読者投稿 柳澤郎女様
本歌 (三) あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながしき夜を 一人かも寝む
足引きの 山行きの後の しだり男の ながながしき日を 一人かみしむ
現代語訳 彼は前に登ったことあると自信ありげだったけど、4日ぐらい筋肉痛に苦しんだ由
本歌 (六) かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きにすべり 尾てい骨打つ
現代語訳 丸太の橋は白い霜でまるで天子様が渡る橋のようであったことか
本歌 (九) 花の色は うつりにけりな いたずらに わが身よにふる ながめせしまに
花の色は うつりにけりな いたずらに わが身他の山 行っている間に
現代語訳 鎌ケ岳の石楠花はもう少しで見ごろだと思っていたのに、ああ待っていてはくれなかったんだねー
本歌 (十一) わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣り舟
ささ野原 笹薮分けて こぎ出でぬと 人には告げよ あまの団体
現代語訳 すごい藪こぎだよー覚悟はいいか
本歌(十四)
みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆえに 乱れそめにし われならなくに
道奥の しのぶ持ち物 誰ゆえに 乱れバテにし われならなくに
現代語訳 何でこんなに荷物を持ってきたの、バテる人ほどいっぱい持ってくるんだから、皆で分けて持ってあげよう
本歌 (十六) 立ちわかれ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
立ち別れ いなかの山の 峰のなか まつとし聞かば 今むかえにいくぞ
現代語訳 なんできらら峰までいってしまったの、長石谷に降りてちょうだい
本歌 (十七) ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれないに 水くくるとは
ちはやぶる かみさんも聞かず 朝明川 からくれないに 焼肉するとは
現代語訳 ピーマン、にんじん、たまねぎ、カルビー かみさんに言って来なかった焼肉パーティ(私はしらんよ家うちのことは)
本歌 (二〇) わびぬれば いまはたおなじ 難波なる 身を尽くしても あはむとぞ思う
詫びぬれば いままた遅れて 難儀なる 身を尽くしても 会わんとぞ思う
現代語訳 ごめんなさい、みんなの迷惑にならないように身を尽くして追いつきます
本歌(二十三)
月見れば ちぢに物こそ かなしけれ わが身ひとつの 秋にあらねど
山見れば ちぢに物こそ かなしけれ わが身ひとつの 秋にあらねど
現代語訳 秋の山は私を文学少女にしてくれるねー 私だけではないのでしょうね
本歌(二十八) 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思えば
山行は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も何も 気にせんと思えば
現代語訳 何でこんな真冬に山なんか行くの?なんて言われても気にしない この壮絶な世界は自分のものだ
本歌(二十九) 心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
心あてに 行かなば行かむ 初道の おきまどはせる 白地図の道
現代語訳 二万五千分の一の地図ではこっちの方が近道のはずなんだけどなー
本歌(三十四) 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
誰もかも 知る人にせむ 頂上は 誰も昔の 友ならなくに
現代語訳 もう頂上に行ったら誰とでも友達になれる 今あったばかりの人でも
本歌 (三十八) 忘らるる 身をば思わず ちかいてし 人の命の 惜しくもあるかな
忘らるる 身をば思わず 岩場にて 自分の命の 惜しくもあるかな
現代語訳 まだまだいっぱい山に行きたいから、わが身の命は惜しいものよ、心配する人もいないのに
本歌 (四十) しのぶれど 色にいでにけり わが恋は 物や思うと 人のとふまで
しのぶれど 色にいでにけり わがバテは 置いていこかと 人の問うまで
現代語訳 見え張って,精一杯頑張っていたんだけど、みんなの足をひっぱていたんだなー
本歌(四十六)
由良のとを わたる舟人 かぢをたえ ゆくえも知らぬ 恋の道かな
武平道 わたる先人 かぢをたえ ゆくえも知らぬ 峠の道かな
現代語訳 雪の峠道で先人の間違ったトレースに入り込んでしまった。私は何処へ連れて行かれるの?
本歌(四十八) 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
風をいたみ 岩うつ足の おのれのみ 下って年を 思うころかな
現代語訳 そろそろ岩場はだめになって来たんかなー
本歌(五十六) あらざらむ この世のほかの 思い出に いまひとたびの あふこともがな
あらざらむ ガレ場のとこの 思い出は いまひとたびも 行くことはイヤ
現代語訳 思い出すだけでも身震いする 鎌尾根はもう絶対行かない
本歌(七十) さびしさに 宿をたちいでて ながむれば いずこもおなじ 秋の夕ぐれ
厳しさに 岩に立ちいで ながむれば いずこもおなじ 岩のまた岩
現代語訳 ルートの見込みが悪かったのかと思いきや いずこも同じ岩ばかり 三ツ口谷の尾根近くは
本歌(八十三) 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
世の中よ 道こそなけれ わけ出でる 山の奥にも 人が住み居る
現代語訳 こんな山の中に集落があるなんて、人間てなんてたくましいんだろう 実感です
本歌(一〇〇) ももしきや ふるき軒ばの しのぶにも なおあまりある 昔なりけり
ももしきや 古きを妻に 借りてきて なおあまりある ウエストなりけり
現代語訳 Aさんは山ウエアーを夫婦で共有しているという わからないわ夫婦のことは
管理人コメント
老中柳澤さま、たくさんのお歌有難うございました。近藤先生以外にこのような お馬鹿な遊びに付きあってくれる方がおられるとは、世の中捨てたもんじゃないなと感涙にむせんでおります。
遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけむ・・・と梁塵秘抄にあるように、動物ではなく人として生まれてきた意味をかみしめれば遊び心ほど貴いものはありません。四十番「しのぶれど」の歌、いたく気に入りました。
近藤郁夫氏のコメント
見事なるパロディーセンス。お見事。管理人氏とともに余も感涙にむせぶぞよ。やはりこの世は広く深く面白い。これだけの作品をものにしておられる方がいるということ。うれしい。
それとパロディーであったとしても、その内容には必ずその人のそれまでの山行きの基調が、豊かなエピソードとともに反映するのだということに気づけました。女史の山行きと魅力的な豊かな感性と知性がうかがえますね。僕もこのトロイ世界を精進しなくては。オミゴト〜、この道の深さを思い知りました。