パーキンソン病(PD)
e. 違いがわからなかったことばたち(1)・・・「パーキンソン」と付くことば編
これらのことばの違いがなかなか理解できませんでした。「パーキンソン病症候群」ではなくて、「パーキンソン症候群」なのだということも最近漸くわかったほとです。
- パーキンソニズム
- c,dで述べてきたパーキンソン病でみられる症状(振るえ、固縮、動作緩慢、小刻み歩行など)を総称して「パーキンソニズム」というそうです。「症状」を表すことばで、「疾患名」ではないとの説明されています。(「参考文献1」10ページ)
- パーキンソン病(本態性パーキンソン病、本態性パーキソニズム)
- 私たちが思うように手足を動かすことができるのは、大脳の中枢神経から出された運動の指令(情報)が、大脳の中央部にある「線条体(せんじょうたい)」という運動機能の司令塔を経て、神経細胞によって、正しく筋肉にまで伝えられるからですが、この線条体からの指令の発信に重要な働きをしているのが、脳の中脳の「黒質(こくしつ)」で作られる神経伝達物質の「ドーパミン」です。
線条体にはもう一つ「アセチルコリン」という神経伝達物質があって、ドーパミンには体を動かそうとする働きが、アセチルコリンには体の動きをおさえようとする働きがあり、この二つの力のバランスが保たれることによって、思ったように体が動くわけです。
「パーキンソン病」は、脳の黒質の神経細胞が減少し、ドーパミンの生産量が不足するために、線条体内に供給されるドーパミンの量も減って、二つに力のバランスが崩れ、体を動かそうとする力が動きをおさえる力を下回ったときに起きる病気です。
パーキンソン病の診断では、似た病気と区別するために、血液検査、頭のCT検査とMRI検査が行われますが、パーキンソン病の特徴は、これらの検査では異常が見つからないこと、すなわち、神経細胞減少の原因がわからないことです。
この原因がわからないという点から、「パーキンソン症候群」と区別して、「本態性パーキンソン病」または「本態性パーキンソニズム」という呼び方が使われることもあります。
40〜50歳の中年以降での発病が多いですが、幅広い年齢層にいて、40歳以下で発症するものを特に「若年性パーキンソニズム」と言われる場合もあります。
なお、神経細胞が減少することを、医学用語では「神経変性」と呼ぶようで、「パーキンソン病は「神経変性疾患」の一つ」などど表現されることがあります。 - パーキンソン症候群(症候性パーキソニズム)
- パーキンソニズムの症状の原因が明らかなものを総称して、「パーキンソン症候群」または、「症候性パーキンソニズム」と呼ばれています。パーキンソニズムの症状の原因が明らかになっているのが特徴です。
ただし、原因も様々なようで、脳血管障害によるもの、薬の副作用としておこるもの、パーキンソン病以外の神経変性疾患(進行性核上性麻痺[しんこうせいかくじようせいまひ]、線条体黒質変性症[せんじようたいこくしつへんせいしよう]、シャイ・ドレガー症候群など)によるものなどが知られています。
発症初期の段階で、本態性パーキンソン病なのかパーキンソン症候群のいずれかなのかを鑑別(みきわめ)するのは専門医でも難しいとのことで、とにかく患者として大切なことは、ほかの病気にかかっていないか、別の薬を飲んでいないかを、医師にきちんと伝えることだといえそうです。 - 三つを整理すると、『パーキンソニズム』という概念(症状)のもとに、症状の原因で明らかでない「パーキンソン病(本態性パーキンソン病)」と症状の原因が分かっている「パーキンソン症候群」という二つの病態があり、パーキンソン症候群には、さらにその原因によって、いくつかの病気が含まれているということでしょうか。
- パーキンソン病関連疾患
- これは、上の三つとは別の概念で、特定疾患治療研究事業制度の改正を経て、広く認識されるようになったことばです。
2003年(平成15年)10月1日から、同事業の対象疾患として、「進行性核上性麻痺[しんこうせいかくじようせいまひ]」と「大脳皮質基底核変性症[だいのうひしつきていかくへんせいしょう]」が加わったときに、昭和53年10月1日から指定されていた「パーキンソン病」にこの二つを加え、「パーキンソン病関連疾患」として一つの疾病番号が付けられました。
このページについてのご指摘・アドバイスをお待ちしています。peisuke@gmail.com までお願いいたします。
All Rights Reserved,Copyright ©2007 peisuke