妙 女

戻る   次へ

       雨がふっていてよかった  

       私の頬が涙でぬれるのを
       だれも気づかなかったから

        見慣れた木立と 枝を広げる空に会え
       あふれる涙をぬぐわずにすんだから

         しゃがみ込んで
       枯葉の中の小さな若葉にごあいさつ  

       赤い実、青い実と遊ぶ ゆらゆらしずくにごあいさつ
       深い緑の苔の中 かくれんぼしているしずくにもごあいさつ  

       ほほえみを交わし合い
       御池に遊んだ11ぴきのねこ

 


 カミサンから「あんたの眼はでかいだけ。何も見えとらん」と常々酷評されている余は、当然のことながら「気づ」くはずがない。たとえあの日が快晴であったとしても。また、「気づ」くことのできない方がいい場合もある。妙女と同じ空気を吸い、同じ地に立ち、「枯葉の中の小さな若葉」「ゆらゆらしずく」「かくれんぼしているしずく」とごあいさつできたことで充分だ。だから「ほほえみを交わし合」うことができた。この11ぴきのねこたちは。

                                           御池杣人


   妙女さまの純粋な心にふれて、皆みんな幸せな気持ちをいただきました。

 ひとつぶの雫の落つる時待てば風立ち揺れる翡翠の涙

 童(わらはべ)の心のお池溢れ(あふれ)だし玉露ほろり瞳に光る

                                           都津茶女


 今始めて明かされる妙女さまの秘密。足元のフシグロも見えなかった私が気付かなかったのは当然。
「枯葉の中の小さな若葉」 「苔の中 かくれんぼしているしずく」・・・この視点には目からウロコ。

 人の十倍の感受性を持つ人は何かと大変でしょうが、たぶん生きている喜びも十倍になるのでしょう。「雨がふっていてよかった」から始まる構成も素晴らしい。

                                           葉里麻呂