鈴鹿:大杉竜王・比婆神社
鎌刃城跡を経由して、彦根市の廃村・武奈、男鬼の周辺を舗装された林道歩きで巡り、大杉竜王、比婆神社を訪ねた。所要時間を読めず、ほぼ休憩なしで歩いている。
- 登山日
- 2025年12月22日月曜日
- ルート
- 番場-鎌刃城跡-大杉竜王-武奈-男鬼-比婆神社-イワス-鳥居本
鎌刃城跡
米原駅東口で8:07の米原工業団地線(東レ・カーボンマジック行)のバスに乗り、番場バス停で下車した。
東に蓮花寺の参道、西に六波羅山を見て中山道の番場宿を南下する。八葉山蓮花寺は北条仲時の一族郎党432名が自刃という史実が重くて立ち寄りがたい。鎌刃城公式サイト「北条仲時の墓」2020.10.03によれば、その北条仲時の墓は六波羅山にあるとのことだが、今日は立ち寄る余裕がない。
さらに歩けば道路西側に駐車場と鎌刃城跡の案内図があるので、ここで左折し、名神高速道路の扉を開閉して山道へ入る。竹林から植林へ変わり、時々は朝日で明るくなる歩き良い道だ。尾根に上がるとクマ避けの鐘があるので叩いてみる。昨年3月に下山に使った道が右から合流し、鎌刃城の下端にある堀切に到着した。
登れば琵琶湖が見える尾根上に曲輪跡が続き、「やぐら」が主郭の手前に組まれている。良く整備された城跡だ。上部の南郭から尾根を登るが、堀切があるのでさすがに歩き難い。ここから舗装された滝谷林道に飛び出せば、周辺は旧番場村の地内で比較的平坦な場所になる。
滋賀県立図書館に明治初期の番場村の地図2枚がある。『近江国坂田郡百三十三ヶ村之内耕地絵図 近江国阪田郡番場村』の右下には「鎌ノ刃元頼公古城」や「龍之岩」が見え、前者は畑になっている。後者は竜宮山だろう。
また、『坂田郡番場村絵図』の右下にある付け足しの地図は「長坂山立会」として肥草苅場と書かれ、畑とともに向ヶ嶽、男鬼、明幸、武奈、判読しがたいものがあるが、おそらく菅ヶ窪、松窪、柳峠などの地名がある。
鎌刃城跡の資料は、米原市発行のトレッキングマップに『鎌刃城トレッキングマップ』がある。
地図の大きさ:600×150 600×600 説明:地図表示について
赤線:ルート、
:番場バス停、
:鎌刃城跡(やぐら)、
:大杉竜王、
:石仏(三体)、
:比婆神社、
:イワス、
:鳥居本駅
マイリ
大杉竜王へ行くために林道を東へ歩くと北側山林で作業道の開設工事がされている。直ぐ米原市・彦根市の境界になり、番場から武奈の地内へ入ると林道は地形図にある窪地を横断する。東には、さらに大きな窪地があるが何れもドリーネなのだろう。現状は成長した植林なので地形は判然としないけれど。
上図は地理院地図に昔の航空写真(1961~69)を表示したもの。ドリーネ内部など林道沿いの各所に畑があったことを知れる。
この地方のドリーネについては、『地学雑誌』30 巻 (1918) の6号、7 号に新帯國太郎の『近江のカルスト』前編と『近江のカルスト』後編がある。ドリーネは語源不明ながら「ニエリ」とか、水が舞い入ることから「マイリ」と呼ばれるとあり、後編に武奈のマイリについて幾つかの記述がある。
例えば、青龍の滝の水源である「水汲みのマイリ」は前記『坂田郡番場村絵図』の付け足し部分左端に青く「水汲み◯◯◯」と書き込まれているものだろう。また。同図書館の『近江国坂田郡百三十三ヶ村之内耕地絵図 近江国阪田郡明幸村・武奈村』にはすヶ久保、松ヶ久保の地名が見える。
大杉竜王
今日は所用時間の想定に自信がないので先を急いだ。林道が東から南西へ方向を変える所には現役の畑が残っている。植林から畑跡の荒れ地に変わると周辺が明るくなる。


道路脇に良く実ったカキ2株が見える。「何か」がいないことを確認して進めば交差点になり、大杉竜王の案内図が置かれている。広域林道を離れて、地形図の黄色い舗装道(県道)へ入る。広域林道は男鬼峠へ行くが、何故かこの交差点付近は地形図に広域林道が書かれていない。
畑跡の荒れ地から左に伊吹山を見て歩き、日陰の肌寒い植林へ入って左折、寂しい植林を狭いコンクリ舗装道を歩いて大杉竜王へ到着した。彦根土木事務所武奈中継局の小さな施設がある。奉賛会名義の掲示板には「北原(きとら)竜宮 大杉竜王」とあり由緒書が張り出されていた。「大杉神社」の名称は見当たらない。



