1. 鈴鹿山脈/登山日記

  2. 山行記録の向こう側
  3. アカヤシオ

アカヤシオ/鈴鹿山脈・御在所岳周辺にて

目次

写真1 アカヤシオ 2005.04.24 御在所岳・オバレ石付近にて写真2 アカヤシオ 2007.05.03 国見岳・ヤシオ尾根にて

山麓でサクラが終わる四月中旬、三重県菰野町の御在所岳中腹ではタムシバに一週間ほど遅れてアカヤシオが開花する。花は三重県側の標高650m付近で咲き始め、連休には御在所岳の山頂部で見頃になる。

アカヤシオの花は、何時、何処で、どの様に咲くのだろうか。ここは、そのような思いを持って鈴鹿の山々を歩いた記録の置き場所です。

  1. アカヤシオの花
  2. 御在所岳周辺での分布
  3. 御在所岳・中道登山道の開花前線
  4. アカヤシオの隔年開花
  5. 近年の開花状況
  6. 山行記録
  7. 御在所岳登山道の状況
  8. 参考(リンク集)

1 アカヤシオの花

写真3 アカヤシオ 2011.05.08 国見岳にて写真4 アカヤシオの種子

アカヤシオ(赤八汐、赤八染)はツツジの仲間。樹髙は3~5mで落葉性、直径5cmほどの薄紅色の花を咲かせる。

その花芽は前年に形成されたもの。雪の季節には越冬芽になって春を待ち、気温上昇とともツボミを膨ませ、新葉の展開前に開花する。

毎年、アカヤシオの開花に一喜一憂させられている。何故なら年により開花の様相が大きく異なるからだ。時折、大開花と呼ぶべき年が訪れる一方で、降雪を伴う寒波で山頂部の花が全滅する悲運の年もある。

花の跡に残された実はやや細い卵形。十月頃まで緑色だが翌月には褐変し、五裂して細かな種子を落とす。アカヤシオは挿し木による増殖が困難であり実生で増やすとのこと。

三重県レッドデータブック2015では準絶滅危惧種とされ、「園芸用花木としての採取圧や林道改修などの人為圧により減少している」と記載されている。盗掘が趣味という哀れなヒトの出没が残念だ。花咲く登山道をいつまでも残したいと願っている。

2 御在所岳周辺での分布

写真5 アカヤシオ 2007.05.03 国見岳・ヤシオ尾根にて写真6 アカヤシオ 2007.04.30 鎌ヶ岳・三ツ口谷左岸尾根にて

御在所岳では、アカヤシオは三重県側に多く分布する。滋賀県側は県境近辺や上水晶谷の地獄谷出合近辺までしか見られないようだ。園芸関係の情報では、ツツジは日当たりと水ハケの良い土地や酸性土壌を好むらしい。この偏ったアカヤシオの分布は御在所岳の地質によるものか。

なお、標高が低い湯の山温泉などの山麓部ではアカヤシオを見ない。御在所岳の中道登山道や東尾根では標高650m、鎌ヶ岳の長石尾根では600m付近が下限のようだ。

花見登山で良く歩くのは次のルートだ。

  1. (1)御在所岳の中道登山道
  2. (2)国見岳北面の県境登山道やヤシオ尾根
  3. (3)鎌ヶ岳のいくつかの東尾根
  4. (4)ロープウェイでも登れる御在所岳の山頂部

急峻な斜面に咲くアカヤシオを見ながら登る中道登山道は爽快。国見岳北面では賑やかに咲く。鎌ヶ岳の東尾根(長石尾根、馬ノ背尾根)の緩やかな勾配の登山道は、時期が良ければ延々と続く花咲く尾根を楽しめる。

3 御在所岳・中道登山道の開花前線

アカヤシオの開花前線は三週間ほどで御在所岳の斜面を登り山頂部に達する。下図は中道登山道での開花前線の推移を観察したもの。縦軸は標高値(m)、横軸は月日、中道の範囲は標高1180mの富士見岩までとした。当然、花盛り状態のアカヤシオは開花前線より150mくらい下になる。なお、中道の700~800mの常緑樹帯では登山道直近にアカヤシオを見ない。また、朝陽台など山頂部の開花日は、グラフを1180mまで外挿して得られる日よりは2~3日早くなる。日照条件など違うので当然だろう。

