読者投稿    秋狸様 


本歌   巡りあひて 見しや夫とも わかぬまに  雲がくれにし 夜半の月かな    (紫式部)

      巡りあひて 見てや御池と 我が部屋に  狸迷いし 夜半の道かな

現代語訳

ようやく出会うことができた葉里麻呂さん いきなり御池岳の模型を見ていかれよと 家に誘っていただいた
楽しい会話に時間を忘れ外は真っ暗、やはり帰りの夜道は 迷ってしまったなあ

管理人解説

初めての作品にしてはよくできている。「巡りあいて」の本歌を選んだのは正解。お互いにすれ違いでなかなか会えなかったが、本人も忘れているような箇所まで当サイトをご覧になってくれていたことは嬉しい。

この作品を見て、なるほど我が家は狸も迷うほど僻地にあるのだと客観的に気付かされた。


本歌   音に聞く たかしの濱の あだ浪は  かけじや袖の ぬれもこそすれ   (祐子内新王家紀伊)

      音に聞く 田光の原の あの型は  なんじゃーこりゃあと 驚きこそすれ

現代語訳

うわさに聞いていた 御池岳の立体模型は何じゃこりゃーと驚くばかりの出来栄えであったことよ

管理人解説

御池岳にはまり込んでいる狸氏にこそ見て欲しかった。しかしでかい模型は場所をとるので、実のところ持て余している。
ところで私の住まいは田光ではないのだが、まあいいか。「かけじや」に対する「なんじゃーにナンセンスの芽生えあり。


本歌    田子の浦に うち出でてみれば 白妙の  富士の高嶺に 雪はふりつつ (山邊赤人)

       牧田の川に 裡出でて見れば 白石の  明治の古木に エレキは通通 

現代語訳

牧田川の左岸にある白石の時山第一発電所を訪れてみた
明治時代にできたこの発電所から古の電柱を伝って電気が流れていたことよ

管理人解説

うち出でるに「裡」の字を当てたのは何か意味があるのかどうか? 成功の裡にとか平和の裡に・・・という場合に使われる字であるが、管理人には分かりまへん。しかし字面的に牧田川に狸が出てきたようなイメージが浮かぶのがよい。

狸氏は白石石灰工場の廃屋がお気に入りの様子である。山間僻地に文明開化のロマンがある。確か毘沙門谷右岸尾根にも木製電柱があった。降りつつの「つつ」に通々をあてたのは奇抜な発想。

上記三首を見てまだ作風が硬い気がするが、端々に大器の片鱗がうかがえる。欲を言えば、はたと膝を打つ見事な置き換えや突拍子もない置き換え(noriさんの歌参照)が欲しいところで、作者の更なる精進を望む。しかしながら入門レベルは軽くクリアであり、久々の新人登場は嬉しいことだ。