東 雲
コグルミ谷にて
木枯らしの 斜面にすっくと 大欅 洞に入りて 歓声響く
コグルミ谷右岸尾根にて
初雪に 濡れるもみじに 一瞬の 日差に映える 尾根の彩り
カメラを忘れて帰宅後、湯船に浸かりて
山肌を 杉ともみじと 初雪で 瞼に鮮やか 三色に染まる
東雲氏の歌も堂に入ってきた。いずれも当日の風景を過不足なく捉え、写真で言うなら構図がいい。一瞬のスポットライトを浴びた尾根の紅葉は私も好きな光景だ。
第三首をみると、カメラを忘れたことは決してマイナスではないことが分かる。私のアルプスへ行くときの友人は山へカメラを持ち込まない。視覚ばかりでなく、自分自身の五感でじっくり味わい、脳裏に焼き付けるのだ。そうすることで下山後の反芻も色鮮やかなものになるのだろう。写真ばかりに熱中していると、現場にあった大事な何かを忘れてこないだろうか。
葉里麻呂
3首ともお見事じゃのう。葉里麻呂は「構図がいい」としたが、僕は「色彩表現」といおうか、「色調」といおうか、そちらもかいたい。瞬く間に白が加わって世界が深くなっていく。その場に立ち会える幸。
御池杣人