鈴鹿関連書籍
歌集 『千春萬冬 鈴鹿の山を謳う』
著者 石井明子
表紙写真準備中 御池杣人氏書評
新・分県登山ガイド23 三重県の山
御池杣人氏書評 著者 金丸勝実/佐藤貞夫/黒田豊年
山を県別に分けるという奇妙なガイドブックである。普通山脈の上に県境があるので、分類の仕方としては不合理だ。しかし96年、すでに分県ガイドが登場している。旧版の著者は岳連や日山協の幹部で、ヒマラヤ遠征など経験豊富な吉住氏と岩出氏。対して新版の著者は聞いたこともない連中である。
巻末のプロフィールを見てみると、金丸氏は既に数冊の著作もあり安心感がある。佐藤氏は60年代からアルプスに親しみ、正しい訓練も受けている。問題は鈴鹿の多くを担当している黒田なる人物である。彼のHPを見ると、殆どまともなルートを歩いていない。果たして今回紹介している正統なコースを、彼自身本当に歩いたことがあるのか疑わしい。しかも掲示板には実にしょうもないギャグを書いて喜んでいる。このような何処の馬の骨とも分からない人物に、看板の御在所岳や藤原岳をよく書かせたものだ。ヤマケイの担当者は、そうとう度胸があると言える。それともヤケクソだったのだろうか。
その問題の黒田氏担当箇所だが、HPに比べて借りてきたネコのようである。しかしまあ、可もなく不可もなく無難なところではないだろうか。本全体を見れば、力のこもった取材成果を発揮した佐藤氏と金丸氏に救われて、新版としての水準をクリアしている。ひとつ心配なのはタイトルの頭に「新」と付いていることだ。次回は「新新」、その次は「新新新」とでもするつもりだろうか。
2004年11月 山と渓谷社 \1500+税
御池岳・憧 著者 近藤郁夫
近藤氏久々の写真集。鈴鹿の山ばかり登る人も珍しいが、近藤氏のようにその中の一山だけ登る人は、もはや人間国宝と言っても良いだろう。氏の御池通いは現在も続いており、その蓄積が何らかの形で表出するのは必然であったとも言える。
前作「彩」に続いて御池岳とその自然に対する愛情が詰まっている。対等な愛ではなくタイトル通り憧れであり、自然崇拝に近い。形態は写真集だが、詩・散文・歌がセットになって完成度を高めている。今回は山仲間の作品も掲載され、幅広い内容となっている。
裏表紙にはドリーネの前に佇む著者の姿がある。足の開き具合とひざの角度、重心の位置、手の力の抜け具合。表情は見えなくとも、御池岳の見せる風景に呆然としている様子がありありと伝わる。
入手方法
藤原簡易パーキングに隣接する喫茶「アタント」(藤原町山口)で販売中
遠方の方は送料込で切手900円分同封のうえ下記の住所へ注文する。
〒 456−0032
名古屋市熱田区三本松町 22−3-102 近藤郁夫 宛
2004年8月 みずほ出版 ¥700
YAMAPシリーズ L 鈴鹿大峰大台ケ原
著者 金丸勝実 小嶋誠孝
YAMAPとはガイドブックと地図が一体になった形態の本である。普通のガイドブックの地図はオマケ程度であるが、本書は5万、あるいは2万5千の地図が掲載され、各ポイントの詳しい情報が書き込まれている。つまり携帯して現場で使える本だ。
鈴鹿担当の金丸氏はご存知HP「歩人倶楽部」管理人である。特に花情報で定評があり、花の山旅シリーズの鈴鹿・伊吹の著者でもある。私も他のガイドブックの一部を担当してみて、この仕事は楽ではないことが分かった。自分の休日スケジュールを犠牲にして、一枚の写真を撮るために、何度も同じコースを登らなければならないこともある。分かりきったことでも全国版となれば確かな裏付けも取らねばならないし、出版社の指示が変わることもある。
このような割に合わない仕事を、黙々と何冊も続けている著者の姿勢には頭が下がる。本職と同じく、生まれながらの教育者なのだろう。
