鈴鹿:御在所岳
平日の少し遅い時間帯に人の気配が薄い一ノ谷新道から御在所岳へ登った。一ノ谷新道を下降に使うことはあるが、登りに使うのは7年ぶり。手っ取り早く登れるが、あまり展望に恵まれないので敬遠していた。もう一度、ゆっくりと登ってみようと思った。
- 登山日
- 2003年9月30日火曜日
- ルート
- 一ノ谷新道-御在所岳-中道
一ノ谷新道


残暑も終わり、ここ数日は秋の到来を感じさせる快晴の日が続いている。東方海上を通過していった台風のためか、今日は風が強かった。
鈴鹿スカイラインの旧料金所に自動車を停めた。周辺には5台ほど置かれいる。もう、12時を過ぎてしまった。スカイラインを西へ2分歩けば中道の登山口に着く。鉄製の小橋を渡って御在所山の家の庭先に出る。建物の廻りを時計方向に半周すれば一ノ谷新道の道が始まる。
あえぎながら常緑樹が主体の尾根を登る。斜面から生えているようなキノコ型の岩をやり過ごすと、わずかだが山頂方向の展望が開けた。ロープウエイの白い鉄塔が遙か上方に見える。ここで下山してきた夫婦連れとすれ違った。今日、出会った唯一の登山者だった。
階段のように木の根が這いまわる道をぐんぐん登る。ときおり右手の樹間から中道を見られるので、どれくらい高度を稼いだのか推し量ってみる。

やがて尾根上に岩が現われて登山道は左側を巻いて行く。下山するときには気にならなかったが、左は切れ落ちており、ちょっと嫌な感じ。尾根上に戻ると右の展望が少しばかり開けて鉄塔やキレットが良く見える。かなり高度が上がった。(写真1)
山頂部から南下する尾根に登山道が達する付近から雰囲気が変わる。広葉樹が多くなった広い斜面を緩く登って尾根の西側を歩くようになると鷹見岩(だと思っている岩)に到着した。岩の根元からは全体像が判らないが、少し先で振り返ると岩に留まったタカのように見えなくもない。(写真2)
右上方に大黒岩を見て、中高木とササの登山道を急登する。(写真3)勾配が緩やかになり、ササの中の登山道が左へ緩くカーブしていくと、右に小さなザレ場がある。一ノ谷新道と分かれて、こちらへ入って登り、またササになった道を緩く降れば大黒岩に着く。

高度感がある大黒岩からの展望は抜群。陽に照らされた山頂南面の岩壁(写真4)を正面にして、足下には深い本谷。覗き込めば、ヘソの下あたりに例の感覚。目前をロープウエイの赤いゴンドラが通過していくが、平日とあって数は少ない。山頂駅では何か放送しているが良く聞き取れない。
途中まで引き返し、右へササの切開き道を登ると山頂駅の南側に出る。半ばササに埋もれたコンクリートの階段道を降って、山頂公園の遊歩道に降り着いた。
山頂駅
そのままロープウエイの山頂駅へ行った。観光客の姿はない。食堂も営業終了、片付けをする店員ばかりだ。2時30分の改札をするという放送が流れているので観光客はそちらへ行ったのだろう。今日は30分毎の運転らしい。そのうち係員が売店にやってきて、風が強いので運転を止めるかも知れないと声をかけてくれた。ちょうどその時、2人連れがやってきた。今日見た唯一の観光客だった。


朝陽台にも人影は無かった。山頂駅の屋上でペンキを塗っている作業員の声が聞こえてくる。富士見岩から中道へ降りようとする頃には、営業終了のアナウンスとともに「蛍の光」が聞こえてきた。紅葉の季節でにぎわうまで、平日の山頂公園はこんなものなのかも知れない。
中道



登山道に人の姿はない。しばらくは日陰で少し寒く、見下ろす藤内小屋もすでに日蔭に入っている。左には釈迦ヶ岳やハライド。そして、遠くには左端に鈴ヶ岳を乗せた御池岳が見えている。良く晴れていた。
展望のない急坂をキレットに降りると風が強い。写真を撮っていると吹き飛ばされそうだ。(写真7)
陽が傾むくにしたがって、見下ろす伊勢平野のコントラストがハッキリしてくる。地蔵岩(写真8)からオバレ石へ降る途中にある岩場はとても良い展望台だ。今日も、しばらく座り込んでしまった。
四日市の石油化学コンビナートと伊勢湾に浮かぶ船たち。左方では木曽三川が伊勢湾に流れ込んでいる。その向こうに霞んだ尾張平野はコンクリートの白っぽい色ばかり。そのなかに名古屋駅のツインタワーが突出して高い。
対岸の知多半島を右に追えば東海市・知多市のコンビナートから常滑市沖の埋立地にたどり着く。1年と5ヶ月後には中部国際空港が開港し、離発着する飛行機をこの鈴鹿の山から見ることになる。
オバレ石(写真9)では風が静かになった。見上げる岩は西日を受けて照り輝くようだが周辺はすこし薄暗い。そのとき、女性の話し声を聞いたような気がした。ゾッとして全身に鳥肌が立つような感覚。休日には登山者の往来が多い陽気な場所なので、今日の寂しい雰囲気が異様な感覚を誘い出したのだろう。そんなときは気を強くして通り過ぎる。
こうして、あまり汗をかくこともなく、晴天に恵まれて4時間余りの山行は終わった。一ノ谷新道は尾根道だが、ときおり中道を真横から見れることを除けば、鷹見岩までは展望に向かない。
行程表
12:14 | 御在所山の家 |
13:55 | 大黒岩(13:55-14:06) |
14:18 | 山頂遊歩道に降り立つ |
14:55 | 富士見岩・中道下降口 |
16:36 | 鈴鹿スカイライン登山口 |