奈 月
池深く 手招きの森 風にゆる 思わず一歩 我にかえりし
洞穴に 男のロマン 感じけり
短歌−「手招きの森」に誘われて、加えて「池深」き風情に魅せられて、「思わず一歩」踏み出してから、いまだ「我にかえ」っていない余の姿を思い浮かべることだなあ。
森はなぜ人を誘うのだろうか。不思議。
句−あの洞穴に、余はただ「コワー、コワー、クワバラ、クワバラ」とその周囲で騒いでいるのみ。落語の「饅頭こわい」と同じだけれど。
ところで、あの中に入ったオタンチンたちがおったそうな。そのオタンコナスたちとは別に、きちんとした調査に入った穴もぐりの専門家の中には、女人もおられたとか。「女のロマン」もあるのでは、奈月殿。
御池杣人
波紋に揺れる木々を手招くと表現されたのだろうか。空が写って無限の深淵となった池。覗きこむと吸い寄せられるような感覚がよく表現されている。御池岳のお花さんや三池岳のお菊さんは、奈月さんのように「我に返る」ことが出来ずに手招きに応じてしまったのだろうか。 花ちゃ〜ん、菊ちゃ〜ん ・ ・ ・ あ、これ「いなかっぺ大将」の風大左衛門やないの。
ロマンは男の専売特許ではありません。私は「エヴェレストの女たち」という本を持っています。女は家庭を守るものと広言しても何処からもクレームがつかない時代に、女性たちが高所登山をすることは莫大なエネルギーを必要としたでしょう。家庭を顧みない男がエべレストなんか登っても大して偉くありません。奈月さんも遠慮せずにロマンをお持ちください。穴に潜るのもロマンの端くれに加えていただき、有難きかな。
葉里麻呂