第三者評価・講評
2018年 海の星カトリック幼稚園は 第三者評価を実施し、☆☆☆(高水準)と評価されました。
評価者は 三重大学教育学部特任教授 須永進氏です。
文部科学省「幼稚園における学校評価ガイドライン(平成23年度改訂)に示された事項から、主要なものを選定し、
聞き取り調査、アンケート調査、書類・記録等による実施調査を行い、
その結果を分析し、総合的評価をいただきました。
以下に評価・講評を公開します。
なお、第三者評価の報告書の写しは、2018年12月、四日市市子ども未来課に提出しました。
1.組織運営等の状況について | |
評価項目 ☆☆☆・高水準 ☆☆・平均的水準 ☆・要水準の向上 |
講 評 |
①設置者の示す明確な教育方針等に基づいて教育目標を設置し、教育活動その他の学校運営を行っているか
(☆☆☆) |
本園について、カトリックの教えに基づいた幼児教育を行うことを教育方針として、それに基づいて教育目標を定めている。思いやりの心、感謝する心、豊かな個性を育てる教育方針に沿って、教育目標が立てられ、さまざまな教育活動で実践されている。特に遊びの体験と人とのかかわりを通してやさしさを学んだり、基本的な体験を豊かに育むなどの活動により、その教育目標の達成に努めている。また、園長による「かみさまのお話」では、カトリックの教えを子どもたちの生活と関連付けながら伝えられている。こうした教育方針と目標、実践的活動は、園長や教員、保護者などからのインタビューで知ることができる。また、園庭や園舎で見られる子どもたちの遊びや子ども同士のかかわり、子どもと保育者とのやりとりをはじめ、その他さまざまな教育活動からその教育方針が浸透されている様態を感じ取ることができる。また、2020年から実施される「学習指導要領」で強調される「学びに向う力」について卒園児のほとんどが「身についている」という肯定的評価がされている(卒園児の保護者を対象とするアンケート 2017年)ことからもそれが理解される。また、学校関係者評価委員による本園の教育に対する評価及びそれを受けた教員による「振り返り」が行われるなど、教育への質的評価と改善に向けた取り組みが行われている。 |
②幼児や幼稚園の実態、保護者や地域の意見・要望等を踏まえて教育目標を設定しているか。 (☆☆☆) |
保護者や地域住民とのかかわりを通して、その要望や意見を必要な場合は教育活動に採り入れている。例えば、運動会の運営やもちつきといった行事にそれが見られる。また、学校評価委員に地域の方が加わるなど、積極的に意見や要望が教育目標に反映される仕組みになっている。また、近隣の小学校との連携のなかで、幼児期に求められる学びの力など、本園の教育の参考にしているという。このように、保護者をはじめ地域の方々、小学校など関係者からの意見や要望に耳を傾け、教育目標の一環として考えていこうとする本園の方針は、幼稚園の公共性という視点から不可欠であり、社会や地域に「開かれた園」として評価できる。 |
③学校保健安全法、労働基準法等の各種法令が遵守されているか。 (☆☆☆) |
本園では、子どもの保健・安全や教員などの労働に関して、関連法令に沿って実施されている。それは園長や教員へのインタービューをはじめ、関係の報告書等で確認される。 |
2.指導等の状況について ________________________________ | |
①幼稚園教育要領の内容に沿った幼児の発達に即した指導が適切に行われているか。 (☆☆☆) |
2018年改訂の幼稚園教育要領では、新たに幼稚園教育で育みたい資質・能力として、豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知識及び技術の基礎」やそれを使って、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」があるが、本園では、遊びや学びの時間などを通して、さまざまな体験や子ども同士で話し合い、課題の解決に向かうように促す等、教育に採り入れ、実践を行っている。また、「学びに向かう力、人間性等」としての心情や意欲、態度の育成にも生活全体のなかで育まれるよう指導がされている。例えば、遊びの中でのトラブルの際、相手の気持ちを聞き、みんなで解決しようと話し合い、必要な時には先生に相談する等、子ども自身が積極的に解決方法を見出そうとしていることがその例である。本園では、幼稚園教育要領に指摘される前から、そうした取り組みが日常的に行われている。 |