うねうねと枝を伸ばしたスギの大木がある。一部の枝は枯れているようだ。何故にこんな姿になったのやら。カレンフェルトが周辺に散在し、参道側には向山方面が見える。周辺は整備されているが、何やら置かれて裏庭のような雑然とした感じだ。
大杉神社について、Mixi に『大杉さん』(2010年開設)が残っている。本文とフリガナが混じって読みにくいが由緒書と同系統の内容で、三神(植物・動物・人間(皇祖初代・伊邪那岐尊))を祀っているとのこと。ウエブサイト www.kitora369.org は閉じているが Internet Archive に残っている。例えば、『大杉神社』(2021年4月)で、この神社は「『伊邪那岐尊』の御霊処(お墓)」とある。
『スピリチュアルのリアル』(国立国会図書館書誌)には、大杉神社奉賛会から神社のお世話を引き継いだスピリチュアルの人からの聴き取りとともに、大杉神社に「もともと祀られていたのは同地の鎮守神」との引用がある。なお、書籍のもとになった学位論文『精神世界再考 : 新潮流としての「霊性にかんする協働組織」の研究を中心に』(伊藤耕一郎,2021,関西大学学術リポジトリ)は閲覧可能だ。
「北原」は地名だろう。『近江国坂田郡志』(国立国会図書館)の鳥居本村大字武奈に小字名としてある。なお、同書にはスガクボ、松ヶ久保、西ヶ久保、久保ノ谷、穴ノ谷、久保ノ山など、マイリ関係と思われる小字名が並んでいる。大規模なドリーネや暖斜面で畑作がされていた山村はどんな風景だっただろうか。
武奈・男鬼
林道を歩いて廃村・武奈へ入る。谷間の北側斜面に陽光を受けた民家が並ぶが、何れも傷んでいる。道を東へ入ると北側に整備された石段が見えたので行くと神社があった。神明宮だろう。


明幸集落へは入らずに林道を男鬼へ向かうと、旧道から集められたのか道路脇に石仏らしいもの三体を見た。生花がお供えになっている。
男鬼も民家が傷んでいる。2004年に訪れたとき(鈴鹿:比婆之山 2004-12-18)には映画のロケに使われていたが、現在はまともに維持されている建物はなさそうだ。「男鬼町自然の家」は立入禁止の表示がある。近年まで何処かの大学のネタ(Internet Archive)に使われたようだが廃村の有様には違いない。集落内の日枝神社を参拝して比婆神社に向かった。
比婆神社
比婆神社の鳥居からコンクリ舗装の車道を登るが、ほとんど休みなしで歩いているので疲れてしまった。立ち止まっておにぎりをひとつ。すると、参詣者一人を乗せた自動車が上がってきた。鎌刃城跡で後方から来たハイカー1人、番場の作業道開設の現場付近で作業員1人を見ているので、本日3人目の人だ。
車道終点では北風が冷たいので山シャツを着て社殿前へ行く。男鬼の入口にあった由緒書は薄れているが、祭神が「伊邪那美大神」であることを何とか読み取れる。
比婆神社については、石の写真家・須田郡司さんが書いたものがある。オンラインショップの読み物だが『巨石ハンターの磐座探訪 その3「近江國・湖東の磐座」』
比婆神社の銅板が盗まれたとの記事が『ウッスンの「B級紀行」』にある。罰当たりな振る舞いをする人がいるものだ。橋の銘板や林道の水路にあるグレーチングがなくなったことを見ているが、神社にまで手を出すとは。
イワス
舗装道路を離れて比婆之山へ登り、北近江線177号の赤白鉄塔経由でイワスへ。疲れたので僅かな登りでも大変につらい。
石灰鉱山跡へは滋賀鉱山による新しい立入禁止の標識があるので引き返した。かつては石灰石を西側のイブキ経由の架線で彦根のセメント工場へ輸送したとのこと。『今昔マップ』の1954年にその架線が見える。当然、その下を通過することになった東海道新幹線や名神高速道路には防護工が設けられた。(一部のみだが中日新聞)
イワスからは下るだけ。5~6頭のシカが横断していく北尾根を目印を拾って男鬼峠の林道へ下り、仏生寺集落へ向かう。疲れたのでイブキは諦めた。途中で天津神社の上社に立ち寄るつもりだったが道は崩れたのか見当たらない。危ないのでこれも諦める。『今昔マップ』には荘厳寺町から上社と不動明王への破線路が見えるが現状を知らない。
滋賀県立公文書館の『坂田郡神社明細帳』には、武奈に神明宮、明幸に若宮神社、男鬼に日枝神社が鎮座している。また、荘厳寺の天津神社とその上社だろうか。大杉神社や比婆神社は見つからない。明治期の行政文書だ。
南北に歩く林道は西日で暖かかったが、仏生寺まで下りると風が冷たい。なんとか日没前に鳥居本駅に到着できた。どうにも体力が足りない。
ようやく武奈や大杉神社を歩くことが出来た。歩きたい場所のリストはあるが、良い季節や祭事などタイミングを選びたいものが多く、なかなか片付かない。体力や交通費の問題もあるが、自宅から近い御在所岳ばかりではつまらない。元気があるうちにリストの短縮に努めましょう。
行程表
| 8:18 | 番場バス停、出発 |
| 8:30 | 鎌刃城跡登山口・駐車場、出発 |
| 9:05 | 鎌刃城跡、到着 |
| 9:34 | 滝谷林道に出る |
| 10:43 | 大杉竜王(10:43-11:01) |
| 11:23 | 武奈(11:23-11:34) |
| 12:26 | 男鬼(12:26-12:41) |
| 13:22 | 比婆神社(13:22-13:32) |
| 14:02 | イワス(14:02-14:09) |
| 14:36 | 男鬼峠 |
| 16:18 | 鳥居本駅 |