鈴鹿:綿向山・雨乞岳・御在所岳
鈴鹿山脈を東西に横断する稜線を歩いた。朝の光があふれるイハイガ岳への稜線ではシカ達が群れ遊んでいた。もう一度ここを訪れたい。そんな気持ちになる一日だった。
- 登山日
- 2002年5月26日日曜日
- ルート
- 表参道-綿向山-イハイガ岳-大峠-清水ノ頭-雨乞岳-沢谷峠-御在所岳-御在所ロープウエイ
綿向山
近江鉄道・日野駅で「北畑口」行きの最終バスに乗った。終点から「西明寺口」バス停まで明るい月に照らされて歩いた。夏物のシュラフを被ってバス停のベンチで仮眠する。気が付くと月が西の空に移り、時刻は午前2時過ぎ。ちょうど良い時刻だ。



ヘッドランプと左手のLEDライトで歩くネオンサインと化す。LEDの白色光で照らす夜道は非現実的な様相を帯びる。それに対して、ヘッドランプの白熱球は炎の色合いだ。やはり、こちらの方が好ましい。夜の山の鬼神たちよ、願わくばこの姿に驚き、呆れ、気弱な登山者にチョッカイを出されませんように。
ジグザグに登る表参道の植林帯からは街の灯りが見え隠れする。やがて、西空に高度を落とした月が鏡のような水田に姿を映すようになった。風のない静かな夜だ。7合目の行者コバでは暗闇の中に不動明王と役行者の像が立っている。やはり薄気味悪い。
9合目付近の登山道からは、薄明のなか、湖東平野の展望が広がった。その向こうには赤く弱々しい月が靄の中に消えようとしている。最後に階段を登って山頂に立てば、東の空が赤みを帯て待っていた。(写真1:雨乞岳と鎌ヶ岳)
鎌ヶ岳から南へ続く鈴鹿の稜線を眺めながら日の出の時刻を待つ。送電線が越えている付近が三子山だろうか、鈴鹿峠以南の山が西に張り出している様子が良く分かる。やがて、イブネの稜線上に赤い光芒が現れて、ここ、綿向山の山頂まで光が届いた。しばらく、周辺が朝日に染められていく様子を見て時間を過ごす。(写真2)
イハイガ岳



ササの刈り込まれた道を竜王山方面へ歩くとシカが4頭、白いお尻を見せて東斜面へ逃げていく。消えかけた指導標があり、これに従って右折すると肩丈のササにおおわれるが、しばらくすると低いササになり歩きやすい道に変わった。(写真3:綿向山を振り返る)
左に琵琶湖を見ながら、展望の広がるササの稜線を東へ下っていく(写真4)。雨乞岳から北へ連なる山々を見て取れる。真正面の朝日が眩しい。早朝の闖入者に驚いてシカが次々と逃げていく。そんななかに気まぐれな1頭がいた。少し距離を置いて立ち止まり、こちらを見ている。デジカメを構えるが逆光でむづかしい(写真5)。そのうちヒトを観察することに飽きたのか、南の斜面へと消えてしまった。もう少しポーズを取っていてくれれば良かったのだが。
下り斜面の向こうにイハイガ岳が小さなピークを見せるようになった(写真6)。稜線は低いササ原や草原が続いて展望がよい。やがて尾根道になれば中高木の樹林へと姿を変えた。ときおり踏み跡が曖昧になるが、点々とテープマークが続いている。鞍部から雑木におおわれた急斜面を登ればイハイガ岳の山頂に到着した。三角点はあるが展望はない。綿向山と雨乞岳を示す古い標識がひとつあるだけで尾根上の通過点といった雰囲気だ。
イハイガ岳からの下りはブッシュを切り開いた道を急下降する。突然、右側に大きなガレが現れた。足元は粘土質で滑りやすく危険なので左のブッシュへ逃げて下る。道はこのガレ沿いに付いている。ガレが見えなくなり、しばらくで大峠に下り着いた。
清水ノ頭・雨乞岳



大峠から急斜面を登る。シャクナゲが多いが残念ながら花がない。ときどき現れるヤマツツジがせめてもの慰め。
南へ方向を転ずれば露岩があり、綿向山やイハイガ岳直下のガレを見渡せる。ヤブっぽい展望のない道だが、再度東へ方向を転ずる付近から、ゆったりとした樹林に変わった(写真7)。
1014mピークでは南側に植林帯が現れた。右にヌタ場を見て清水ノ頭へ登れば、樹林から明るいササ原へ飛び出した。背の低いササ原はどこでも自由に歩けそうだ。そして、山頂らしきところに「清水頭」の標識が一枚。(写真8)
雨乞岳の斜面に取り付くと露岩がいくつか現れる。倒れかけた木柱を見つけたが、最早、何が書かれていたのか分からない。(天之御中主命だったか。)振り返ると南面にいくつものガレをつけた清水ノ頭のササ原が広がっている。(写真9:清水ノ頭と綿向山)
この付近から登山道に背丈のササがかぶり、南雨乞岳まで苦しい登りになった。その南雨乞岳からは初めて目的地の御在所岳が望まれる。登山者の声が聞こえる雨乞岳山頂まで、ササのなかをひと頑張りの距離だ。
御在所岳

東雨乞岳から郡界尾根へ下りる。ササが切り開かれているが、やがて踏み跡は曖昧になる。下り着いた1014mピークには「三人山」の小さな標識があった。ここから踏み跡は消滅し、テープマークも見あたらない。黙々と歩いて明るい沢谷峠で座り込み、鎌ヶ岳から南へ連なる鈴鹿の山の展望を楽しむ。木の葉が風に揺れている。
ここから御在所岳までは、ちょうど1年前に歩いている。武平峠から雨乞岳への登山道を横断し、久しぶりに現れたテープマークを拾いながら道のない尾根を登る。僅かに咲き残ったシャクナゲを見つけた。最後に背丈を超すササのなかをがむしゃらに登って改装工事中の御嶽大権現の裏に飛び出せば、今日はデイパックを背負った親父さんが一人、こちらを覗き込んでいた。「こんなところに道があるの?」「ありません。だけど ...」
観光客で大賑わいの三角点で座り込む。膝が痛み出した。来週の山登りに影響が出ないようにロープウエイで下りることにする。ロープウエイ駅の土産物屋では、今年もツバメが巣を作っていた。
行程表
2:30 | 西明寺口バス停 |
4:21 | 綿向山(4:21-5:03) |
6:02 | イハイガ岳 |
6:40 | 大峠(6:40-6:47) |
8:08 | 清水ノ頭(8:08-8:15) |
8:54 | 南雨乞岳(8:54-9:06) |
9:22 | 雨乞岳 |
9:51 | 東雨乞岳出発 |
10:26 | 三人山 |
11:17 | 沢谷峠(11:17-11:27) |
13:11 | 御在所岳三角点 |