・環境を通して行う幼稚園教育が適切に実施されているか。 (☆☆☆) |
幼稚園教育要領で幼児教育は「環境を通して」行われるとその基準が示されていることから、本園でも遊びをはじめとする教育活動の多くは、恵まれた環境のなかで展開されている。例えば、物的環境として遊具や園庭は常に整備され、子どもたちが興味や関心を持ってかかわれるよう適切に配置されている。また、人的環境である教員は、子どもに寄り添い、必要な時にその遊びが広がるように助言できる位置にいるなど、環境的配慮が適切になされている。 |
・幼児との信頼関係の構築が図られているか。 (☆☆☆) |
日常的に、一人ひとりとの子どもとのかかわりが、全ての教員により行われている。それは本園が小規模の園であるためというより、教員の意識によるものと思われる。また、保護者との関係も強く、子ども、保護者、園(教員)が一体になって築いてきた信頼関係といえる。それは、保護者全員を対象としたアンケート(2018年9月実施、以下「保護者アンケート2018」)で、97.8%の保護者が子どもと先生方の間に信頼関係がある、と回答していることから明らかである。また「卒園・進級にあたって お父さん・お母さんの『喜びの声』 2018年)でもそれが十分伺える。 |
・幼児の主体的な活動が尊重されているか。 (☆☆☆) |
遊びでは、子どもの興味や関心を第一に、教員はそれを見守りながら、必要に応じてそれをさらに発展させるように働きかけるようにしている。それは遊びの場でのやり取りや、園だより、本園のホームページ等の記述から理解できる。こうしたかかわりについて、保護者の89.2%が子どもの主体性が大切にされていると受け止めている(「保護者アンケート2018」より)。 |
・遊びを通した総合的な指導が適切に行われているか。 (☆☆☆) |
総合的な指導(運動面、知的面、精神面の発達)については、園だより、ホームページの他、教員へのインタービューから子どもの発達への配慮や指導内容が理解されると同時に、86.9%の保護者が適切に行われていると評価していることが、「保護者アンケート2018」からわかる。 |
・一人ひとりの発達の特性に応じた指導が適切に行われているか。 (☆☆☆) |
幼稚園という集団の中で、子どもの成長を見守り、必要に応じて教員同士の話し合いが行われ、情報の交換やアドバイスがなされている。指導の様子は、園だよりや本園のホームページから知ることができる。その結果、子ども一人ひとりの特性に応じた指導については、82.7%の保護者が認めている(「保護者アンケート2018」)。 |
・遊びを通した総合的な指導が適切に行われているか。 (☆☆☆) |
総合的な指導(運動面、知的面、精神面の発達)については、園だより、ホームページの他、教員へのインタービューから子どもの発達への配慮や指導内容が理解されると同時に、86.9%の保護者が適切に行われていると評価していることが、「保護者アンケート2018」からわかる。 |
・一人ひとりの発達の特性に応じた指導が適切に行われているか。 (☆☆☆) |
幼稚園という集団の中で、子どもの成長を見守り、必要に応じて教員同士の話し合いが行われ、情報の交換やアドバイスがなされている。指導の様子は、園だよりや本園のホームページから知ることができる。その結果、子ども一人ひとりの特性に応じた指導については、82.7%の保護者が認めている(「保護者アンケート2018」)。 |
②年間の指導計画や週案などが適切に作成されているか。 (☆☆☆) |
指導計画や週案については、本園の教育方針や理念をふまえ、教員同士でこれまでの実践を話し合いながら、取り組まれている。具体的には子どもの発達や特性をふまえ、育ってほしい力や姿を見据えて作成するが、その際保護者からの要望も「子どもの成長にとって資する内容であれば」参考にするようにしているという。また、教員による教育課程の改善に向けた話し合いが行われるなど、カリキュラム・マネジメント(教育課程の組織的、計画的な取り組み)が行われている。 |
③幼小の円滑な連携・接続に関する取り組みが図られているか。 (☆☆) |
小学校との連携・接続では、教育面で小学校の教育を見据えたカリキュラムの編成が行われている。例えば、国語や音楽などの 各教科に関連して,絵本の読み聞かせやひらがななどの文字への興味、歌の合唱や鍵盤ハーモニカの演奏などが園で取り組まれている。また、連携として、小学校との交流会を通じて図られている。この他、就学する子どもの園での生活や発達面、それを支える生活状況等、必要となる事項を伝えるようにしている。特に、発達の気になる子どもについては、必ず詳しく伝えるようにしているという。しかし、その子どもが就学後、どういった教育環境に置かれているのか、園側にわからないこともあるため、幼小連携・接続については、今後改善を進める必要がある。 |
