東 雲
霧流れ 真弓弾けて 華やかに 真の谷にも 冬は近づき
御池では 初めて見せし 雲の海 暫し佇む 夕日のテラス
第一首
マユミの紅が霧の白に溶け込み、真の谷源流部一帯は妖しいまでの風情。冬間近の姿。東雲が「華やかに・・・冬は近づき」としている点に注目したい。「寂しげに」でもなく、「悲しげに」でもない。そんな紋切り型の発想を超えて、僕たちも「華やかに」加齢していきたいものだ。
第二首
余の第一首と期せずして同じ場面。今回の吟行のハイライト。余は人さま(寂蓮法師)の歌を取ってしまったが、それは御池百人一首実現のため。己のことばで歌っているのがうらやましい。結びの「夕日のテラス」が偶然か、同じになったのもうれし。
この場面は西雲(どう読むのか知らん)であったが、鈴北からの雲海は北雲。さらには南雲もあれば、待望の東雲もあろう。東雲氏による雲海四部作をいずれ鑑賞したいものよ。
御池杣人
木々は葉を落とし乳白色の霧が覆うモノクロームの世界に、桃が咲いたかと思うようなマユミはたしかに華やかでした。「真弓 弾けて 華やかに」という箇所は母音がA・A・A と続いて読んだ調子がいいですね。
第二首は俳句を思わせる無駄のない簡潔な構成に恐れ入りました。写真なら構図がぴたりと決まったと言う感じですね。
葉里麻呂