巴菜女
八十の 年を感じぬ 足さばき 絵地図の主は 山の達人
消える雪 残る雪も 消える雪 名残り雪の 御池に集う
杣人の 快気を祝う 福寿草 幸せを呼ぶ 黄色の花園
第一首
非の打ち所がないというほどうまい。人の作った歌をひねくり回しているパロディー作家としては、ストレートな輝きがとてもまぶしい。リズムよく、我々誰しも思ったことを見事に表現している。御老公のストックなしでヒョイヒョイと歩かれる「足さばき」に驚嘆。
第二首
残雪を通じて季節の移ろいの速さと儚さを言いえて妙。短時間で生命を謳歌し、散っていく花をも思わせる。「御池に集う」が一期一会の大切さを感じさせる。「残る雪も 消える雪」が斬新な表現だ。
第三首
じつにホンワカとした暖かい歌。春の暖かさ、人の心の温かさ。色彩感覚もあふれている。快気・福寿・幸せ・黄色い花園・・・言葉に統一感があって、こんな目出度い歌はない。巴菜女の才、恐るべし。
葉里麻呂
1)写真と歌との鮮やかなコラボレーション。花の悦女と並ぶ師の表情もいい。絵地図の師の山行姿を一気に短字数で歌いきり、あますところなし。本気ではじけておられる巴菜女の内面的蓄積の豊かさを知る。この歌のように師の存在自体が後進への励み。
2)残雪濃い御池岳。例年に比して雪の多さが印象深いものだった。その大きな舞台の上に僕たちは集った。「雪」を4回リズミカルに使って、しかも「消える」「残る」「名残り」とやがて「消え」ていくことー生成・発展・消滅―大きな過程の一こまを美しく表現した。これはすごい、巴菜女の新境地か。
3)ありがとうございます。あの地に、毎年一人で密やかに通い、可愛い卒業生たちや新入生たちのことをフクジュソウと語ってくる。僕の心の儀式の空間。昨年は行くことができなかった。今年は大切な友らとかの地に立てた。「寿」の人も一緒に。なおさら感慨深い。
御池杣人