三池岳北東尾根 07.12.02
八風稜線から東へ延びる主要な尾根はすべて歩いたつもりでいたが、三池岳の北にまだ大きな尾根があった。山頂の少し北から北東に延びるこの尾根は複雑な支尾根を持ち、下りに使うと外す可能性が高い。780m付近までははっきりしているが、その後はどれが本筋なのか分からない。しかし山秋谷左岸尾根と見れば宇賀渓水晶キャンプ場に落ちる所が末端と言える。そういうことでキャンプ場から登り、帰路は八風牧場跡から東海自然歩道の周回と決める。
登竜荘を過ぎ水晶キャンプ場入り口に着くと風景が一変していた。トンネル工事はかなり前から始まっているが、ついに取り付け道路の工事も始まった。知らない間にコンクリートの大きな橋脚が建ち、キャンプ場の上を道路が通過するようだ。臨時の金属階段を降り、自然歩道に入る。吊橋を渡り、階段を上って道が水平になったところから適当に山に入る。地図は見なくても登りはアバウトでよい。
樹林に入ると足元は一面シロモジの黄色い絨毯である。やがてヤブだらけの登りとなった。一ヶ月ぶりの山なのでしんどい。右へ左へヤブの薄い場所を縫ってひたすら登る。大きな花崗岩が鎮座する横を抜けると前方が明るくなり、尾根に乗った。けっこうクルマの音が聞こえるので地図を見ると、国道のヘアピンがこちらへ近づいていた。左へとって松が点在する素朴な尾根を進む。いったん峠状の所へ下り、登り返した所が444標高点である。高度計を合わせる。地図を見るとこの先、等高線が壁のようになっている。
シロモジの絨毯 素朴な尾根に出る
急な斜面を直登する。右へ巻いてから尾根状の所を登ったほうが楽だろうが、距離が短いので直登だ。木の枝をつかんで体を引き上げる。バテバテで水平な痩せ尾根に這い上がって休憩する。まだ散り残った紅葉が朝日を浴びて美しい。前方にはまたピークが見えている。地図を見るとコンター570ということになる。休憩後そこまで登って右折する。今度は白い砂の美しい尾根になった。落ち葉はシロモジから淡い黄色のタカノツメ一色に変わり、高度の変化を告げてくれる。
杣道があるかと思えばヤブっぽくなって苦労する場所もある。尾根がだんだん広くなって620mほどでササが出てくる。花崗岩やらヤブに進路を妨害されるので、右に外して浅い谷を登る。ときおり真っ赤なモミジが残っていて不思議だ。699標高点に着くとマツの枝越しに竜ヶ岳が大きく見える。竜の展望台としては一級の尾根だ。写真を撮る。
白砂の美しい尾根 松と竜ヶ岳
その先またヤブ尾根。岩や潅木が邪魔で右側を巻く。墓石のような花崗岩を過ぎてガレ場(770m)に着くと、今度は遮るもののない大展望だ。風が寒いが、素晴らしい開放感にまた写真を何枚か撮る。尾根の左側には福王山と、その周囲の低地の紅葉や下界の展望が広がる。目印になっていた八風牧場の三角屋根が取り壊されたのは寂しい。
八峯山由来のピーク 八風牧場の尾根や切畑方面の展望 竜ヶ岳と砂山の紅葉
ピークを越えればまたピークが見えるという具合で、ひとつひとつ目標をこなしていく。疲れてくると次のピークが途方もなく高く見えるが、たいてい錯覚であることが多い。870mピークにたどり着いて一休み。隣のお菊池の尾根のガレがよく見える。県境稜線まで出ると人も通るかもしれないので、ここで昼食とする。少し南側へ寄ると風も当たらず日差しが暖かい。地面も平らで良き場所だ。こういう所でのんびりとお昼を過ごしていると小さな幸せを感じる。三池岳周辺は八風射撃場の音が鳴り響いて興をそがれるが、鉛公害問題で最近閉鎖されたそうだ。山が静かになっていいことだ。
ゆっくり腰をあげて進むと環境庁の鳥獣保護区の看板があった。相当古く、成長した木に食い込んでいる。地形図ではこの先岩場のマークに突き当たる。通過可能かどうか不安であったが、保護区の看板がここにあるなら大丈夫だろう。やはり岩場は何の不安もない場所であった。ヤブよりはるかによい。ここも展望抜群である。この付近まで来ると高度感もあって爽快だ。
木に食い込む鳥獣保護の看板 岩場から県境稜線を眺める ピークを振り返る
最後と思われるピークを目指して登っていく。またヤブだらけになってきた。やがて尾根芯にシャクナゲが居座る場所に出る。これが続くとお手上げだが、シャクナゲは一部分だけだった。また展望が出てくる。高度が上がったので静ヶ岳の向こうに御池岳が現れた。ササが濃くなるとようやく県境に着いた。「界」の字が刻まれた石柱がある。踏み跡が薄いと思ったら登山道は少し下側にあった。障害物がないとこうも早く歩けるのかと、登山道のありがたみを味わいながら三池岳を目指す。
三池岳には誰もいなかった。八風峠付近に人がいればざわめきも聞こえるはずだが、初冬のうらさみしい静寂が支配しているだけだった。紅葉もすっかり終わり、地味な色になった滋賀県側の緩斜面が広がっている。長居をする場所でもないのでお菊池コースへ入り、ドウダンの林の中で休憩する。お菊池は水が少なかった。しかし完全に干上がったときも知らない。少ないながらも鏡のように静まり返って落葉の木々を映している。途中から登山道を離れ、菰野町と大安町の境界尾根に入る。左に往路の北東尾根を眺めながら帰った。
町界尾根からの展望 使われなくなった牧場の林道 牧場跡にはまだモミジ
三池岳北東尾根は所々杣道もあるが、一貫した道はなくヤブも濃い。かといって通過をためらう激ヤブや肝を冷やす岩場もない。どう評価したものか分からないが、普通の道に飽きた人にはお勧めだ。ガレ場からの竜ヶ岳展望は抜群である。