パーキンソン病(PD)

f. 違いがわからなかったことばたち(2)・・・「ドーパ」と付くことば編 +基本の6種類の薬たち

  こんな分類は変かもしれませんが、自分にはわかりやすいので。

ドーパミン
  中脳の「黒質(こくしつ)」で作られる「神経伝達物質」(神経と神経の間の情報の受け渡しを担う物質のこと)の一つで、「黒質」から大脳の「線条体」に伝わって、私たちが自分の意思で行う運動(随意運動)に関わる重要な働きをしています。
  「線条体」は運動機能の司令塔のようなところで、もう一つアセチルコリンという神経伝達物質があり、体を動かそうと働くドーパミンと体の動きを抑えようと働くアセチルコリンの二つがバランスよく保たれることで、運動の指令が正しく筋肉に伝わっていきます。
  パーキンソン病は、このドーパミンを作る黒質の神経細胞が徐々に減っていって、線条体にドーパミンが十分送れなくったために、線条体での二つの神経伝達物質のバランスが崩れて、症状が起こることがわかっています。ドーパミンが作られる量がおおむね正常の5分の1程度まで少なくなると症状が出るそうです。
  しかし、なぜ黒質の神経細胞が減少するのかその原因はわかっていません。そのことから、原因不明で治療方法が確立していない難病の一つとして特定疾患に認定されているわけです。
L-ドーパ
  ドーパミンの前駆物質(ぜんくぶっしつ)で、脳内で変化して結果的にドーパミンになり、不足しているドーパミンを補います。パーキンソン病の基本の6種類の薬の中で、最も中心的な用い方がされるものです。
  ドーパミンはそのまま飲んでも脳に入っていかないそうで、代わりに、脳に入ってからドーパミンに変わるがL-ドーパが薬として使われるのです。
  治療薬として紹介される場合は、「L-ドパ製剤」、「レボドバ」、「ドーパミン補充薬」と表現されることもあります。
  L-ドーパが含まれる薬には、L-ドーパだけの「単剤」と、L-ドーパにL-ドーパを飲んだときに体内でL-ドーパが分解されるのを阻害する薬とを組み合わせ、L-ドーパの脳への移行を容易にし、胃腸障害なども少ない「合剤(配合剤)」の二通りがあるようで、この組み合わされるほうの薬のことを「末梢性ドーパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)」と言います。むずかしくて覚えられません。
ドーパミンアゴニスト
  線条体のドーパミンを受け取る場所(ドーパミン受容体)を刺激して、ドーパミンが分泌されたときのように、その働きを高めます。
  基本の6種類の薬の中では、L-ドーパとともに、中心的な薬剤として用いられている薬です。特に、2002年(平成14年)に作成された日本神経学会のパーキンソン病治療ガイドラインの中で、早期治療の進め方として、ドーパミンアゴニストでの治療を選考させることが推奨されて以降、その利用が進められている薬です。
  L-ドーパに比べると、薬の効果が現れるのに時間はかかりますが、症状の日内変動や不随意運動(これらについては独り言 g を見てください。)といった症状が出にくいという利点があるからだそうです。2006年11月に参加したパーキンソン病に係る学術講演会でも、「70歳未満での発症はドーパミンアゴニストから、70歳以降ではL-ドーパからというのが今の基本的な使われ方」との話を聞きました。
  「ドーパミン受容体刺激薬」、「ドーパミン作動薬」という名前が使われることもあります。
ドーパミン放出促進薬
  基本の6種類の薬の一つです。
  中脳の「黒質」に働きかけ、神経細胞からのドーパミンの放出を促進します。

 ここでパーキンソン病の基本の6種類の薬について整理しておきましょう。

基本の薬剤名 主な働きと副作用 主な製品名
L-ドーパ
(L-ドパ製剤、レボドパ)
<主な働き>
脳内でドーパミンに変わり、不足しているドパミンを補います。
パーキンソン病治療の中心的な薬。
<主な副作用>
吐き気、食欲不振、不随意運動、幻覚、妄想
(L-ドーパの長期の服用に伴う副作用については、独り言 g を見てください。)
♠レポドパ単剤
ドパストン
ドパール
ドパゾール