④保育研究を継続的に実施し、指導改善に活かしているか。 (☆☆) |
保育の質を高めるためにも保育研究の実施が不可欠である。本園では、実践での子どもの様子や保育者が感じたことを職員会議や話し合いの場を契機に、それを深めている。また、そこで得られた成果を実践に活かすよう努めている。本園の保育研究の実績として、2014年の三重県私立幼稚園協会(北勢ブロック)による幼稚園教育課程研究集会で研究発表した「きまりの必要性等に気付き、自分の気持ちを調整する力が育つようにするための環境の構成と教師のかかわりについて」がある。この研究は質の高い実践研究といえることから、今後は、そうした保育研究が組織的に、また継続的に行われ、その成果が積み上げられていく取り組みが望まれる。 |
⑤園長等の管理職が定期的に保育観察を行い、教員に対して適切な指導・助言をしているか。 (☆☆☆) |
園長等による保育観察により、教員への指導・助言について本園では、定期的ではなく、主に教員が指導・助言を求めたり、園長等が気になる場合に行われている。しかし、この園ではいつも園長等とは話し合える機会がもたれているため、定期的でなくとも、指導・助言が受けられる状況にある。 |
3.保健・安全管理の状況について______________________________ | |
①日常の健康観察や、疾病予防のための取組、健康診断が適切に実施されているか。 (☆☆☆) |
健康診断は学校安全法等の関連する法律に従って定期的に実施されている。また健康観察は日常的に行われ、その日の状態を記録している。特に、インフルエンザなどの感染症が流行する10月頃から3月頃は予防を含め、対応している。なお、幼児の検査法が難しい聴力検査についてこれまで行ってこなかったが、今後は行う予定という。 |
②家庭や地域の関係機関、団体との連携を図りつつ、幼児の安全を確保するための具体的な取組が行われているか。 (☆☆☆) |
日常的には子どもや保護者には交通安全指導を行っている。また、子どもの送迎にあたって、必ず直接保護者に子どもを引き渡すようにしている。送迎に車を使用する保護者に対しては時間差による車の出し入れによる事故防止に努めている。さらに、不審者対策や自然災害など、危機管理のためのマニュアルを作成するなど、対応が図られている。 |
③園舎や通園路等の安全点検や教職員・幼児の安全対応能力の向上を定期的に図っているか。 (☆☆) |
園で子どもたちが安全で快適な生活が送ることができるように、園の環境衛生は重要であるが、本園では、地元「四日市薬剤師会」による「学校環境衛生検査」を受けて対応している。この検査では、飲料水やプールで使用する水の水質をはじめ、、部屋の照度、空気、騒音などが検査の対象になっている。また通常、園舎や通園路等については各職員が安全意識を持ち、気付いた時点で対応するようにしている。また、通園路では保護者や地域の方からの情報で対応することもある。園内の自己やケガの防止のため、大型遊具などの点検は、業者によって定期的に実施されている。この他、安全対策能力の向上については、幼児には園生活全般を通して、また職員には会議や話し合いの場で確認、周知を図っている。また、地震や津波への対応については、定期的に避難訓練を行っている。今後は、不審者など、不測の事態への対策を周知し、子どもたちをどう守るか、といった実際の避難方法の確認や職員の対応など、危機管理体制が急がれる。 |
4.家庭・地域との連携協力の状況 _____________________________ | |
①保護者を対象に学校の教育活動についての説明会を実施したり、園だよりを地域に配布したり、掲示板等に張り出すなど、学校に関する様々な情報が、その想定される受け手に応じた多彩な 媒体を用いて提供されているか。
(☆☆☆) |
保護者への教育活動に関る情報は、日常の送迎時や園のホームページ、園だより、お便り帳、掲示板などで伝えている。そのため、利用できる媒体を使って保護者一人ひとりに必要となる情報が周知されるようになっている。しかし、情報量に差が生じているといった一部の保護者の声もあり、改善に向けて取り組みが求められる。 |
②保護者や地域住民は学校運営に積極的に参画し、協力しているか。 (☆☆☆) |