コースの設定はよく練られ、特に著者自身が撮影した写真が美しい。またモデルとして鈴鹿関連のホームページ仲間が登場しているのも楽しい。
2004年8月 山と渓谷社 ¥1400+税
鈴鹿の山で見られる花
監修 村長昭義 編集 鈴鹿の山 花散策会 発行 今村悦子
植物図鑑は幾らもあるが鈴鹿に特化した図鑑は貴重であり、また鈴鹿ファンにはより使いやすい。地元を中心とした登山者の手によって、このような図鑑が誕生したことは意義深い。ザックに入れても苦にならないハンディーなサイズに約500種が収録されている。しかし鈴鹿には2000種を越える植物があるそうで、この道も奥が深い。続編も計画されているようで楽しみである。写真もなるべくその種の特徴を表現するよう工夫されている。花オンチの一人として、製作に携わった方々の労に感謝したい。
初めて出会った科も分からない花を、どういう工夫ですばやく目的のページに導くかはすべての図鑑共通の課題である。また絶滅危惧何類と言う表記によって、保護意識の高まりがある一方、盗掘の誘引になりかねないジレンマもある。花の名前を覚えようという人に悪人はいないことを信じる。
2004年3月 東海出版 ¥2000
鈴鹿と山釣り 著者 石崎幸弘
「鈴鹿と山釣り」という本が出たことは知っていた。既にすっかり釣り熱が醒めていたので、何となく買わずにいたらある人から頂戴した。著者の石崎氏は当サイトから相互リンクしている Introduction渓流 のブルーリバーさんである。
まえがきに「本書は釣りのガイド本でもなく技術書でもない」とある。そしてのっけから廃村茨川のことにかなりの頁が割かれている。首を傾げたくなる箇所も二、三あったが、私の知らないことも若干記述されていた。
以前から思っていたが、海釣りをする人種と山釣りを好む人種は歴然と違う。開けっ広げの大海原に向かう人と、独りで日の当たらぬ薄暗い谷間を徘徊する人が同じ気性であるはずがない。このあいだも山本素石のいたノータリンクラブ関係者から、本を出しましたとの連絡が来た。渓流人はもの想い、もの書く人が多い。山人舎の辻氏も然り。山奥へ入れば必ず目にする山村と民俗、植物、生物、地質などに次第に惹かれていく。そして最後はコンクリートで固められ、窒息して死にゆく川を目の当たりにし、河川行政にひと言言いたくなる。都会人の目に触れぬ山奥で、林道や堰堤工事はやり放題である。
本書には登山者にもおなじみの御池川、茶屋川、神崎川の自然が、豊かな感性で描写されている。そして自然と人間の関係を問いかける。釣りをしない人にも、一度目を通して頂きたい本である。
2003年6月 サンライズ出版 ¥1800+税
鈴鹿の山を歩く 著者 草川啓三
草川啓三氏の名は、誰もが持っている鈴鹿のエアリアマップでおなじみである。地図の調査執筆者であることは、誰よりもよく山を歩かねばならない。氏には三十年に亘る鈴鹿逍遥の蓄積がある。本書はそういう著者の作品ゆえ、得難い味わいがある。
本書はコースガイド、エッセイ、紀行文、写真の複合書である。著者がやりたいことをすべて盛り込んだのだろう。ガイドブックのように出版社の意向や注文に縛られることなく、自由闊達に山が語られている。特に「あるく・みる・きく」が面白かった。「やはり池と出合うのは天気の悪い日に限るものだと思った」・・・こういう感性が素晴らしい。
冒頭のフォト&エッセイもいい。好きな文章は「新緑の道」、好きな写真は「道の誘惑」にある杉峠道だ。著者には人生の大先輩というイメージを抱いていたが、プロフィールを見れば団塊の世代であり、自分と数年しか違わないことに驚いた。しかし鈴鹿道に関してはやはり大先達である。その達人にして帯のコピーには「鈴鹿の山との付き合い方が少々わかった」とある。少々である。山歩き道の修行も深淵の底は見えない。
2003年4月 ナカニシヤ出版 ¥2500+税