妙 女
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こんばんは〜 遅れて参加 夜の9時 笑顔飛び交う 御池庵
暗闇の 空に浮き立つ 藤原岳 あの日この日の 想いを隠して
アンパンマン 皆勤賞は返上です 心を残し 走るトリトン
第一首
山では登りが大変なので、どうしても口数が少なくなる(そうじゃない人もいるが)。山仲間と下界で食事を共にすることは、リラックスして歓談できる貴重な時間である。歌のように笑顔が飛び交う楽しいひと時。山麓にこうして山好きが集える御池庵を設けた御池杣人氏の功績大である。これが社会還元というものだろう。短い時間で台風のように通り過ぎていった、作者の笑顔をも思う。
第二首
御池庵の往路か帰路に作者が車中から見た情景だと察する。闇に浮かぶ巨大な山塊が手に取るようだ。「あの日この日」に作者の長い山歴が偲ばれる。これは一押しの見事な短歌。登らなくてもこうして傑作が詠めるとは目からウロコ。「暗闇」で始まり「隠して」の結びもよい。
第三首
前回の歌もアンパンマンが謎であったが、こうして再び登場した。皆勤賞の枕詞と見ることができ、ミルキーあんぱんにふさわしい。作者の欠席でアンパンマンは管理人一人になってしまったが、歌を頂いたことは有難い。「心を残し」た土と水、木と花の世界に、名港トリトンの人工的夜景美が対照的で面白い歌。
葉里麻呂
第1首
たとえ夜の9時であろうが、わずか15分であろうが、元気な姿と笑顔を振りまいて、妙女。僕も元気をいただけてうれし。五七五七七の形式や技法などなんのその。妙女の「こんばんは〜」という明るくさわやかなあいさつのこころよさ。それがそのまま伝わる作品。彼女の参加により、笑顔がより豊かに飛び交った。不思議な人だ。
第2首
夜に藤原岳の麓―306号線を車走らせることはまれ。この歌は第3首とともに帰路とみる。帰路、仲間の笑顔飛び交う空間から、一人となり車を走らせる。しーんとした車内。窓の右側に藤原岳は大きな闇の中、空に浮き立つ。その闇の中にもあの日この日の妙女の藤原岳山行の物語。それらが藤原岳の巨大なシルエットから浮かびあがってくる。主観的には浮かびあがってくるのだが、巨大なシルエットは巨大な闇にも見えて。だからその暗さは「想いを隠」すのかも。いずれにせよ、闇の藤原岳の麓を車走らせている山大好きな妙女の姿が浮かんでくる。
第3首
人生いろいろあり、お互いに多忙と諸事情の中を生きている。したがって都合つかぬ場合も多々ある。しかしなにも物理的に参加することだけが参加ではない。精神的に参加していることだってある。妙女は精神的には皆勤賞。
葉里麻呂の「『心残し』た土と水、木と花の世界に、名港トリトンの人工的夜景美が対照的」はみごとな評じゃ。その通り。帰路、いかなる夜景、光景であったか。その只中を家へと急いでいる妙女の姿を彷彿とさせる。ミルキーあんぱんは吟行だから、こんな参加の仕方もあったのだ。人生の多様性を知る一首。
(2006年5月4日)
ちょうど去年の5月4日、この日は手術のため入院した日。あれから1年か。
御池杣人