山頂部のアカヤシオは概ね連休に見頃になるが、その時期は年により前後する。開花時期や開花前線の上昇速度は、明らかに四月の気温に依存しているように思われる。適当な観測値を入手できないので滋賀県土山の観測値を下表に示す。

アカヤシオの開花前線図(御在所岳・中道登山道)

気象データ(滋賀県土山)

土山御在所岳山頂サクラの開花日
3月4月4月
平均気温下旬の最低気温下旬の最低気温
下旬上旬中旬下旬観測日気温観測日気温彦根名古屋
20065.58.210.810.726日1.421日-2.04月6日3月26日
20078.78.110.112.822日0.227日0.33月30日3月23日
20087.99.211.913.526日3.925日0.33月30日3月22日
20095.69.214.211.428日1.527日-2.03月28日3月19日
20105.110.010.310.825日0.124日-1.94月1日3月18日
20114.68.810.111.221日0.424日-0.34月1日3月27日
20126.27.212.315.628日5.022日2.94月8日3月30日
20137.310.710.610.622日-0.622日-3.73月30日3月19日
20149.09.310.713.824日3.122日3.34月2日3月24日
20158.010.511.915.726日5.328日0.43月31日3月21日
20167.412.812.014.530日3.2--3月30日3月19日
20176.511.212.312.723日3.0--4月5日3月28日

※土山の気温は滋賀県甲賀市土山(標高263m)の観測値を気象統計情報(気象庁)から引用した。平均気温は旬毎の日平均気温の平均値。※御在所岳山頂の気温は、三重県の大気の状況(三重県)の「大気環境監視データ提供」から引用した。※サクラ(ソメイヨシノ)の開花日は各地方気象台の生物気象観測による。

開花前線は概ね三週間で標高差500mを登っている。この開花前線を駆動しているのは当然ながら気温上昇だろう。土山の平年値によれば、平均気温は三週間(4月10日~30日)で10.2℃から13.9℃まで3.7℃上昇している。一方、御在所岳の平均気温減率が公表されており(関谷不二夫,2015)、図から読み取った四月の値-0.77(℃/100m)を使用すれば標高差500mは気温差3.9℃に相当し、三週間の平均気温の上昇とほぼ一致する。

引用:関谷不二夫."鈴鹿山脈御在所岳における気温減率について".第7回日本気象予報士会研究成果発表会予稿集.2015.

開花時期や開花前線の上昇速度がその年の春の気温に影響されるなら、開花する花の数は何に影響されるのだろう。前年の夏から秋に花芽が形成されるなら、花の数、すなわちアカヤシオの表年・裏年は前年に決定されているのだが。

4 アカヤシオの隔年開花

写真7 アカヤシオ 2009.04.18 御在所岳にて写真8 6裂したアカヤシオ 2007.04.30 三ツ口谷左岸尾根(日蔭尾根)にて

アカヤシオの開花は表年・裏年を繰り返すように見える。表年にはタムシバや翌月に咲くシロヤシオ、ベニドウダン、サラサドウダンなど他の花樹も良く咲くが、裏年にはアカヤシオや他の花樹も花の密度が落ちて寂しくなる。

しかし、この隔年開花のリズムは2013年に崩れたように見える。隔年開花を意識した2005年以降、御在所岳では奇数年が表年だった。しかし、2013年は表裏が曖昧、2014年は良く咲き、2015年は裏年となった。表裏のリズムが逆転したようだ。

逆転の契機となった2013年の気象観測データを振り返ると、暖かい四月上旬に対して、下旬は気温が上昇せずに酷い寒波に襲われている。ツボミは多かったが、気象条件が整わずに準備されていた表年はキャンセルされてしまったようだ。(山行記録:御在所岳 2013.04.21

隔年開花の原因は見当もつかない。アカヤシオの個体が隔年開花することは理解できなくもない。気象条件が影響を与えるのならば、同種間での同調もあるだろう。しかし、開花時期まで異なる異種間でも開花が同調するように見える理由は何処にあるのか。

なお、アカヤシオの隔年開花は、少なくとも御在所岳、国見岳、鎌ヶ岳の範囲で同調しているように見える。しかし、部分的に同調外の場所があるかも知れないと疑われる開花状況に出合うことがある。

