破地輪駆
暖冬の 丸尾尾根にて そこのけそこのけ 三馬鹿通る 猪鹿様が 憐れむことよ
冬枯れの 鈴鹿の山に タカノツメ おいしそうなと 食すアホかな
第一首 どうもこれは恐れ入った破天荒な歌である。どうやって区切ればいいのかも不明だ。しかし大器の片鱗が微量ながら検出される。
三馬鹿とは我らの穴転落互助会のことだろう。猪鹿とくれば蝶が欲しいところだが、冬なれば仕方がない。コメントとして「頭痛が痛い」と言う古いギャグを贈ろう。ケロリンが飲みたくなる歌だ。
第二首は下の句を工夫すれば何とかなりそうだが、そのままでも個性的な力強さがある。ウコギ科には山菜になる木が何種かあるが、当然春の若葉である。黄葉に噛み付くとは精神を疑われても仕方ないが、管理人も怪しいキノコを試すので人のことは言えない。しかしこうしたアドベンチャー精神が、非常識を次世代の常識に変えていくのである。
いにしえより人並み外れた偉人は、それが理解できない凡人からアホだのバカだの言われるのが世の常だ。自身の信ずる歌道を邁進していただきたい。もし全然偉人でないことが判明しても、それは後世のことだから気にすることはない。
歌を詠むときは漢字の方が感じがよいと幹事は思ったので、勝手ながら当て字を付けさせていただいた。破地はズボンの生地を破る意。あるいは地を蹴って踏破する意。輪駆は車輪の駆動ではなく、輪は円であり、駆け回る意。
葉里麻呂
・第一首−「三馬鹿」とは名誉なことよ。ただし、僕は「そこのけそこのけ」ではなく「お邪魔しますよ」の気持ちで山に入っているけれど、それでも蟻さんや虫さんたちから見れば「そこのけそこのけ」となるのだろうな。
・第二首−きちんと自己認識できているところよろしい。破地輪駆氏の歌を初めて鑑賞するが、あの形容不能なズボンを思い出すと、この歌と妙に調和がとれているのはなぜ。
この冬も早朝からあのズボンをはいて、何でも目につくものは口でためしながら、雪にまみれてわけのわからぬ行程を歩いてはるのだろうか。
御池杣人