相聞 ROUND2
本歌 みかきもり 衛士の焼火(たくひ)の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそおもへ (大中臣能宣)
作品No.07 深き森 汝(なれ)の焚く火の 夜は燃え ヒルは消えつつ 物をこそおもへ (近藤朝臣)
現代語訳 迷ってしまった御池岳のこの深い森から、遠く遠く焚く火が見えています。あの火はあなたが燃やして下さっているのでしょうか。そのおかげでしょう。あれほど悩ましい山ヒル様も、今は消えていなくなってしまい、こうして野宿しながら、ゆったりとものおもいに沈んでいるのです。
管理人解説 焚き火の歌がありましたね。お見事。みかきもり --深き森がいいですね。みかきもりと衛士はセットで近衛兵のようなもの。火を焚いて夜の警護をした。
本歌 やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな (赤染衛門)
作品No.08 やすらはで 寝なましものを 小夜ふけて カゼひくまでの 月をみしかな (柳澤郎女)
現代語訳 あなたのお帰りを 寝ないで火を焚いてお待ちしていたので カゼを引いてしまいましたわ もうダウン! 究極の鎧 ゴアテックスも 火には弱かった あーあイッチョーラが台なしになってしまったわ
管理人解説 原作のごく一部を変えただけで替え歌としてはややもの足りない気もしますが、選歌が良いので変えようが無いともいえます。 風邪を引くまで待たれる身になってみたい。
本歌 足引きの 山鳥の尾の しだりおの ながながし夜を ひとりかもねん (柿本人丸)
(注)「しだりお」とは長くたれさがっている尾の意。初句からこの第三句までは、「ながながし」を言うための序詞。
作品No.09 風邪引きの 雨宿りのこの しだりバナの ながながし夜を ひとりかもねん (近藤朝臣)
現代語訳 せっかく焚き火を焚き、不肖の私を待っていて下さる間に、あなたはゴアテックスのイッチョウラを台無しにされ、果ては風邪まで召されてしまったようですね。私も「ぬれた袖よ〜」とノーテンキに御池岳をさまよっていて、そこへそよ風が吹き、冷えて、また雨が降ってきて、冷えて、風邪をひいしまったようです。だからこうして雨宿りをしていても、ツツーと長くハナが垂れ下がってきています。この長い長いハナミズよりも、いっそう長いこの秋の夜を、恋しい人とも離れて、たったひとりでさびしく寝ることであろうかなあ。
管理人解説 尾長鳥の如きながながしミズバナを絵にして見てみたいですねえ。朝臣はながながしく話を引っ張って一向に下山する気配がありませんが、どうなるのでしょう。
なお本歌作者、柿本人丸は人麻呂の俗称である。
本歌 みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに (河原左大臣)
作品No.10 道奥の しのぶ恋心 誰ゆえに 乱れ乱れて 我をばなくに (柳澤郎女)
現代語訳 あのお方を お待ちしていて 引いたカゼが 重くなってしまったわ モウロウとした目にあのお方のお姿が見えたので 思わず走りよったら そしたらすーと消えておしまいになった まぼろしでもいいから ずーと一緒に居たかったのに やっぱり私には遠いお方なのね
管理人解説 本歌の「しのぶもぢずり」って何?と気になっていた歌。第五句の「なく」は打消だが、郎女様は「泣く」としゃれたのであろうか・・・と思ったら「我を無くしてしまった」と言う事らしいです。河原左大臣は宇治に別荘を持ったが、これが後に平等院となった。パロディーでも読むと勉強になりますでしょ。
本歌 わびぬれば 今はた同じ 難波なる 身をつくしても あはむとぞ思ふ (元良親王)
作品No.11 風邪引けば あなたも同じ 難儀なる 身をつくしても あはむとぞ思ふ (近藤朝臣)
現代語訳 ゴウジデ現代語訳ヲガダロウニモ、ハナガズルズルドジデ、イゲマゼン。ワダジモガンゼンニ、ガゼヲビイデジマイマジダ〜。ズルズル。アナダモオガゼデ、オガラダノヂョウジバイガガデズガ。ズルズル。オダガイニ、ゴノ、ナンギナ身デアリナガラ、命ヲガゲデオ会イジダイド、切ニオモイマズ。ズルズル。(ダゲド、ゴンナハナズルズルデ、オメニガガルノバ、バズガジイナア)
管理人解説 山で窮地に陥ったときカタカナで綴られた手記。はて、何処かで見たような・・・。おお!冬の北鎌尾根に逝った松涛明の名著「風雪のビバーク」と同じではないか。
「オカアサン アナタノヤサシサニタダカンシャ、一アシ先ニオトウサンノ所ヘ行キマス。ナンノコーヨーモ出来ズシヌ罪ヲオユルシ下サイ・・・」 涙なくして読めぬ。 御池朝臣の方はティッシュなくしては読めぬが、どうかご無事であらんことを。
本歌 月みれば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど (大江千里)
作品No.12 山見れば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身一つの カゼ引きにあらねど (柳澤郎女)
現代語訳 あのお方も お風邪を召しておられるとお聞きすると・・・もろともにあはれと思え・・・ 山を見ていると 色々な事を思ってしまうわ・・・今日かぎりの命ともがな・・・と思ったり ・・・長くもがな・・・と思ったり・・・今ひとたびの合うこともがな・・・と思ったり・・・
管理人解説 「もがな」は願望の終助詞。〜すれば、〜できればよいがなあというほどの意味。人は山や月を見て何故物思いをするのか。「我思う、ゆえに我あり」 それが生の証でもあるのだろう。ネットを通じて風邪がうつりそうです。 お二人とも医者へ行くこともがな。