緑 水

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 雪が降りてきた 
  木の間を抜けて風に乗り
   あったか コタツと 湯気を連れてきた


 シャラシャラと
  枯れ葉に跳ねるあられ雪
   赤葉 黄葉のカスタネット
    奏でる音の合奏だ


 雪ん子が 風に乗って泳いでる
  ケヤキの大ジイ ふところ広げ
   ここにお入り  やまの子みんな
    夜には鬼さん 酒盛りするよ 


 さすがに鈴鹿各所に味わいのある地名を残してきた人。一味ちがう個性が横溢している。童謡やNHKみんなの歌の歌詞になりそうな出来である。

 初雪があったかコタツを連れてくるなんて誰も書けない見事な発想。コタツと鍋と熱燗は緑水さんに良く似合う。木の間を抜けて風に乗り − というところも生き生きとした描写だ。

 二段目の詞を見ると笊ヶ岳を日帰りするような怖いおっさんが書いたとは思えない可愛さ。山男はみな内面に優しさとデリカシーを持っているのだろうか。

 ケヤキの大ジイ ふところ広げ ここにお入り  やまの子みんな・・・いいなあ、ここ。絶賛。私たちは皆、あのとき「やまの子」だった。やまの懐で遊んでもらっていたのだ。鬼さんの酒盛りは忘れていた日本の民俗さえ香ってくる。拙作第四首と共通する世界だが、こちらの方がはるかに良い。

 驚き、絶賛、降参、拍手喝采のひとときでした              葉里麻呂


 

 さまよい人−緑水さん。氏の笑顔とこの詩はなんと対応していることだろう。こんな感性を持続できているからこそ、今なお「さまよい人」をしておられるのだろう。

 

 おっさんでありながら、可愛い。こんな詩はわしには書けぬ。まだまだわしも修業が足りぬわい。

 

 二つ目の詩−あられに全身を打たれている時のあの不思議な感触がまざまざとよみがえる。

                                                            御池杣人