♠レポドパとDCIの合剤(配合剤)
ネオドパゾール
イーシー・ドパール
マドパー
ネオドパストン
メネシット
ドーパミンアゴニスト
(ドーパミン受容体刺激薬、ドーパミン作動薬、ドーパミン補充薬)
<主な働き>
線条体のドーパミンを受け取る場所(ドーパミン受容体)を刺激して、ドーパミンが分泌されたときのように、その働きを高めます。
  L-ドーパと並んで、パーキンソン病治療の中心的な薬。
<主な副作用>
吐き気、食欲不振、眠気、めまい、幻覚、眠気
(ドーパミンアゴニストによる眠気、突発的睡眠については、独り言 i を見てください。
♠麦角系ドーパミンアゴニスト
ペルマックス
カバサール
パーロデル

♠非麦角系ドーパミンアゴニスト
ビ・シフロール
ドミン
レキップ(2006年12月発売開始)
ドーパミン放出促進薬
(塩酸アマンタジン)
<主な働き>
中脳の「黒質」に働きかけ、神経細胞からのドーパミンの放出を促進します。
<主な副作用>
幻覚、譫妄、不眠、足のむくみ、皮膚に紫色の網の目模様ができる
シンメトレル
抗コリン薬 <主な働き>
線条体からの指令を受け取る神経細胞のアセチルコリン受容体の働きを抑えることにより、、ドーパミンとアセチルコインのバランスをよくします。
<主な副作用>
口・のどの渇き、尿が出にくい、便秘、幻覚、譫妄(せんもう)
アーテン
アキネトン
パーキン
MAO−B阻害薬
(モノアミン酸化酵素阻害薬)
<主な働き>
ドーパミン分解酵素であるMAO−B(モノアミン酸化酵素B)をの働きを抑え、ドーパミンの作用時間を長くします。
<主な副作用>
吐き気、食欲不振、不随意運動、幻覚
エフピー
ノルアドレナリン補充薬
(ドロキシドパ)
<主な働き>
病気の進行とともに減少するノルアドレナリンを補い、すくみ足や立ちくらみなどを改善します。
ドロキシドパはノルアドレナリンの前駆物質で脳内でノルアドレナリンに変わります。
<主な副作用>
吐き気、頭痛・頭が重い、血圧上昇、幻覚、妄想
ドプス

 パーキンソン病の薬についてのくわしい情報は、リンク集2で紹介している「バーチャルパーキンソン病センター」の「薬局」のページとリンク集3で紹介している各リンクサイトを、パーキンソン病治療ガイドラインについては、リンク集4の日本神経学会のサイトをご覧ください。

 2007年4月から発売開始された新しいタイプのパーキンソン病治療薬『COMT−阻害薬」については、独り言s を参照してください。

なお、「参考文献2」などによると、幻覚、妄想、せん妄の違いは次のとおりです。
幻覚・・・外部からの刺激がないのに、あたかもあるかのように知覚されること。平たく言うと、実際にはないものが見えたり、聞こえたりすること。そうした症状を主体にして妄想が加わったのが幻覚症だそうです。
妄想・・・異常な確信で、非合理的、非現実的な内容を持つこと。事実と異なった観念や信念にとらわれてしまう症状。
譫妄(せんもう)・・・外界に対する認識が濁り、錯覚が多い状態。妄想が生じたり、うわごとをいったりする場合もあります。

さらに、薬の副作用に関して忘れていない点に、悪性症候群にならないようにすることがあります。独り言p を参照してください。

 ←独り言の目次に戻る  |  独り言 gへ→

↑ページの先頭へ

 このページについてのご指摘・アドバイスをお待ちしています。peisuke@gmail.com までお願いいたします。