鈴鹿:ハライド
ハライドは展望の良いピークだ。鈴鹿山脈中央部の伊勢側の山々を見渡せる位置にある。しかし、午後にその山頂に立てば、御在所岳や国見岳はただ逆光の中に青黒くそそり立つばかりだ。朝日に照らされた御在所岳を見ようと早朝に出発し、南コブ経由でハライドへ登った。南コブからハライドまでの踏み跡は不明瞭なところもあるが、問題なく辿ることが出来た。ただし一般登山道ではない。
- 登山日
- 2001年6月3日日曜日
- ルート
- 鳥居道谷駐車場-風越峠-南コブ-ハライド-腰越峠-裏道
風越峠

3:00、鈴鹿スカイラインの鳥居道谷の駐車場に自動車を停めた。自動車のヘッドライトを点灯したまま登山靴に履き替える。ライトを消せば頭上にカシオペア座。希望荘付近では温泉掘削の櫓が組まれており、暗闇の中でその一画だけが明るい。ヘッドランプにスイッチを入れる。自動車のそれと比べると、あまりにも頼りない。
希望荘の前を通って東海自然歩道に入ると、四日市方面の明かりが遠くに輝いていた。気の早い鳥が鳴き始めた。奥へ進んで街路灯が無くなると、まったくの暗闇になった。川音を聞きながら樹下の道へ入る。今はヘッドランプの光が届く範囲だけが世界のすべて。自然歩道ではルートに気を使う必要もなく、ただ登れば良い。頭上が開けると標柱があり、意外に早く風越峠に到着した。名古屋の日出時刻は4:38。あと45分後だが周辺は真っ暗。峠には南コブの小さな標識がかけられていた。(写真1)
南コブ



峠からはササの中の急斜面を登る。直ぐに樹下の道となり、ヘッドランプの明かりで赤テープを拾って登るうちに、背後の樹間から平野部の街路灯が見え始める。小鳥の鳴く声も多くなった。20分ほどで道が水平になり、南コブの山頂に着く。樹下の山頂は展望もなく、まだ暗い。
付近には銘板が多いが、いままで明瞭だった道が解らなくなってあせる。ようやく右手にテープを見つけてこれを追うが、ヘッドランプでは踏み跡の判別がつかない。それでもササが現れると、切り開きが尾根を西へ導いてくれた。
右手に「展望台」と記された小さな標識があり、これに従って踏み跡を離れると、尾根を跨いで北面の小さなガレ場へ出た。途端に釈迦ヶ岳などの展望が開けて、付近は明るくなる。しかし、まだ日は昇っていない。振り返ると南コブは黒々として、赤みを帯びた空の下にあった。(写真2)
踏み跡へ戻り、ササと雑木のなかを尾根に沿って西進する。高度を落とし、鞍部から登り直していると夜明けの時刻がやって来た。背後から日出の光が射し込むみ、ササや樹木をオレンジ色に照らす。その色の美しいこと。真横から射す光で、森の中が明るく輝いている。至福の時間がやってきた。しかし、その時間は短い。(写真3)
ハライド


やがて光の色も白く変わるが、まだ太陽の高度が低く、横方向から光が差し込む。歩くうちに尾根や踏み跡がときどき不明瞭になる。そんなところでは、何故かテープも少なくなったりする。何度か朝明側にガレが開けて釈迦ヶ岳の展望が得られた。そして地形図を確認することもなく、踏み跡を辿るうちにハライド山頂の東側に到着した。
前方の青岳から左へ国見岳、御在所岳、鎌ヶ岳、さらに雲母峰から伊勢湾へと展望が広がった。さらに、1分ほど歩くとケルンの積まれた山頂に到着し、釈迦ヶ岳から水晶岳方向の展望も広かる。(写真5、6)
藤内壁が明るく白い。御在所岳の東尾根下部には地蔵岩が見え、キレットや上部のクサリ場など、中道のルートを確認できる。流れる白い雲を見ながら、時間を過ごす。ときおり吹く風は、半袖のTシャツには少し寒い。
2時間余り鈴鹿中部の展望を見て過ごした。西の腰越峠へ降りると、ベニドウダンやヤマツツジがまだ綺麗だ。ケルン付近に高校生の団体が登ってきた。しかし、ちょっと人数が多すぎないか。早々に退散する。
腰越峠道
ケルンから進むと、朝明への道は右下。藤内小屋へは、少し登るようにして直進し、左へ降りる道を選択する。しばらく水平な道だが、突然左折して斜面を急下降し、源流部を横断してから同じ分を登り返す。さすがにこれは、肉体および精神のダメージが大きい。やがて小尾根に立つとハライドがよく見える。ここは記憶に残る場所だ。あとは三岳寺跡の鞍部まで良い道が続く。三岳寺には傾いた石段と御手洗が残るだけ。谷を対岸へ渡り、通い慣れた道を藤内小屋へ歩いた。
行程表
3:14 | 駐車場 |
3:53 | 風越峠 |
4:16 | 南コブ |
6:08 | ハライド(6:08-8:25) |
8:43 | 腰越峠 |
9:32 | 三岳寺跡 |
9:59 | 藤内小屋 |
10:43 | 蒼滝不動 |