5 近年の開花状況

御在所岳・中道登山道での近年の開花状況は次のとおり。表年、裏年の判断は主観的なものです。四月下旬に降雪を伴う強い寒波で花やツボミが全滅したり傷んだりしなければ、表年には良い花見登山を楽しめる。2005年、2011年は良い年だった。

  1. 2006:裏年。そのうえ、積雪を伴う寒波により山頂部のアカヤシオは全滅。
  2. 2007:表年。開花が遅れ、山頂部の見頃は連休終盤から翌週前半。
  3. 2008:裏年。
  4. 2009:表年か。高温による早咲きと、降雪を伴う寒波で上部のアカヤシオは全滅。
  5. 2010:裏年。
  6. 2011:表年。開花が遅れた。2005年以降で最も良く咲いた。
  7. 2012:裏年。
  8. 2013:曖昧。隔年開花のリズムが崩れた。気象条件が悪く、表年はキャンセルか。
  9. 2014:表年。同調しなかったシャクナゲも含めて春・初夏の花樹は良く咲いた。
  10. 2015:裏年。
  11. 2016:表年。開花が早かった。
  12. 2017:裏年。開花が遅れた。

6 山行記録

写真9 アカヤシオ 2011.05.14 御在所岳・中道登山道北面
  1. 2003.04.29 鎌ヶ岳・御在所岳
  2. 2004.04.29 鎌ヶ岳・御在所岳
  3. 2005.04.30 鎌ヶ岳・御在所岳
  4. 2006.05.04 仙ヶ岳・野登山
  5. 2006.05.06 国見岳・御在所岳
  6. 2007.04.30 鎌ヶ岳・御在所岳
  7. 2008.04.20 御在所岳・弥一ヶ岳(長石尾根)
  8. 2009.04.29 御在所岳
  9. 2010.05.01 御在所岳・鎌ヶ岳
  10. 2011.05.05 ハライド・国見岳・御在所岳
  11. 2011.05.08 御在所岳・国見岳
  12. 2013.04.21 御在所岳
  13. 2014.05.10 国見岳・御在所岳

以上は、山行記録(日付順インデックス)からアカヤシオの開花時期のものを幾つか抜粋した。

7 御在所岳登山道の状況

写真10 アカヤシオ 2011.05.14 御在所岳三角点にて写真11 アカヤシオ 2011.05.14 国見岳にて

御在所岳の主要な登山口となる鈴鹿スカイライン(国道477号)は、例年なら四月上旬まで冬季閉鎖される。また、大雨や災害復旧工事で閉鎖されることも多い。(四日市建設事務所菰野町観光協会三重県道路規制情報日本道路交通情報センター

御在所岳の登山道はどれも「遊歩道」ではない。中道、一ノ谷新道は「中級」に分類され、裏道、表道、武平峠からの峠道も体力とそれなりの準備が必要だ。死亡を含む遭難事故は珍しくない。登山者数は裏道、中道、峠道が多い。表道、一ノ谷新道では登山者に余りで出合わない。

なお、御在所ロープウエイを利用して山頂へ行けるが、強風時は運休し、山頂の駅舎は閉鎖されて登山者は立ち入れないことがあるので要注意。下山に利用したくても、駅舎にさえ入れないことがあった。運休日数などは安全報告書で公表されている。例年、定期工事による運休が6月にあるが、2018年に開業の展望レストラン工事のため、運休などあるかも知れない。要事前調査。

8 参考(リンク集)

御在所山(マピオン)
三重県レッドデータブック2015
質問:桜の花芽形成について(日本植物生理学会、1170)
質問:狂い咲きについて(日本植物生理学会、1140)
質問:開花と樹勢の関係(日本植物生理学会、1819)
質問:柿の隔年について(日本植物生理学会、1844)
質問:どんぐりなどの結実の周期(日本植物生理学会、1923)
質問:サツキ・ヒラドツツジの咲き分けについて(日本植物生理学会、2186)
質問:ウメとサクラの開花する時期について(日本植物生理学会、2405)
質問:表作と裏作の要因(日本植物生理学会、2557)

(作成 2008.08.16、更新 2017.05.06)