのロープを自在結びでピンと張る。メインロープから3ミリの細引きで2本プルージックを取り、ツェルトの両端を引っ掛けて引っ張る。マットを下に敷いて四隅をペグで固定する。底を結び合わせ中にも銀マットを敷いて快適な宿の出来上がりだ。数時間で撤収するには惜しい出来上がりだ。泊まっていきたいぐらいだがそうもいかない。
まださほど空腹でないので空身で南峠へ登る。稜線に出たところはどうも南峠より北で、中峠とさほど離れていない。稜線は少し風があって、快晴ではないが下界の見晴らしがいい。またすぐに分岐へ降りた。
水を汲んできてからツェルトの中で炊事にかかる。「食べたら分かるサトーの御飯」とサザエのつぼ焼き、ワカメの味噌汁。湯が沸くまで筒井康隆の文庫本を読む。湯気が上がると外との温度差もあってツェルトの内側に水滴が付いて大変だ。タオルで拭き取る。でも寒いので外ではやりたくない。ゴアのテントで炊事したこともあるが、平気だった。ツェルトもやっぱりゴアの方がいいな。
食後はコーヒーを飲みながら本を読んだり、拾ってきた落ち葉やどんぐりを持参の図鑑で調べたりして過ごす。なかなか普段の山行では持てない贅沢な時間だ。飽きると横になって目をつむる。何か話し声が聞こえてきた。稜線を登山者が通過中らしい。それもすぐに止んでまた静かな時間が流れる。熟睡はしなかったがうとうとしてしまった。中は1.5人用テントと同じ床面積だが、短辺側が垂直なのでツェルトのほうが快適だ。
ゆっくりしてから往路を帰ろうかとも思ったが、段木へ行くという手もあるなと思いついた。そうすると、もう落ち着いていられず撤収にかかった。どうも私は貧乏性のようだ。15分ほどで片付けて先ほど往復した道をまた登り返す。
暫らく稜線を南へ向かうと、いつぞや赤坂谷左俣から登りついた南峠に着いた。段木の尾根の北側は絶壁だ。東へ突き出した一段下のゴツゴツした禿山が段木だ。下界にははるか遠く名古屋のツインタワーが見えている。北には御池岳や竜ヶ岳も見える。ここからさらに南へ登り尾根の取り付きを左折する。以前段木までは行っているので道は分かっている。ササの中に踏み跡がある。
潅木と花崗岩の道を降りていく。「鈴鹿の山と谷」には段木の名の由来は不明とあるが、段木とは割木(薪)の事である。この辺りで割木を切ったのかもしれない。裸地に花崗岩が点在する段木に着いた。すこぶる展望がよい。各峠を挟んで三池岳に至る稜線のピークが並んでいる。八峰山の由来だ。反対側には大平の尾根、その向こうには岩ヶ峰の尾根。東にはコンビナートの向こうに伊勢湾が光っている。まさに東に突き出した展望台である。
前はここから稜線に引き返した。今日は真っ直ぐ東に下りてみよう。地図にははっきりした尾根が滝ヶ谷出合に向かって落ちている。ちょうど駐車地点で都合がよい。「鈴鹿の山と谷」では点線が滝ヶ谷方面へ降りているが、尾根もいけそうである。果たして道跡とテープがあった。この分では大平にもテープがありそうだ。尾根は急降下しているし、落ち葉でよく滑るので木が頼りだ。手袋を持ってこなかったので白魚のような手が荒れてしまうなあ。
痩せ尾根では迷わないが、各小ピークの降り口で道を失うときがある。この尾根は終始道があるので藪漕ぎになったら外した証拠だ。時折一般道かと思うほど歩きやすい所もある。かと思えば木をつかんでの急降下もあって、一度不覚にも尻餅をついて2mほど滑ってしまった。鹿が逃げていった。
やがて滝ガ谷のせせらぎが聞こえてきた。さらに下ると左に堰堤が見えてきたので尾根から外れて強引に左へ下った。八風峠へ行く時に川を渡る堰堤だ。案外早く降りてしまった。あとで滝ヶ谷出合いを見に行った。テープは無かったが微かな踏み跡があった。この滝は直登するのは恐ろしい。