保護者が学校運営に参画・協力する機会は、主に運営委員や行事などあるが、どれも積極的に行われていて、保護者の意向や思いが園の運営に反映されることが多いという。また、卒園児の家族や近隣住民の方など 地域住民の方々の参加もあって、園のさまざまな教育活動の支えになっている。 |
③教職員がカウセリングの基礎を理解し、幼稚園としての相談機能を十分果たすことができているか。 (☆☆☆) |
保護者からの相談は、面接を中心に子育て相談の資格(保育心理士)を有する園長が担当しているが、同じ資格を持つ主任をはじめ、必要に応じて担任が受けている。相談はこの面接の他、連絡帳での相談も日常的に行われ、保護者の相談に応じている。送迎時など相談のための時間がとれない場合は、事前に予約することで相談が受けられるよう配慮されている。その結果、相談しやすい環境にあるという保護者からの声が聞かれた。 |
④保護者から寄せられた具体的な意見や要望に、適切に対応しているか。 (☆☆☆) |
保護者からの要望や意見等は、保護者アンケートにも見られるように、多種多様の感が否めない。しかし、その多くは保護者と園(教員)との意思の疎通が十分でないため起きているケースや「自分の子中心」とも思えるケースが少なくない。そのため、これまで園(教員)で行ってきたように、寄せられたさまざまな要望や意見に対して保護者一人ひとりの思いを受容し、丁寧に話を聴く相談から、さらに保護者が十分な納得が得られる相談技術が必要と思われる。そのためにも、園では保育心理士の資格者が講習で学んだ相談に関する知識や技術を他の教員に伝えている方法をさらに進めて、園全体の相談の質の向上をり、多様化する相談に対応できる態勢を整えることが待たれる。 |
総合講評 | |
海の星カトリック幼稚園の調査を通して各調査項目を総合し講評すると以下のとおりです。 | |
海の星カトリック幼稚園は、カトリックの教えに基づき、教育理念と目標を掲げ、これまで多くの幼児の教育に努め、地域や保護者の方々から多大な信頼を得てきています。それは、園長先生をはじめ、教職員さらにはそれを支える方々が一つになって、幼児教育に取り組んできた結果といえます。また、教育内容も遊びを中心に、環境を通して幼児一人ひとりの興味や関心を大切に、思いやりある方法でかかわっています。幼児教育は、子どもの人格の形成の基礎となることから、こうした環境で育つ本園の幼児たちは、その後の成長・発達に大きな影響を受けていくことになるでしょう。また、この海の星カトリック幼稚園の教育では、カリキュラムの編成にあたって、教員相互による話合いが行われ、子ども1人ひとりにあった柔軟性のある計画が作成されています。園長先生を中心に、全教員がよりよい幼児教育の創造に向けて、常に創意・工夫している証左といえます。さらに、幼児教育の質の向上のために、日々の教育で起きる様々な課題や問題を教員同士が話し合いによって、解決しようと取り組んでいる姿からも十分知ることができます。さらに、小規模の幼稚園である利点を生かし、教員と子どもたち、教員と保護者、園と地域の方々という関係が近く、特に教員と保護者との関係では、相互の信頼関係を作り出す一因になっていることが伺えます。このように、海の星カトリック幼稚園は調査を通して、在園する幼児はもちろん、保護者の方々、さらには地域と一体となって、幼児教育に果たしている役割は大きく、その存在感は今回の調査結果から明らかです。なお、一部の保護者からのアンケートやインタビューから「園庭が少し狭い」、「保育時間を長く」という要望が聞かれますが、子どもが園内でも十分な遊びが行えるよう環境の整備と園外保育など、これまで行ってきた対策への理解を図ると同時に、保育時間については園の状況を伝え、協力をお願いすることで理解してもらえるよう今後の取り組みが期待されます。近年、少子化傾向が見られる四日市市の現状にあって、これからも幼児教育機関のひとつとしてその重責を担うために、この調査から得られた結果を参考に、本園の特徴ある教育の良い点はさらに伸ばすと同時に、課題となる点については園全体で改善を図っていくことが求められます。今後の地道で継続的な取り組みにより新たな海の星カトリック幼稚園の教育の創造に期待して、本調査の総合講評と致します。 (☆☆☆) 最後に、今回の調査にご協力下さいました海の星カトリック幼稚園の神馬園長先生はじめ、教職員方々、またお忙しいなか、快くインタビューに応じていただきました保護者の皆さまに、謝意を表します。ありがとうございました |